熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

【続報】取り木したフェイジョアが開花しました。

2015年06月04日 | フェイジョア

 以前、このブログで紹介したフェイジョアの 取り木を行った記事を書きました(良き道具にこそ匠あれ02 -「グリーンカット10」 を使ったフェイジョアの取り木;2012/07/02)。
 今回は、その続報です。

 2012年2月に沖縄県名護市でフェイジョアの取り木をかけ、同年6月に 発根確認および鉢上げ、同年10月に知人の畑に定植しました(写真2)。



写真2.2012年10月下旬に定植したフェイジョア取り木苗


 それから約2年半。
 小さかったフェイジョアの苗は、今年4月中旬には高さ1.5m程度の樹に生長し(写真3)、
 初めて着蕾し(写真4)、4月下旬~5月上旬にかけて開花しました(写真5)。



写真3.定植2年半後、2015年4月中旬のフェイジョアの樹




写真4.2015年4月中旬に初めての着蕾




写真5.2015年4月下旬に初めての開花

 
 人工受粉による着果促進も試みましたが、着果はしませんでした。
 この系統(品種不明)は、1樹では受粉しないタイプの様です(親樹も人工受粉で着果しませんでした)。

 「受粉樹が必要だな」と思っていた矢先に「日本熱帯果樹協会」の種苗交換会でフェイジョアの実生苗を得ることができました(写真6)。



写真6.種苗交換会でI氏から提供されたフェイジョア実生苗


 この実生苗は、知人の畑に寄贈し、植えて貰うことにしました。
 あと数年後には、この実生苗も開花し、フェイジョアが結実することを願っています。





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良き道具にこそ匠あれ02  - 「グリーンカット10」を使ったフェイジョアの取り木

2012年07月02日 | フェイジョア

 沖縄県ではフェイジョアは4~6月頃に開花します。
 ただ、花は多く咲きますが結実することは滅多にありません。
 その理由は、フェイジョアは同一品種間では自家結実性が弱い(沖縄県では1樹だけで栽培されていることが多い)ことや開花期間中の降雨(沖縄県は5中旬~6月中旬頃が梅雨期)で受粉が妨げられていることが考えられます。

 しかし、沖縄県内でもフェイジョアが結実した記録は廃刊した雑誌「月刊おきなわ緑と生活」に報告され、その最も古い記事(1986年9月号)では以下の様に記されています。

(前略)

 近年フェイジョアを導入栽培する業者が目立ってきた。

(中略)

 しかし、このフェイジョアは、露地でふつうに開花、結実するものとされていたが、実さいはほとんどみかけず、本誌編集室が結実を確認したのは今回がはじめて。
 場所は、県農業試験場名護支場(名護市)、国頭村辺土名、南部の園芸業者の庭先(大里村)など数カ所。

(後略)



 その翌年(1997年1月号)には東風平町(現在の南城市)で品種「クーリッジ」と「トライアンフ」を6本混植して結実させ、人工受粉を行い結実させた事例が紹介されています。

 条件さえ整えれば、沖縄県でのフェイジョア結実は可能な様です。

 さて、今回は私がフェイジョアの取り木を行った話を書きます。
 このフェイジョアは、名護市某所で10年以上(20年以上?)粗放的に栽培されていた品種不明の樹です。
 2010年には多くの花を咲かせたのですが、2011年5月の台風2号で倒伏し、その後その上に伐採樹等が被せられ樹勢を落としていました。



写真2:2010年はよく咲いていたフェイジョアの花



 このまま枯らせてしまうのは勿体無いと思い、取り木と挿し木で後代苗を作ることにしました。

 取り木をかけたのは2012年2月14日です。
 材料は適当な大きさに切った肥料袋の破片、水ごけ、ビニールテープと環状剥皮ハサミ「グリーンカット10」です。

 今回、第2回「良き道具にこそ匠あれ」では、環状剥皮ハサミ「グリーンカット10」を紹介します。



写真3:グリーンカット10



 「グリーンカット10」は、キウイフルーツの大玉生産を目的に環状剥皮を行う際によく使われている道具です。
 残念ながら沖縄県内のJAやホームセンターで「グリーンカット10」が売られているのを見たことがないので、定期的に九州から訪れる知人にお願いして1つ買ってきてもらいました(価格は2,500円でした)。
 このときは「グリーンカット10」を使う明確な目的があった訳ではありません。
 ただ、“環状剥皮が簡単にできる道具”を使ってみたかっただけです。

 そして、今回フェイジョアの取り木を行う際の環状剥皮で使ってみたら、その効果は抜群でした。
 太さ1~2cm程度の木質化した枝に幅1cmの環状剥皮がスルスルとできます。
 「グリーンカット10」は刃を広げるときに握り、握力を緩めると刃が締まる構造です。
 そのため、枝を刃で挟むとき以外は握力を使いません。

 取り木をする際に一番時間がかかる作業が環状剥皮です。
 それが面白く簡単に楽々できます。
 時間にして30秒/カ所 程度です。

 取り木の手順は、
 ① 枝の発根させたい部分に環状剥皮を行う。
 ② 水ゴケを水に浸し、固めに絞り、環状剥皮した部分に巻く。
 ③ ②をビニール(私は緑色か内側黒色+外側白色の肥料袋片をよく使います)で包み、水ゴケを固定し、水分保持できる様にする。
 ④ ③をビニールテープで固めに縛る(紐等を使うより早く、しっかり固定できます)。



写真4:取り木を掛けた状態



 この作業が16カ所/時でできました。
 慣行のナイフ等を用いる方法なら10~12カ所/時程度しかできないと思うのでスピードアップです。
 なおかつ、手を切るかも?という不安がないのが良いです。

 そして、取り木を行って約4ヶ月後の6月9日に発根を確認しました。
 結果は、9カ所/16ヶ所で発根していました(発根率:56%)。
 発根した枝としなかった枝を比べてみると、発根した枝には葉が付いているものが多いので、樹勢の強い枝で発根率が良かったのかと考察しました。



写真5:発根した枝(左)は発根しなかった枝(右)より葉が多い。



 因みに、5月に実施した挿し木は全滅しました・・・。

 現在、発根した取り木苗は黒ポット(φ25cm)に鉢上げしています。
 来年の春まで鉢で育成した後に地植えを予定しています。
 その際は、できれば複数品種で混植したいと思っています。

 沖縄本島内でフェイジョア苗をお持ちの貴方!
 フェイジョア苗を交換しませんか?
 当記事へのコメントで「苗交換希望」の旨と連絡先(メールアドレス)を記入していただければ、メールでの連絡調整の後に苗交換を行いたいと思います。
 先着4鉢で締め切らせていただきます。 
 

○参考文献
 ・「熱帯果樹のニューフェイス おいしいフェイジョア 沖縄でみごとに結実」.1996.月刊おきなわ緑と生活;1996年9月号.pp.62-63.
 ・「わが家の果樹自慢腕自慢 おいしいフェイジョア実る東風平町友寄の金城さんが栽培に成功」.1997.月刊おきなわ緑と生活;1997年1月号.pp.49-50.

○参考サイト
 ・「日本園芸農業協同組合」HP¥生産資材¥グリーンカット10