熱帯果樹写真館ブログ

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バナナペーパー

2006年02月20日 | バナナ
 今日は私が最近読んで面白いと思ったバナナに関する書籍の紹介をしたいと思います。
 書籍のタイトルは「バナナ・ペーパー―持続する地球環境への提案」です。



 皆様は「バナナペーパー」というものをご存知でしょうか?
 バナナペーパーとは、皆様もよくご存知のバナナの「茎」(バナナは草本植物ですので、木の幹に見えるところを仮茎と呼びますが、今回は便宜上「仮茎=茎」と表現します)を原料して作成された紙のことです。



 バナナは熱帯・亜熱帯地域で食糧として輸出産物として栽培されている重要な作物ですが、果実を収穫した後の茎の部分は産業廃棄物として扱われていることがほとんどです。
 しかし、バナナの茎には強靭な繊維が含まれているそうで、それを利用して紙を作った人がいて、それが世界規模で注目されているのだとか。

 何故バナナの茎で紙が作れたら注目に値するのか?ですが、それには私たちの生活で当たり前の様に使っている「紙」の原料について考えるとわかりやすいと思います。
 私たちが通常使用している紙の91%は森林木材を利用した木質紙です。それ以外に草本を原料とする非木質紙が9%あるわけですが、非木質紙の原料の60%は藁なんだそうです。

 「バナナを原料にした紙って珍しいんだ!凄い!!」

 と言うもの確かに凄いのですが、バナナペーパーを作るに至ったのはバナナの生産国の多くが経済的に貧しい発展途上国であることと深い関係があります。

 現在、バナナを生産している熱帯・亜熱帯地域の国は紙を輸入しています。
 これは、熱帯・亜熱帯の国々が自国に製紙工場を整備しようとしても、既に熱帯森林の50%は消失しているため原料となる木材の調達ができないことに加え、製紙プラント建設には少なくとも3,000万ドル(34.5億円:1$=115円で計算)以上を要するからなんだそうです。
 発展途上国には3,000万ドル以上の設備投資を行う余裕はありませんし、原料確保が困難な国に投資して製紙プラントを整備する先進国もありません。

 そこで、登場するのがバナナペーパーです。
 バナナペーパーの製紙工場は、規模を小さくすれば300㎡程度の建物で作業が可能で、そこに設備備品で6.5万ドル、技術研修費で2.5万ドルの合計9万ドル(1,035万円:1$=115円で計算)程度の初期費用で運営が開始できるそうです。
 しかも、バナナペーパーは環境汚染のない「無薬品の製紙技術」で作ることができる上に紙としての品質は木質紙よりも強靱で高品質なんだそうです。

 つまり、熱帯・亜熱帯の国々で産業廃棄物として扱われていたバナナの茎からバナナペーパーを作れる様になれば、

  1.少額の初期投資で製紙工場が整備できる。
  2.産業廃棄物の処理と新産業確立(新たな雇用先)が同時にできる。
  3.自国産の上質な紙が得られる様になり便利な生活と経済的自立が図られる。
  4.天然林伐採に歯止めをかけることが期待できる。
  5.環境に優しい製紙技術である上にバナナの葉による優れた二酸化炭素吸収が期待でき地球環境の再編循環システムの起点にもなるかも。

 と良いことずくめ。
 特に原料を新たに栽培するのではなく、既存の産業の廃棄物を利用できるところが素敵だと思います。

 このバナナペーパー作りを熱帯・亜熱帯の国々に広めようとしているプロジェクト「バナナ・グリーンゴールド・プロジェクト(Banana Green-Gold Project)」が国連主催の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(World Summit on Sustainable Development, Johannesburg Republic of South Africa/通称;環境開発サミット)」で注目を集めたり、「愛・地球博」で関連パビリオンが出展される等、話題になるのも頷けます。

 また関連情報として、大使館派遣員としてハイチ共和国に赴任した女性職員が、貧困にあえぐハイチで、バナナの木から紙を作るプロジェクトをスタートさせる映画「ミラクルバナナ」も気になります(音楽は角松敏生さんが担当)。

 そして一番気になるのは、沖縄で栽培されているバナナの茎を使って遊びで良いからバナナペーパーが作れないかということです。
 実際に自分でバナナペーパーを作ってみれば、どの位の労力とコストが必要なのか?バナナペーパーの品質は木質紙を本当に上回るのか?等が体験できて楽しそうです。

 もしバナナペーパーを自作するときは、バナナの繊維で草履も編みたいものです。

○参考資料
 ・「バナナ・ペーパー―持続する地球環境への提案」.森島紘史.2005.鹿島出版会.
 ・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).
 ・「平成16年産 園芸・工芸農作物市町村別統計書」.2005.沖縄総合事務局農林水産部統計調査課.