熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

書籍紹介:「中晩柑をつくりこなす」

2011年01月18日 | 熱帯果樹総合
 今回は、柑橘類の書籍紹介をさせて頂きます。

 紹介するのは、農山漁村文化協会(農文協)から2010年11月30日に発行されましたA5サイズ228ページの「中晩柑をつくりこなす」(本体2,500円+税)です。

 中晩柑とは、温州みかんや香酸柑橘(シークヮーサー・レモン等)を除く中生(なかせ)および晩生(おくて)の生食用柑橘類の総称です。
 早生(わせ)、中生、晩生の定義は、地域性もある気がしますが、中晩柑の収穫時期は概ね12月~5月(遅いものだと夏頃)だと思います。

 日本で中晩柑が増えだしたのは、温州みかんが生産および供給過剰となり、消費者が少量多品目の果実を求める様になった昭和40年代後半からです。
 温州みかんの圃場が多品目に転換される中、伊予柑や八朔、ネーブルオレンジ、夏みかんへの転換も多かった様です(佐賀果試.1990)。

 温州みかんが売れなくなって、柑橘産地の生き残り戦略は二極化した様に思います。
 1つは、他産地と差別化できる温州みかんをつくって「産地をブランド化」したところ。
 もう1つは、少量生産ながら顧客の細かいニーズに応えた「中晩柑を経営の軸とした産地」したところです。

 そして、十数年前に中晩柑の世界に一大革命が起こりました。

 商品名「デコポン」(品種名「不知火」)の登場です。
 果実のヘタ付近が飛び出した特徴ある見た目と、甘味が強くてジューシーな美味しさと、皮が剥きやすい上に薄皮ごと食べられて種子がほとんど無いという食べやすさが衝撃的でした。
 「デコポン」は、瞬く間に中晩柑のトップスター(高級果樹)となりました。

 「デコポン」登場以降は、各柑橘産地では「デコポン」に次ぐ高品質な中晩柑の新品種開発に勤しみます。
 そして近年、数多くの有望な中晩柑が品種登録され、世に送り出されました。

 しかし、栽培現場では有望品目を経営に取り入れたものの、それらの生育特性(栽培のコツ)が 十分把握がされていないこと等から、「どの品目(品種)を、どの様に作れば良いのか?」という不安がありました。

 その様な中、中晩柑農家待望の一冊が発売になったのです。

 本書の内容を目次で見ると、

●PART1 中晩柑新品種の魅力と導入戦略
  1.期待が高まる中晩柑新品種
  2.新品種の特徴と役割
  3.新品種導入のカンドコロ

●PART2 収益確保が狙える品種
 <はるみ>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

 <せとか>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

 <はれひめ>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

 <天草>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

●PART3 経営の幅を広げる期待の品種
 せとみ/南津海(なつみ)/はるか/麗紅(れいこう)/べにばえ/西南のひかり/津之輝(つのかがやき)/紅まどか/肥の豊(ひのゆたか)/ブラッドオレンジ/佐賀果試34号

●PART4 これから注目したい品種
 甘平(かんぺい)/愛媛果試第28号(紅まどんな)/スイートスプリング/たまみ



 となっています。
 各品目(品種)の項目を執筆しているのは、現在の日本の柑橘研究最前線を担う面々です。
 中晩柑を栽培されている方は、必読の一冊だと思います。


○参考文献
 ・「中晩生カンキツの原料特性に関する基礎研究」.1990.佐賀果試験報;10;p.1-66.佐賀県果樹試験場.

○参考サイト
 ・「田舎の本屋さん(農山漁村文化協会)

謹賀新年2011

2011年01月01日 | ブログ運営
 新年あけましておめでとうございます。

 さて、昨年の正月は一昨年に続き「月1回程度の更新」を抱負としました。
 今回は、その結果を振り返ります。

○2010年の「熱帯果樹写真館」更新回数
 ・品目(品種)追加・・・・・・・・・・・・0回
 ・熱帯果樹観察室の記事追加・・・0回
 ・ブログ更新・・・・・・・・・・・・・・・・14回
 ・写真追加・・・・・・・・・・・・・・・・・・2回
 ・掲示板の移転・・・・・・・・・・・・・・1回
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                  合計18回

 ブログの更新回数だけ見ても「月1回程度の更新」はできていますね。
 今年は、「品目・品種ネタの更新を増やしつつ、月1回程度の更新」を目標とします。

 今年も、宜しくお付き合いください。