熱帯果樹写真館ブログ

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マンゴー「高雄3号(夏雪)」試食検討会に参加しました。

2014年09月23日 | マンゴー

 2014年7月中旬。
 沖縄県南城市でマンゴーをはじめ様々な熱帯果樹を栽培されているA氏から、「マンゴー「高雄3号(以下、本品種の商標である「夏雪」と記します)」の試食会をやるから来ませんか?」と連絡を受けました。

 マンゴーの「夏雪」は、2008年に台湾の高雄区農業改良場で育成、登録された品種です。
 「夏雪」は、高雄区農業改良場のパテント品種であるため、許可なく種苗の増殖、販売、譲渡、栽培ができません。
 しかし、日本ではY氏が高雄区農業改良場と契約し、日本への「夏雪」の導入等を行い、上記のA氏を含む数名のマンゴー生産者に沖縄県での「夏雪」の試験栽培を委託しています。
 今回の試食会は、それらの方々が栽培した「夏雪」の果実を持ち寄り開催されました。
 貴重な体験に参加させていただきましたので、その模様と私の感想などをレポートにしたいと思います。

 まず、「夏雪」の果実については、育成者でもある李氏が高雄区農業改良場の機関誌の1つ「高雄區農業專訊;第67期」に「芒果新品種-高雄3号」という記事内に以下のように記しています。

果實:楕圓形,無彎曲,果皮平滑,幼果至中果果皮爲緑色,黄熟果果皮爲橙黄色,成熟果蒂微凹,果重約400-550公克,具土芒果風味,香味極濃,可溶性固形物12-15°Brix,酸度0.17-0.20%,果肉率75-80%。

果実:楕円形で湾曲がなく、果皮は滑らか。果皮色は、幼果から中果にかけては緑色で、果実が成熟するに従い黄色からオレンジ色になる。成熟果実の果梗部はわずかに凹む。果実重量は約400~550g。在来マンゴーの風味を有し、香りは極めて濃い。可溶性固形物含量(Brix.)は12~15%、酸度は0.17~0.20%、果肉割合は75~80%。
(ねこがため訳)



 このことを踏まえて、持ち寄られた果実をみてます(写真2)。



写真2.試食検討会に持ち寄られた「夏雪」の果実(の一部)


 果実の形状は、楕円形ですが寸胴な感じです。
 果皮は、滑らかです。
 果皮色は、収穫のタイミングにも因るのでしょうが、概ね山吹色で場合によっては赤みを帯びるようです。

 果梗部のわずかな凹みは、写真3で包丁を入れている果実で確認できます。



写真3.「夏雪」果実を切断、果肉を観察


 果肉はオレンジ色で「アーウィン」より濃い色をしています(写真3)。

 果肉を食してみると、香りも「アーウィン」よりやや濃厚で、私は「金蜜」等に似ていると思いました。
 人によっては「やや巨峰の様な穏やかな香りがある」と表現する人もいました。
 
 食感は、とにかく多汁、果肉内の繊維は「アーウィン」よりやや多い気がしましたが、食感が悪くなるほどではありませんでした。
 味は、「アーウィン」と同程度の甘さ(Brix)。ただし、香りと果汁が芳醇であることから濃厚な味わいが演出されていました。「アーウィン」よりインパクトがある味です。
 果実により味のバラつきは結構大きく、多汁だと味が薄くなる傾向があるようです。
 台湾では収穫期に灌水量を減らす指示があるのも頷けます(ただし、沖縄県は台湾と違い施設栽培ですので、灌水方法については要検討だと思います)。

 果実重量は、600~700gの文献より大きめの果実が集まっていました。
 農場全体の果実重平均とそのバラつきがどうなるのかも気になります。
 
 果肉に生理障害がある果実も見られました(写真4)。



写真4.果肉に生理障害が見られる「夏雪」果実


 「アーウィン」では果実収穫前に灌水量を控えると果肉に生理障害の発生率が高くなることが経験的に知られています。
 もし、「夏雪」で果肉の多汁を抑え糖度を上げるために灌水量を減らすとしたら、さらに生理障害が増えるかもしれません。
 収穫前の灌水方法は要検討だと改めて思いました。

 このほか、生産者の方々にうかがった内容を記します。
 開花時期および収穫時期は、いずれも「アーウィン」より早いとのことです。
 これは、沖縄県で栽培されているマンゴーの品種の中では稀な特性で魅力を感じます。
 ただし、開花時期が早いということは、寒波に遭いやすいということです。
 開花最盛期に寒波襲来した際の着果率が気になります。
 
 また、「夏雪」最大の魅力は、炭そ病の発病率が極めて低いことです。
 今回、持ち寄られた果実は収穫後10日以上のものが多く含まれていましたが、いずれの果実も炭そ病を発症させていませんでした。素晴らしい!
 今後、台湾におけるマンゴー品種育成で炭そ病耐病性の金字塔になりそうです。

 その他、連年着花(果)性、豊産性、病害虫抵抗性(ハダニが付きやすいとの声あり)、樹勢(新梢の葉色が濃くなりにくいとの声あり)等の栽培特性も併せて観察したいです。

 現在、国産マンゴーの95%は「アーウィン」という品種ですが、様々なマンゴー品種が栽培されるようになれば、より豊かなマンゴーライフが楽しめそうです。


〇参考文献
 ・李雪如.2009.「芒果新品種-高雄3号」.高雄區農業專訊;第67期.高雄區農業改良場.

〇参考サイト
 ・「高雄區農業改良場



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