熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

書籍紹介「見ながら学習 調べてなっとく ずかん フルーツ」

2014年12月16日 | 熱帯果樹総合

 今回は、熱帯果樹の書籍紹介をさせて頂きます。

 紹介する書籍は、技術評論社から2014年 8月に出版されました、米本仁巳著「見ながら学習 調べてなっとくずかん フルーツ」(本体2,680円+税)です。



 本書は、『子ども向けに書かれた熱帯果樹図鑑』とカテゴリーするのが順当かと思われます。
 本書内で用いられている漢字には全て“ふりがな”が振られていますし、可愛い果物イラストが台詞で説明しています。
 内容も子どもでも熱帯果樹に関心が持てるように、「どんな風に実が着くの?」「どうやって食べるの?」等の基本的なことに加え、「品種や害虫、栄養成分、食べる意外の用途等に関わるコラム」など様々な角度から噛み砕いて展開されています。
 写真もとても綺麗なので、眺めるだけでも満足できそうな図鑑です(図2、3)。



図2.ページサンプル「パパイア」





図3.ページサンプル「タマリロ」「ペピーノ」


 町の図書館や学校の図書室に常備して欲しい一冊と言えましょう。

 しかし、時折「対象年齢は子どもだけじゃないよ!」と言わんばかりにマニアックな切り口が炸裂します。

 例えば、マンゴスチンのページのキワノ君は「受精せずに単為生殖し、種子は母親と同じ遺伝子を引き継ぐから、みんなクローンみたいだね。」と喋っていますが、この台詞は理系専攻の高校生以上が対象だと思います(図4)。



図4.子ども相手に専門用語を連発するキワノ君


 また、学名を説明するカシューナッツ君は「(  )内がシノニムだよ。どちらの学名も検索すると、正しい情報が見つけやすくなるよ。」と、これまた大学で植物分類学を学び始めた学生にするような話をしています(図 5)。



図5.カシューナッツ君、「シノニムだよ」って言われても・・・


 さらに、「コラム・調べてみよう」というコーナーでは「熱帯フルーツの検疫」として植物防疫の検査方法や植物防疫官について説明されています。

 続いて再登場のキワノ君は「植物防疫官の人々は、国家公務員の一員なんだね!」と就活生か婚活女子みたいな驚き方です(図6)。



図6.キワノ君が説明している対象がますますわからない。


 説明文も格好良いので、来年以降の『小学生が将来なりたい職業』に植物防疫官が上位ランクインすることは間違いないでしょう。

 この様に、本書は『子どもからマニアまで幅広く楽しめる一冊』です。
 一読をお薦めします。




【お知らせ】熱帯果樹に関心のある方は「Facebook」「Twitter」もご覧ください。



 リアルで面識がなくても気軽に「ともだちになる!」とリクエストしてください。
 その際、メッセージも付けて頂けるとスパムではないことが確認でき助かります。


 気に入ったら「フォロー」してください。

書籍紹介:「中晩柑をつくりこなす」

2011年01月18日 | 熱帯果樹総合
 今回は、柑橘類の書籍紹介をさせて頂きます。

 紹介するのは、農山漁村文化協会(農文協)から2010年11月30日に発行されましたA5サイズ228ページの「中晩柑をつくりこなす」(本体2,500円+税)です。

 中晩柑とは、温州みかんや香酸柑橘(シークヮーサー・レモン等)を除く中生(なかせ)および晩生(おくて)の生食用柑橘類の総称です。
 早生(わせ)、中生、晩生の定義は、地域性もある気がしますが、中晩柑の収穫時期は概ね12月~5月(遅いものだと夏頃)だと思います。

 日本で中晩柑が増えだしたのは、温州みかんが生産および供給過剰となり、消費者が少量多品目の果実を求める様になった昭和40年代後半からです。
 温州みかんの圃場が多品目に転換される中、伊予柑や八朔、ネーブルオレンジ、夏みかんへの転換も多かった様です(佐賀果試.1990)。

 温州みかんが売れなくなって、柑橘産地の生き残り戦略は二極化した様に思います。
 1つは、他産地と差別化できる温州みかんをつくって「産地をブランド化」したところ。
 もう1つは、少量生産ながら顧客の細かいニーズに応えた「中晩柑を経営の軸とした産地」したところです。

 そして、十数年前に中晩柑の世界に一大革命が起こりました。

 商品名「デコポン」(品種名「不知火」)の登場です。
 果実のヘタ付近が飛び出した特徴ある見た目と、甘味が強くてジューシーな美味しさと、皮が剥きやすい上に薄皮ごと食べられて種子がほとんど無いという食べやすさが衝撃的でした。
 「デコポン」は、瞬く間に中晩柑のトップスター(高級果樹)となりました。

 「デコポン」登場以降は、各柑橘産地では「デコポン」に次ぐ高品質な中晩柑の新品種開発に勤しみます。
 そして近年、数多くの有望な中晩柑が品種登録され、世に送り出されました。

 しかし、栽培現場では有望品目を経営に取り入れたものの、それらの生育特性(栽培のコツ)が 十分把握がされていないこと等から、「どの品目(品種)を、どの様に作れば良いのか?」という不安がありました。

 その様な中、中晩柑農家待望の一冊が発売になったのです。

 本書の内容を目次で見ると、

●PART1 中晩柑新品種の魅力と導入戦略
  1.期待が高まる中晩柑新品種
  2.新品種の特徴と役割
  3.新品種導入のカンドコロ

●PART2 収益確保が狙える品種
 <はるみ>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

 <せとか>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

 <はれひめ>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

 <天草>
  1.導入のポイント
  2.生育の特性と栽培のポイント
  3.栽培管理の実際

●PART3 経営の幅を広げる期待の品種
 せとみ/南津海(なつみ)/はるか/麗紅(れいこう)/べにばえ/西南のひかり/津之輝(つのかがやき)/紅まどか/肥の豊(ひのゆたか)/ブラッドオレンジ/佐賀果試34号

●PART4 これから注目したい品種
 甘平(かんぺい)/愛媛果試第28号(紅まどんな)/スイートスプリング/たまみ



 となっています。
 各品目(品種)の項目を執筆しているのは、現在の日本の柑橘研究最前線を担う面々です。
 中晩柑を栽培されている方は、必読の一冊だと思います。


○参考文献
 ・「中晩生カンキツの原料特性に関する基礎研究」.1990.佐賀果試験報;10;p.1-66.佐賀県果樹試験場.

○参考サイト
 ・「田舎の本屋さん(農山漁村文化協会)

書籍紹介「〔色と手ざわりで探せる〕熱帯くだもの図鑑」

2009年01月26日 | 熱帯果樹総合
 今回は、熱帯果樹の書籍紹介をさせて頂きます。

 紹介する書籍は、(財)海洋博覧会記念公園管理財団から創立30周年を記念して、2009年1月に発行された、「〔色と手ざわりで探せる〕熱帯くだもの図鑑」(本体2,000円+税)です。



 本書は、熱帯・亜熱帯地域で栽培されている果物106種に加え、沖縄県で自生し親しまれている果物21種の合計127種の果物について、果物の色や手ざわりから調べられる図鑑です。



 この図鑑の特徴である「色と手ざわりで探す熱帯果物検索図」では、掲載されている果物を熟期の色(赤、橙、黄、緑、茶、紫、黒、の7種類)と手ざわり(滑らか、粗い、突起がある、毛がある、の4種類の)を手がかりに調べることができます。

 これまでの植物図鑑では、植物名や大まかな分類を知らないと検索しづらいという欠点がありましたが、見事に改善されています。
 もちろん、これまでの図鑑と同様に、和名及び学名、英名でも検索できます。

 本図鑑では、果物は基本的に1ページ(A5サイズ)に1種ずつ写真と説明文が掲載されています。果物の結実状態の写真に加え、断面図や可食部の写真が充実しているのも特徴です。
また、植物園で作成された図鑑らしく、果物ごとの栽培暦や開花期、結実期がカレンダーで紹介されています。

 本図鑑は、沖縄県内書店及び海洋博覧会記念公園(熱帯ドリームセンター等)で販売されています。
 数に限りがある書籍なので、早めに入手しておきたい1冊です。