熱帯果樹写真館ブログ

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(続報)三尺バナナが収穫されました

2007年06月03日 | バナナ
 2006年11月19日に「花のかたち 果実のかたち バナナ出蕾~袋掛けまで」と題して、知人宅で開花、結実した三尺バナナについて開花初期の状況や結実期の管理の記事を書きました。
 その三尺バナナが5月中旬に収穫されましたので、今回は既存の記事の後日談を書きたいと思います。

 知人から「三尺バナナの最上段が黄色く色づきだしたので収穫をしたい」と声が掛かったのが5月12日でした。
 私は、翌日の5月13日に知人宅に伺いました。

 バナナの収穫適期の判断は、果房中央付近の果指を観察し、稜角の鋭鈍及び果指の肥大状況、果皮色(緑色の退色具合)等の総合判断をもって行います。

 市場出荷を考える際は、夏実は収穫後の追熟が早いため7部熟で収穫し、冬実は8.5部熟程度で収穫するのが目安となります(写真1)。


写真1:バナナの収穫適期の目安(市場出荷用)


 ただし、地場消費や消費者への直送を考えると8.5~9部熟で収穫して良いと思います。

 今回の知人は「自宅やご近所さんで消費するので、完熟収穫を行いたい」との希望がありましたので、果皮が黄色く色づくまで待って収穫しました(写真2)。


写真2:果軸の付け根付近から色づくバナナ


 バナナの収穫の時間帯は、果実の腐敗や品質低下を避けるため午前10時頃までがお薦めの様です。
 バナナの収穫方法は、果軸の先端を握り、果軸の付け根をノコギリ等で切り取り、果房ごと収穫し、そのまま園地付近の水道水で果実を洗える場所まで運びます。

 園地内で細かく切った方が楽に運搬できると思われますが、切り口から雑菌が入ることによる腐敗や品質低下を少なくするため果軸ごと運搬します。
 水道水が使える場所まで運んだバナナは流水で綺麗に洗います。
 大量にバナナを栽培されている方は大きめの容器や洗浄プールに水を溜めてまとめて洗います。

 沖縄産バナナは店頭で果軸ごとぶら下げ、ディスプレイを兼ねた販売方法がとられるケースがありますので、果掌を切り分けず出荷することがあります。
しかし、取扱を考えると果実は水洗後に果掌に切り分けた方が運搬、箱詰めが便利です。

 しっかり洗い終えた果実は、日陰の涼しい場所で扇風機等を用いて風乾させます。

 以上が、一般的なバナナ収穫時の取扱方法なのですが、今回は「色づいた果掌だけ収穫したい」と云う知人の要望にお応えして、小型ノコギリを用い1段目と2段目のみを収穫しました(写真3)。


写真3:収穫した果掌


 しかし、その後の結論を先に書きますと、5月15日には下段も全て色づいたり果皮が裂けてきたので、結局5月15日に全て収穫を終えたそうです。
 つまり「完熟収穫」に拘ったとしても5月13日に一括に収穫して良かったと思います。
 従って、このバナナの「完熟収穫」は、5月13日だったと判断します。

 そうしますと、この株の開花最盛期が平成18年11月11日でしたので、11月に出蕾した三尺バナナの完熟収穫までの日数は183日間になります。
 また
 これは沖縄県の果樹栽培要領に書かれているバナナ(仙人種)の開花時期から収穫までの所要日数(表1:11月開花であれば160日)より3週間ほど長く結実していたことになりますが、市場出荷を考えて通常の収穫で考えると近い日数かもしれません。

表1:収穫までの所要日数は開花時期(仙人種)

「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.より抜粋


 因みに開花最盛期の平成18年11月11日から収穫前日の平成19年5月12日までの名護市の平均気温の積算温度は3,464℃となっていました(沖縄気象台HPより)。

 次に収穫されました三尺バナナの果掌ごとの果指数と重量を表2に記します。
 果掌の段数は基部に近い側を1段目とし、重量は写真3の様に果軸を除いた状態で測定しました。

表2:収穫された三尺バナナの果掌ごとの果指数と重量


 今回収穫された三尺バナナの果掌の段数は8段、果指数は122本/房、果実重量は18.0kg/房でした。
 
 このバナナは知人のご近所に配られ、とても好評だったそうです。
 この三尺バナナの株は収穫後切り倒され、引き続き3本の吸芽が育成されています。
 次回の収穫に期待が膨らみます。

○参考文献
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台