熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

バナナの葉切除と果実品質

2012年11月16日 | バナナ
 2012年の沖縄本島は台風の当たり年でした。
 それも10月18日に最接近した台風21号を最後に終わった様です。

 さて、2012年9月26日に「台風対策事例01 バナナ」と云う記事を書きました。
 その中で、台風の強風でバナナの株を倒伏されない様に予め葉の一部を切除する方法を紹介しました。

 その効果は確かにあり、前回紹介した株は台風17号でも倒伏しませんでした(写真1)。



写真1.台風17号でも倒伏しなかったバナナ



 しかし、一部とは言え葉がなくなったバナナの果実品質はどうなるのでしょうか?

 前回紹介した株の出蕾時期は7月下旬でした。
 それを台風15号襲来前の8月25日に葉の1/3を残した状態で切除しました。
 その後2つの台風(16号、17号)の直撃および1つの台風(21号)の接近がありましたが、倒伏しませんでした。
 しかし、10月16日には、大部分の果実(果指)は太ることなく果皮が淡黄色に着色し、一部の果指は枯死しました(写真2)。



写真2.果指が太らず着色したバナナ果実



 この果実を収穫して食してみましたが、果肉は硬く渋くて食べられませんでした(写真と株と同様のもう1株で確認)。

 このことから、7月下旬に出蕾した株では出蕾1ヶ月後に葉を1/3残す様な切除をすると、果実は肥大せず、(果肉の澱粉が糖化しておらず)食べ られたものではないことがわかりました。

 また、6月中旬頃に出蕾した別の株を用いて、同様に出蕾2ヶ月後に1/3残す様な切除をしました。
 こちらの株では、果実は十分肥大していない状態で果皮が着色したものを食すと、一応バナナらしい風味で食べることができました。

 これらのことから、バナナの葉を切除する際は、

 (1) 切除時期:出蕾からどの程度の期間がたっているか。
 (2) 葉の切除程度:どの程度の葉面積を残すのか。
 (3) その結果、株は倒伏するのか、果実品質(肥大と食味)がどうなるのか。

 を考えた方が良さそうです。

 これを表にすると、


表1.バナナの葉切除時期と程度が収穫後果実に及ぼす影響(作成途中)




 といった具合になります。
 今後、表1の空欄を埋めることで台風対策のやり方が見えてくると思います。
 そして、最終的には「葉を切除する際の果実の太り具合から残すべき葉面積が判断できる指標」が欲しいです。

 あとは「強風時に避けた葉を伴う果実は、健全葉のそれと比べて果実肥大や食味が異なるのか?」も知りたいです。

 加えて、別の株で葉を切除した後に出蕾したものがありましたが、その花序および果実は正常に育たず、とても小さくなりました(写真3)。



写真3.葉を切除した株から出た花序と果実は小さい。



 最後に、台風が来ても果実品質を保つための最終手段として施設栽培も紹介しておきます(写真4)。
 沖縄県(主に本島中部地区)では、平張り施設を利用したバナナ栽培を10年以上取り組んでいます。
 栽培しているのは「三尺」バナナを主とした矮性品種です。



写真4.バナナ用の平張り施設 (左)外観、(右)内部



 しかし、施設建設には初期費用が多くかかるので、誰にでもできる対策とは言いがたいです。

 今年、沖縄本島のどこかで「露地でも10~11月に上等なバナナを収穫できたよ」という方がいらっしゃいましたら、コメント欄に情報をお寄せください。
 沖縄県のバナナ産業の未来を切り拓く知恵をご教授ください。
 よろしくお願いします。