熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

バナナ動画一覧

2022年06月06日 | バナナ
2022/05/22
島バナナ吸芽の掘り取り方法
How to dig out the Sucker of Banana.


2022/05/14
【 バナナ栽培のポイント 】余分な吸芽は除去
【 Key Points of Banana Cultivation 】Remove excess the Suckers.


2022/01/24
島バナナの萎凋病(パナマ病)
Panama disease of Banana


2022/01/13
敷草の効果 -島バナナ編-
The effect of dead grass mulching. - Banana version -


2021/03/26
バナナ果実の糖度測定



「甘熟王 ゴールドプレミアム®」、「バナップル®」を食べました。

2015年05月26日 | バナナ

 平成27年5月21日、沖縄県中央卸売市場で(株)スミフルがフィリピン産の自社ブランドバナナ「甘熟王 ゴールドプレミアム®」と「バナップル®」の試食キャンペーンを行っていました(写真2)。



写真2.(株)スミフルのバナナ試食ブース

 
 「甘熟王 ゴールドプレミアム®」は、高地栽培した「キャベンディッシュ」系統で(株)スミフルが「濃厚旨味の最高傑作」と誇る高品質バナナです(写真3)。



写真3.「甘熟王 ゴールドプレミアム®」


 試食をしていた買受人(セリに参加して品物を買う人)からは、「美味しい」「高地栽培バナナにハズレなし!」と高評価を得ていました。
 私の感想は、「果肉もしっかりとしていて食感も好み、美味しい『キャベンディッシュ(普通のバナナ)』」です。買受人の方が言うように「高地栽培のバナナはワンランク上」の期待を裏切らない品質でした。

 「バナップル®」は、バナナの健全種苗を得るために茎頂点培養を行っていた際に変異で生じた(株)スミフルのオリジナル系統だそうです(写真4)。



写真4.「バナップル®」


 「バナップル®」特性は、果指がやや短めで太め、果皮薄め、果肉がモチモチして、酸味が強い個性派バナナです(写真5)。



写真5.ずんぐりむっくりした「バナップル®」の果指。


 果皮が薄いために果皮が黒ずみやすい欠点はある様ですが、フードパックに入れた荷姿で流通させることで打撲を軽減しています。
 また、果皮は黒ずんでいても、剥けば果肉は正常である場合もあるので見た目が少し悪くても気にしなくて良い様です(写真6)。



写真6.果皮が黒ずんでいても果肉は白い「バナップル®」


 試食をした人たちからは「『島バナナ(小笠原種)』に似ている」との声もありましたが、私は甘味と酸味は「島バナナ」が強め、ボリュームは「バナップル®」があると思いました。

 美味しいバナナの試食提供をしてくださった(株)スミフルに感謝します。


〇参考サイト
 ・「㈱スミフル




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バナナの葉切除と果実品質

2012年11月16日 | バナナ
 2012年の沖縄本島は台風の当たり年でした。
 それも10月18日に最接近した台風21号を最後に終わった様です。

 さて、2012年9月26日に「台風対策事例01 バナナ」と云う記事を書きました。
 その中で、台風の強風でバナナの株を倒伏されない様に予め葉の一部を切除する方法を紹介しました。

 その効果は確かにあり、前回紹介した株は台風17号でも倒伏しませんでした(写真1)。



写真1.台風17号でも倒伏しなかったバナナ



 しかし、一部とは言え葉がなくなったバナナの果実品質はどうなるのでしょうか?

 前回紹介した株の出蕾時期は7月下旬でした。
 それを台風15号襲来前の8月25日に葉の1/3を残した状態で切除しました。
 その後2つの台風(16号、17号)の直撃および1つの台風(21号)の接近がありましたが、倒伏しませんでした。
 しかし、10月16日には、大部分の果実(果指)は太ることなく果皮が淡黄色に着色し、一部の果指は枯死しました(写真2)。



写真2.果指が太らず着色したバナナ果実



 この果実を収穫して食してみましたが、果肉は硬く渋くて食べられませんでした(写真と株と同様のもう1株で確認)。

 このことから、7月下旬に出蕾した株では出蕾1ヶ月後に葉を1/3残す様な切除をすると、果実は肥大せず、(果肉の澱粉が糖化しておらず)食べ られたものではないことがわかりました。

 また、6月中旬頃に出蕾した別の株を用いて、同様に出蕾2ヶ月後に1/3残す様な切除をしました。
 こちらの株では、果実は十分肥大していない状態で果皮が着色したものを食すと、一応バナナらしい風味で食べることができました。

 これらのことから、バナナの葉を切除する際は、

 (1) 切除時期:出蕾からどの程度の期間がたっているか。
 (2) 葉の切除程度:どの程度の葉面積を残すのか。
 (3) その結果、株は倒伏するのか、果実品質(肥大と食味)がどうなるのか。

 を考えた方が良さそうです。

 これを表にすると、


表1.バナナの葉切除時期と程度が収穫後果実に及ぼす影響(作成途中)




 といった具合になります。
 今後、表1の空欄を埋めることで台風対策のやり方が見えてくると思います。
 そして、最終的には「葉を切除する際の果実の太り具合から残すべき葉面積が判断できる指標」が欲しいです。

 あとは「強風時に避けた葉を伴う果実は、健全葉のそれと比べて果実肥大や食味が異なるのか?」も知りたいです。

 加えて、別の株で葉を切除した後に出蕾したものがありましたが、その花序および果実は正常に育たず、とても小さくなりました(写真3)。



写真3.葉を切除した株から出た花序と果実は小さい。



 最後に、台風が来ても果実品質を保つための最終手段として施設栽培も紹介しておきます(写真4)。
 沖縄県(主に本島中部地区)では、平張り施設を利用したバナナ栽培を10年以上取り組んでいます。
 栽培しているのは「三尺」バナナを主とした矮性品種です。



写真4.バナナ用の平張り施設 (左)外観、(右)内部



 しかし、施設建設には初期費用が多くかかるので、誰にでもできる対策とは言いがたいです。

 今年、沖縄本島のどこかで「露地でも10~11月に上等なバナナを収穫できたよ」という方がいらっしゃいましたら、コメント欄に情報をお寄せください。
 沖縄県のバナナ産業の未来を切り拓く知恵をご教授ください。
 よろしくお願いします。

台風対策事例01 バナナ

2012年09月26日 | バナナ

 2012年の沖縄島周辺は台風の当たり年の様です。

 これまでに、
 6月上旬:台風3号(6/5に南大東島が暴風域に)
 6月中旬:台風4号(6/18夕方から沖縄島で暴風を警戒)
 8月上旬:台風11号(8/5に沖縄島直撃、暴風域はなし)
 8月下旬:台風15号(8/25-27に沖縄島が暴風域に、最大瞬間風速は那覇市で38.5 m/s)
 9月中旬:台風16号(9/15-16に沖縄島が暴風域に、最大瞬間風速は宮城島(うるま市)で57.5m/s)

 そして、9月下旬には史上最大の台風17号がフィリピン沖に控えています。

 沖縄県では、台風は毎年発生する自然災害と割り切って付き合わないといけません。
 しかし、何も対策をしないと果樹園は大きな被害を受けます。
 そこで、果樹園を防風林で囲ったり、施設栽培をしたりと普段から台風を意識した栽培を行っています。
 また、品目ごとに様々な台風対策の工夫がされています。

 今回は、バナナの台風対策事例を紹介します。

 その前にバナナが暴風でどの様な被害を受けるかについて(社)国際農林業協力協会から出版されている「バナナ」という書籍から抜粋します。

 秒速20m/s以上の強風では葉は破れ、葉柄は折損する。とくに暑い乾季に強い風が長時間吹くと、葉が乾燥してずたずたに切れ、しおれてしま う。
 株丈が高いバナナでは、強風による被害が大きいことは当然のことであり(表1)、株丈の高いバナナでは、時速40km(秒速11m)以上の強風 で果実収量が著しく減少するが、Grand nain 種のようなわい性バナナは、70km(秒速約19m)以上の強風でようやく影響が出るといわれる。


表1.強風によるバナナ株の被害
(Stover R. H. ら,1987)





 上記の様にバナナは熱帯果樹の中でも特に風害を受けやすい品目であることが伺えます。
 そのため、バナナ栽培は防風林で囲んだ畑や平張りネット施設で栽培(株丈の低い「三尺」等)することが基本となります。

 この他に結果株は支柱で支えて倒伏しにくくするのも効果的です(写真2)。



写真2.杭を2本/株 使った防風対策事例



 さらに前述の冊子「バナナ」には、

・台風の襲来が明らかになって、強い風が吹き始めたら、商品性の高いと判断される果実は収穫する。(中略)

・風がさらに強くなってきて、株の倒伏と折損が懸念される場合、葉を半分の長さに切除する。風の強さにもよるが、幼葉の場合はなるべく葉の切除を少なくする。



 と云った最終手段も書かれています。

 葉を切除するときには、2012年6月11日の記事で紹介した小型鎌をVP25塩ビパイプに繋いで伸ばした道具が役立ちます(写真3)。



写真3.小型鎌を延長



 台風15号前に葉の長さを半分(強)程度でザックリと落としてしまった事例ですが(写真4)、台風16号、台風17号にも負けず倒伏していません(写真5)。
 因みに同じ場所で葉を切除しなかった結実中の株は概ね(2.5株/3株)倒伏しました。



写真4.バナナの葉を半分(強)程度切除





写真5.台風16号後も倒伏しなかった
(背景にあった他の株は倒伏したので見通しが良くなっています)



 葉の切除により葉面積が小さくなってしまったので果実肥大や品質に不安は残りますが、バナナの台風対策の手段として憶えておいて損はないと思います。


〇参考文献
 ・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).

〇参考サイト
 ・「気象庁
 ・「沖縄気象台
 ・「Joint Typhoon Warning Center (JTWC)」;米軍の台風情報

星に願いを - バナナの黒星病 -

2012年07月07日 | バナナ

 七夕なので星に因んだ話としてバナナの黒星病の話を書きます。

 バナナを栽培していると葉や果実に小さな黒い点々(以下、病斑)が観察されることがあります。
 病斑の表面が盛り上がっていてザラザラしていれば、黒星病の可能性が大です。

 黒星病の病原菌は Macrophoma musae (Cooke) Berlese et Voglino というカビの一種です。
 この病原菌について渡邊(1977)が「熱帯の果樹と作物の病害」という書籍に詳しく特徴を記しています(μはμmのことだと思います)。

 Macrophoma musae (Cooke) Berlese et Voglino という不完全菌の寄生による。病斑上の黒色小粒点は本病の柄子殻である。これは球形~扁球形で50~90×70~155μの大きさで1個の孔口が外に開いている。中には柄胞子を蔵し、その大きさは12~23×6~13μである。



 また、渡慶次(1997)は「熱帯果樹の病害」という書籍で上記の情報に「柄胞子は無色、単胞、卵形~広楕円形」という情報も追記しています。

 バナナの葉や果実に黒星病っぽい病斑を見つけたら柄胞子を観察して、黒星病であるという確信を深めましょう。

 その手順は、
 ① 剃刀やナイフの刃等で黒色小粒点を削り、粉状にしてスライドガラスに落とす。
 ② ①に水を一滴加えた後にカバーガラスを掛ける。
 ③ カバーガラスを軽く押さえて余分な水を端から出し、ティッシュペーパー等で吸い取る。
 これで標本観察用のプレパラートが完成します。

 そして、理科室等にある光学顕微鏡で観察します。
 上手にプレパラートを作成できていれば写真2の様に柄子殻から柄胞子が溢れている様子が観察できるはずです。



写真2.バナナ黒星病の柄子殻から溢れた柄胞子(拡大率400倍)



 さらにマニアックに黒星病の観察を続けます。
 今回は、「株式会社 キーエンス KEYENCE Japan」の営業マンS氏の好意で最新式のデジタルマイクロスコープ(顕微鏡)「VHX-2000」を使って、黒星病の病斑を観察することができました。

 まずは小手調べ、拡大率30倍で病斑を観察します(写真3)。



写真3.バナナ黒星病の病斑(拡大率30倍)



 実体顕微鏡で観察した様な画像が楽しめます。
 ここでは、病斑に様々な大きさがあるのがわかります。

 次に写真3の中央当たりを拡大率200倍で観察します(写真4)。



写真4.バナナ黒星病の病斑(拡大率200倍)



 かなり大きくなりました。
 真ん中の病斑は中央が綺麗に盛り上がり柄子殻が形成されています。
 しかし、上のやや小さい病斑では、柄子殻が盛り上がり始めです。
 下の小さめの病斑では、柄子殻は盛り上がる前です。
 病斑が真ん中位の直径(350~360μm程度)になれば、柄子殻が形成されるのでしょう。

 あと、この写真が凄いのは、柄子殻の中央が盛り上がっているにも関わらず、柄子殻の頂上部分も裾野である葉の部分も全てにピントが合っていることです。
 実はこの写真は、様々な位置でピントを合わせ複数のデジタル写真を撮影した後にピントが合っているところだけを集めて合成することで得られたものです。

 さらに、写真4を作成する段階で葉上の病斑がどの様に盛り上がっているのかが解析されデジタル画像が作られています。
 この画像は専用のソフトで3Dで自由自在に角度を動かしながら見ることができます。

 今回は、柄子殻が盛り上がっている様子が一番わかる画像をお見せします(図1)。



図1.バナナ黒星病の病斑の起伏(イメージ画像)



 こうなってくると柄子殻の直径や高さがどうなっているのか気になります。
 そこは最新機器。
 要望に見事に応えてくれます(図2)。



図2.バナナ黒星病の病斑の起伏(幅と高さを測定)



 柄子殻の直径は233.5μm、高さは29.21μmです。
 こんな作業がパッとできます。
 「VHX-2000」凄すぎます。


 さて、黒星病の防除方法も記しておきます。
 黒星病の病原はカビの仲間ですので、加湿条件でよく発病し、雨により感染拡大します。
 また罹病した葉や枯れ葉が感染源になります。

 そのため、本病の予防方法は、
 ① 密植を避け、通風を良くする。
 ② 罹病葉や枯れた葉は速やかに畑の外に除去する。
 ③ 果実は抽出1ヶ月以内に袋掛けを行い雨よけする。
 となります。

 農薬による防除を行う際は、「アミスター10フロアブル」と「ストロビードライフロアブル」の2種類が登録されています(図3)。
 どちらの薬剤も治療効果も備えた薬剤ですので、病斑が見え始めてから散布しても感染拡大の抑制が期待できます。



図3.バナナ黒星病の登録農薬(2012年7月5日調べ)
※フリーの農薬登録情報検索ソフトACFinder を用いて検索しました。



 黒星病は軽度の発症ではバナナ果実の食味等に影響しませんし、株が枯れることもありません。
 しかし、重度の発症になればバナナ果実が固くなったり、葉が枯れて、株も枯れることがあるそうです。

 雨が当たる環境でバナナを栽培していれば、黒星病は普通に見られる病害です。
 特徴をおぼえて、蔓延しない様に気をつけましょう。


○参考資料
 ・「熱帯の果樹と作物の病害」.1977.渡邊龍雄.pp.15.養賢堂.
 ・「熱帯果樹の病害」.1994.pp.29.社団法人 国際農林業協力協会(AICAF).バナナの黒星病の頁は、渡嘉敷唯助 氏が執筆.

○参考サイト
 ・「株式会社 キーエンス KEYENCE Japan
 ・「農薬登録情報検索クライアント ACFinder

良き道具にこそ匠あれ01 - バナナの葉落とし用小型鎌 -

2012年06月11日 | バナナ

 タイトルの『 良き道具にこそ匠あれ 』は、ブログ「【彼女の愛した南イタリア】- Diario 」の2012年1月10日の記事からの引用です。

  'E fierre fann' 'e maste
  (イタリア語訳注 は Con buoni attrezzi si fanno buoni lavori.)

  『良き道具にこそ匠あれ』
  ・・・訳注では
  良い道具を使うと、よい仕事ができる。 



 良い言葉ですね。
 私は「技術は知識か道具に昇華しよう!」と云う持論を唱えています。

 例えば、「紙をまっすぐに切る」作業をしたい場合。
 「紙を切る前に直線をひいて、その線に沿って切ればまっすぐに切りやすいよ」という具体的なアドバイスは「知識に昇華」です。
 「道具に昇華」は、紙を切るために「ハサミ」を発明するがベストですが、ハサミの存在を知らない人にハサミを紹介する、でも可です。

 前置きが長くなりましたが、『良き道具にこそ匠あれ』は私が初めて見たときや使った際に「感動を覚えた熱帯果樹に関わる道具」を紹介するコーナーです。

 第1回目は、バナナの葉を切り落とす小型鎌です。

 バナナの栽培管理に、古くなったり病気になった葉を(付け根の葉柄から)切り落として、畑の外に持ち出す作業があります。
 これは、光合成能力が落ちた古い葉や病原体の温床となる葉を除去することで、株の草勢維持や病害蔓延を予防するために行われます。

 この作業では、草刈などで使う普通の鎌を用いる方が多い様ですが、バナナの葉柄は柔らかく切りやすいので「軽くて、刃が薄く、切りやすい形状の鎌」で作業すれば楽になります。

 そこで紹介したいのが沖縄島中部のバナナ農家の方がよく使っている 「小型鎌」です。
 小型鎌は、写真のとおり普通の鎌と比べ小さいです(写真2)。



写真2:小型鎌(左)と普通の鎌



 小型鎌の重さは、50gと普通の鎌(140~160g)と比較して約50%軽量化です。
 刃の厚さ(刃の中央で計測)は、1.0mmと普通の鎌(1.4~2.0mm)より薄めで抵抗が少なく切れます。
 また、葉柄を切り落とす際に普通の鎌は引く作業で切るのに対し、押す作業で切れるので人間工学的にも優れておりストレスの少ない作業ができます。

 私はこの小型鎌を中城村にある「JAおきなわ中城支店」の購買部で買いました(税込み525円)。
 刃に彫られた文字や柄に貼られているラベルから推察するに、台湾製の様です(写真3)。



写真3:台湾製っぽい



  この小型鎌の柄に長い棒(VP25の 塩ビパイプが小鎌の柄にジャストフィット)を固定して延長すれば、手が届かない様な高い株や台風襲来時(前)に株の倒伏や折損が懸念される際に行う「葉を半分程度の長さに切除する」作業も楽に行えそうです(写真4)。



写真4:VP25の塩ビパイプが小型鎌の柄にジャストフィット!




○参考サイト
 ・「【彼女の愛した南イタリア】- Diario

農薬を使わないバショウゾウムシの防除方法(案)

2010年12月29日 | バナナ
 先日、「バナナの芋(真茎)を食い荒らす害虫」と題して、バナナの芋(真茎)を加害するバショウゾウムシの記事を書きました。
 前回は、バショウゾウムシとバショウツヤオサゾウムシの見分け方について書きましたが、今回はその続報となるバショウゾウムシの防除方法についてです。

 バショウゾウムシは世界中のバナナ生産地域で重要な害虫として扱われています。
 諸外国では多くの場合、本虫の対策に農薬(殺虫剤)が使用されています。
 しかし、農林水産消費安全技術センター(FAMIC) の農薬登録情報ダウンロードで調べた結果、2010年末現在、国内ではバショウゾウムシを対象とした農薬は登録されていません。

 そこで、農薬を使わないバショウゾウムシ対策の参考となる情報を探しました。
 そして、「Organic banana 2000(PDF:1.48MB)」という、2000年に出版されたカリブ海周辺地域でのバナナの有機栽培の文献集を見つけました。
 この文献集のp.133-142に、「Pest management in organic systems」と題して、バナナの有機栽培をする上での害虫等管理について書かれている文献がありました。
 さらに、その中に「Banana weevil(バナナのゾウムシ)」と題した章がありました。
 読んでみて、内容が面白かったので抜粋・要約して紹介します。

 この章では、主に有機栽培におけるバショウゾウムシの防除方法について書かれています。
 ここでは、バショウゾウムシの対策として

 1. 健全種苗の確保
 2. 適切な作付け体系
 3. 作物残さの処理
 4. 罠の設置
 5. 生物学的防除



 が大切だとして、それぞれ具体策が書かれています。

 1.健全種苗の確保
 ・ 吸芽の皮を剥くとゾウムシの卵はほぼ除去できる。
 ・ 特にゾウムシ被害が大きい吸芽は苗として用いない。
 ・ 苗を温湯処理する(ゾウムシの幼虫と卵は43℃の湯に3時間浸漬すると死滅する)。



 この方法は、古くなった風呂桶等でも数回に分けて苗を植えつける場合なら使えそうです。
 因みに、54℃の温湯処理では、線虫が死滅し、ゾウムシの成虫もわずかな量に抑制されるとも書かれています。

 この他にも、バイオ苗(茎頂点培養苗)はゾウムシやウィルス病等が侵入・感染していない苗なので、積極的に使いたいです。

 2.適切な作付け体系
 ・ 被害が多い場合は、間作する(バナナ以外の非寄主作物を作る)。
 → 年間25m未満しか移動しないとされるバショウゾウムシでは被害が軽減しづらい。



 病害虫が大発生(概ね30%以上の株が被害を受けた状態)した場合に、一時的に圃場で栽培する作物を別の作物に替えることがあります。
 病害虫が共通していない作物を順番に作る、いわゆる「間作」です。

 しかし、バショウゾウムシが加害しない作物を数年間栽培しても、次にバナナを栽培するとまたバショウゾウムシの害が発生するそうです。
 原因は、バショウゾウムシは定住性が強いため。
 バショウゾウムシの定住性が強いのは、本虫は翅(ハネのこと)はあるけれど飛ぶことができないこととも大きく関わっていると思われます。

 また、間作を行っても、圃場周辺にバナナの残渣が残っていたり、バナナ圃場が隣接している等の場合は、間作の效果は低いと思われます。

 3.作物残さの処理
 ・ バナナを更新する際に、古株の仮茎及び根塊を除去する。
 ・ 残渣の敷き草は株元から50~100cm離して敷き草とする(効果は不明)。



 これは、前述の内容と重複しますが、ゾウムシの繁殖場所(残渣)は除去した方が個体群密度は下がるという話です。
 ただし、バナナの残渣は一長一短はあるものの、やっぱり敷き草にされている例が多い様です。

 4.罠の設置
 ・ 仮茎の断片を罠として用い、ゾウムシの個体群密度を下げることができる。
 → しかし、必要とする材料と労力が過度にかかる。
 → 研究者は、情報化学物質で性能を高めた罠を用いて調査を行っている。



台湾のバナナ文献「香蕉保護技術」にも、以下の様に仮茎を用いた罠の設置方法が書かれています。

  圃場内に穴(4個/a)を掘る。
 収穫後の仮茎を45~60cmの程度に切り、縦に半分に切って、切り口を下にして穴に設置する。

 降雨後、落し穴を開け調査し、4個の穴に誘引されたゾウムシの総数が8個体以上のとき(2個体/穴以上、株出し圃場では3個体/穴以上)は直ちに防除(農薬散布)を実施する。 



 「香蕉保護技術」の方法だと40個/10aの罠を設置し、さらに発生予察にしか使えないことになります。
 これをバショウゾウムシの個体群密度を抑えるために用いると、頻繁に仮茎断片を取り替えることになるのでしょう。
 確かに「必要とする材料と労力が過度にかかる」というのが大きな欠点です。

 また、研究者が用いている「情報化学物質」は、恐らく化学合成フェロモン剤だと思われます。
 フェロモン剤(誘引剤)は、殺虫剤ではありませんが、農薬取締法では農薬の1つとされています。
 つまり、国内でバショウゾウムシを対象とした「情報化学物質」はない、ということになります。

 これら方法は魅力的ですが、実現性に欠ける様に思います。

 5.生物学的防除
 ・ バショウゾウムシの天敵利用
 → フタフシアリの仲間(以下、アリ)が有効な捕食者であると報告されている。
 → 仮茎の断片でアリの巣作りを促進し、それを他のバナナの株に移すことを試みた。
 → アリを昆虫病原物質(entomopathogen)と共に用いたときに最も良い結果が得られた。
 ・バショウゾウムシの生物学的防除について、以下の様な研究が行われている。
 → 昆虫病原糸状菌類や昆虫病原性線虫、内生菌を利用した研究。
 → 情報化学物質(semiochemicals)を誘引剤として罠と組み合わせて用いる研究。
 → 上記の誘引剤と病原性微生物と組み合わせて使用する研究。



 ここで書かれているフタフシアリの仲間とは、ツヤオオズアリ(Pheidole megacephala)とタイワンシワアリ(Tetramorium guineense)です。
 ツヤオオズアリなら沖縄県なら探せば見つかるかもしれません。
 しかし、ウガンダとタンザニアでは、フタフシアリ(特にツヤオオズアリ)がバナナの株で広範囲に生息しているにも関わらず、それらによるゾウムシの防除効果は確認されていないそうです。
 国内でアリをゾウムシの天敵として利用する前に、アリがいる株でのゾウムシの寄生状況等を調べる必要があると思われます。

 また、昆虫病原糸状菌類の例として白きょう病菌(Beauveria bassiana) や 黒きょう病菌(Metarhizium anisopliae)が、昆虫病原性線虫の例として Steinernema spp. や Heterorhabditis spp. が、内生菌の例として非病原性のFusarium spp.が挙げられています。
 これら(の仲間)は、日本国内でも分布が確認されていますので、同様の研究(效果確認)をする価値があるかもしれません。

 以上の様に、すぐに利用できる対策から今後の研究発展に期待するものまで様々ですが、興味深い内容だと思います。
 沖縄県内でも多くの民間療法的なゾウムシ対策がありますが、そういったものも效果まで確認して情報を共有すれば、農薬を使わないゾウムシの防除方法が確立されるかもしれません。
 そして、今よりもバナナの栽培が簡単になる日が来ることを願っています。

〇参考文献
 ・「Pest management in organic systems」.2000.Mark Holderness・John Bridgel・Clifford S. Gold.Organic banana 2000(PDF:1.48MB);p.133-142.
 ・「香蕉保護技術」.黄新川・鄭充・荘再揚.1990.台湾省政府農林庁・台湾省青果販売組合.

〇参考サイト
 ・農林水産消費安全技術センター(FAMIC) の農薬登録情報ダウンロード

バナナの芋(真茎)を食い荒らす害虫

2010年12月26日 | バナナ
 2010年12月10日、名護市の某バナナ栽培施設で異常着色のバナナが見つかりました。
 通常、バナナ果皮色は果指がパンパンに太った後に緑色から黄色に変わります。
 また、着色は果房の基部から始まります。
 ところが、今回のバナナは果指が太る前に着色しており、しかも果房先端の果手から着色が始まっていました(写真1)。



写真1.今回 収穫されたバナナ果実(左側が果房先端)



 こういう場合は、バナナの茎を食い荒らすバナナツヤオサゾウムシ(Odoiporus longicollis)を疑うのですが、今回は見つかりません。
 それならば、と収穫を終えた仮茎を蹴ってみると簡単に地際で折れて倒れました。
 そしてバナナの芋(正確には真茎、塊茎とも云う。以下、真茎)の部分を見ると、白いデンプン部分の一部が褐色に変色していました。
 さらに詳しく観察すると、黒く怪しい陰が・・・(写真2)。



写真2.食い荒らされた真茎と潜んでいたバショウゾウムシの成虫



 バショウゾウムシ(別名:バショウオサゾウムシ)(Cosmopolites sordidus)です。
 前述のバナナツヤオサゾウムシは仮茎の上部に多く、このバショウゾウムシは根元付近に多いのが特徴です。
 この2種は大きさが やや異なります。
 バナナツヤオサゾウムシが体長13~15mmに対し、バショウゾウムシは体長10~13mmと やや小さめです。


 決定的な外観の違いは、翅(ハネのこと)の長さです。
 バナナツヤオサゾウムシの翅は腹部を十分に覆い隠せていませんが、バショウゾウムシの翅は腹部を覆い隠しています(写真3)。



写真3.左:バショウツヤオサゾウムシ成虫、右:バショウゾウムシ成虫



 色彩は、バナナツヤオサゾウムシは褐色が基本で、ために黒色の色彩変異個体がいます。
 バショウゾウムシは、基本は黒色~黒褐色です。
 今回は、バショウゾウムシで褐色のタイプがいました。
 台湾のバナナ文献「香蕉保護技術」には、羽化したての成虫は全身が赤褐色、という記述があるので、この褐色タイプは若い成虫なのでしょう。
 両種の色彩が褐色の個体を比べると、バナナツヤオサゾウムシの胸部には2本の黒紋が縦に入っていますが、バショウゾウムシの胸部には黒紋はありません。


 それ以外にも蛹を見つけられるのであれば、バナナツヤオサゾウムシの蛹はバナナの繊維で作った繭に入っていますが、バショウゾウムシの蛹は簡易な薄膜に包まれた剥き出し同然の姿で見つかります(写真4)。



写真4.左:バショウツヤオサゾウムシの蛹と繭、バショウゾウムシの蛹



 幼虫での見分け方は・・・、すいません、わかりません。
 どちらも乳白色~黄白色のブヨブヨした芋虫です(写真5)。
 見分けがつく方がいましたら、同定方法を教えてください。



写真5.左:バショウツヤオサゾウムシの幼虫、右:バショウゾウムシの幼虫



 バナナの根元付近で多いバショウゾウムシは、バナナの真茎に蓄積されたデンプン(白色)を食い荒らしています。褐色のボロボロしたものは排泄物です。
 茎の根元付近を縦断してみると、真茎部分だけが食い荒らされ、仮茎は食べていません(写真6)。
 真茎が好きなのでしょうか。



写真6.真茎は食い荒らされているが、仮茎に被害は見られない



 バショウゾウムシによる被害について、(社)国際農林業協力協会から出版されている「バナナ」という書籍には、

 本種の幼虫は仮茎、株を食害し株内で蛹化し、とくに成長点を食害する。1匹の幼虫が1仮茎を枯死させる場合がある。
 本虫の被害株は、生長が停止し、新葉の抽出が見られない。バショウオサゾウムシによって食害された仮茎は、風によって容易に地際で折れる。そのため、台風が襲来して、加害が著しい場合は倒伏、枯死する。

 (後略)



 と記されています。
 真茎だけでなく、仮茎もそして特に成長点も食害を受けるのだそうです。
 私はバショウゾウムシが、株の上部で猛威を振るっている状況を見たことがありません。

 一方、(株)全国農村教育協会から出版されている「日本農業害虫大辞典」には、

 (前略)

 幼虫は株中または仮茎中で縦横に孔をあけて加害し、被害は地際部に集中する。仮茎では幹の芯部を加害するため生育が阻害され、萎縮、枯死する茎もある。加害株では着果しても倒れやすく、台風の被害を受けやすい。

 (後略)



 と生長点への加害については書かれていません。
 しかし、どちらの文献でも「地際」は被害箇所のキーワードとなっています。

 今回の記事のポイントは、バナナに被害を与えるゾウムは、仮茎に被害が集中するバショウツヤオサゾウムシと地際に被害が集中するバショウゾウムシの2種が確認されている(成虫なら簡単に見分けがつく)、ということでした。


〇参考資料
 ・「香蕉保護技術」.黄新川・鄭充・荘再揚.1990.台湾省政府農林庁・台湾省青果販売組合.
 ・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).
 ・「日本農業害虫大辞典」.(編)梅谷献二・岡田利承.1993.(株)全国農村教育協会.
 ※バナナツヤオサゾウムシ、バナナオサゾウムシの説明は、長嶺將昭氏が執筆。 

枯死に至る病 バナナのパナマ病(萎凋病)

2008年11月15日 | バナナ
 島バナナを栽培している知人から「バナナの幹が割れる」と相談がありました。
 知人の話によると、以前にも同様の症状が現れた後に、株は枯死してしまったそうです。

 早速、現場を訪れると仮茎の基部から縦に繊維に沿って裂けていました(写真1)。


写真1:仮茎の基部が縦に裂けた島バナナ


 写真1で仮茎の亀裂以外に注目すべきは、葉の変色(縁から繊維に沿う様に黄色くなり萎れている)と、葉柄が柔らかくなり垂れ下がっていることです。
 この様に、「草木がなえしぼむこと」を専門用語で「萎凋(いちょう)」と言います。
 そして、バナナに上記の症状が出ている場合、最も疑わしい病気は、土壌菌であるFsarium oxysporum Schlechtendahl:Fries f. sp. cubense (Smith) Snyder & Hansenにより引き起こされる「パナマ病(萎凋病)」です。
 因みに、株の基部が縦に裂けているのもパナマ病の病徴の1つです。

 パッと見で簡易同定を終えた後は、同定結果の確証を得るために、さらなる病徴を探ります。
 知人の同意を得て、鎌で仮茎を一刀両断し、仮茎の断面を確認します。
 すると、維管束に当たる部分が褐変していることが確認できました(写真2、3)。


写真2:維管束が褐変した状態(罹病)  写真3:維管束が褐変していない状態(通常)


 維管束の変色もパナマ病の大きな特徴です。

 その他、パナマ病が発生しやすい環境として、国際農林業協力協会(AICAF)から発行されている大林宏 氏著のバナナ専門書「熱帯作物要覧No.30 バナナ」には

 本病で汚染している土壌は、排水不良地や、砂地で酸性化している土壌が多い


 と書かれているので、現場の状態と照らし合わしてみます。
 知人の畑の土壌は、酸性粘土質の「国頭マージ」で、近隣ではタイモを栽培している湿地帯のため湿度が高くなっていました。
 それに、以前にも同様の罹病株が出たことから、土壌中に病原菌が多いかもしれません。

 この様に、環境的にもパナマ病が発生しやすい様です。
 
 この時点で、状況証拠から知人はパナマ病と納得してくれましたが、私はマニアなので病徴が見られる仮茎の切片を持ち帰り、光学顕微鏡で観察してみました。
 すると、細い三日月状の物質が多数観察されました(写真4)。
 これは、全国農村教育協会から出版されている「植物病原菌類図説」に掲載されているFsarium oxysporum Schlechtendahl の大形分生子(図1)と似ています。


写真4:観察された細い三日月状の物質


図1:「植物病原菌類図説」掲載のFsarium oxysporum Schlechtendahl の大形分生子
(「植物病原菌類図説」より引用)


 想定していた病原菌も確認することができたので、総合的に判断して相談内容「バナナの幹が割れる」の原因は「パナマ病((萎凋病)」と判断して良いと思います。

 次に、パナマ病の対策ですが、残念なことに罹病株を元に戻す方法は現在ありません。
 専門書を見ても、被害が拡大しない様にする方法や新規植付の際に発病を予防する方法が記載されているだけです。

 国際農林業協力協会(AICAF)出版の「熱帯作物要覧No.30 バナナ」には、パナマ病の防除法として

(1)罹病株の根部が土壌中に残ったままになっていると、生成された厚膜胞子が数年間も土壌中に生存するので(pH6以下の酸性土壌で長期にわたって生存)、他の作物に転作する。

(2)本病で汚染している土壌は、排水不良地や、砂地で酸性化している土壌が多いので、他の耕地に栽培する。

(3)バナナ園が、約1割以上罹病している園での間作や輪作は、本病の軽減に効果はないので、定植園は無病地を選ぶ。

(4)根部、塊茎を傷つけない様に留意する。

(5)園内の停滞水を取り除き、排水を良くする。

(6)植え付け前に、堆肥、牛糞、豚糞などを多く施用して、土壌中の腐食含量を高めておく。


 の6点が記載されています。

 この他の防除方法として、沖縄県植物防疫協会から刊行されている「写真による 農作物病害虫診断ハンドブック」には、

 ・発病畑を放置すると新たな発生源になるので発病株は早期に伐採、焼却する。


 と、畑でパナマ病を見つけた際に実行すべき行動が明確に書かれています。

 また、台湾の農林庁から刊行されている文献「香蕉保護技術」には、

 ・(バナナの後に栽培する)転作作物は水稲が良い

 ・苗は無病地域から採取するのが良い

 ・植え付け前に堆肥等の他に緑肥を植え付けるのも良い


 と云った情報が記載されています。
 パナマ病の病原菌は、感染から外部病徴が確認されるまでに5~6ヶ月潜伏することも知られていますので、罹病株から生えた健全そうに見える吸芽も全て感染苗だと考えた方が良さそうです。

 あと、島バナナはパナマ病に抵抗力が少ない様ですが、北蕉種、仙人種、キャベンディッシュ(Cavendish)種等はパナマ病の抵抗性品種とされています。
 パナマ病感染が多い地域では、抵抗性品種の栽植が得策だと思います。

 知らないとバナナ畑が全滅するかもしれない恐ろしい病気「パナマ病」のお話でした。


参考文献
 ・「熱帯作物要覧No.30 バナナ」.大東宏.2000.(社)国際農林業協力協会.
 ・「植物病原菌類図説」.1992.全国農村教育協会.
 ・「写真による 農作物病害虫診断ハンドブック」.2001.沖縄県植物防疫協会.
 ・「香蕉保護技術」.黄新川・鄭充・荘再揚.1990.台湾省政府農林庁・台湾省青果販売組合.
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.

(続報)三尺バナナが収穫されました

2007年06月03日 | バナナ
 2006年11月19日に「花のかたち 果実のかたち バナナ出蕾~袋掛けまで」と題して、知人宅で開花、結実した三尺バナナについて開花初期の状況や結実期の管理の記事を書きました。
 その三尺バナナが5月中旬に収穫されましたので、今回は既存の記事の後日談を書きたいと思います。

 知人から「三尺バナナの最上段が黄色く色づきだしたので収穫をしたい」と声が掛かったのが5月12日でした。
 私は、翌日の5月13日に知人宅に伺いました。

 バナナの収穫適期の判断は、果房中央付近の果指を観察し、稜角の鋭鈍及び果指の肥大状況、果皮色(緑色の退色具合)等の総合判断をもって行います。

 市場出荷を考える際は、夏実は収穫後の追熟が早いため7部熟で収穫し、冬実は8.5部熟程度で収穫するのが目安となります(写真1)。


写真1:バナナの収穫適期の目安(市場出荷用)


 ただし、地場消費や消費者への直送を考えると8.5~9部熟で収穫して良いと思います。

 今回の知人は「自宅やご近所さんで消費するので、完熟収穫を行いたい」との希望がありましたので、果皮が黄色く色づくまで待って収穫しました(写真2)。


写真2:果軸の付け根付近から色づくバナナ


 バナナの収穫の時間帯は、果実の腐敗や品質低下を避けるため午前10時頃までがお薦めの様です。
 バナナの収穫方法は、果軸の先端を握り、果軸の付け根をノコギリ等で切り取り、果房ごと収穫し、そのまま園地付近の水道水で果実を洗える場所まで運びます。

 園地内で細かく切った方が楽に運搬できると思われますが、切り口から雑菌が入ることによる腐敗や品質低下を少なくするため果軸ごと運搬します。
 水道水が使える場所まで運んだバナナは流水で綺麗に洗います。
 大量にバナナを栽培されている方は大きめの容器や洗浄プールに水を溜めてまとめて洗います。

 沖縄産バナナは店頭で果軸ごとぶら下げ、ディスプレイを兼ねた販売方法がとられるケースがありますので、果掌を切り分けず出荷することがあります。
しかし、取扱を考えると果実は水洗後に果掌に切り分けた方が運搬、箱詰めが便利です。

 しっかり洗い終えた果実は、日陰の涼しい場所で扇風機等を用いて風乾させます。

 以上が、一般的なバナナ収穫時の取扱方法なのですが、今回は「色づいた果掌だけ収穫したい」と云う知人の要望にお応えして、小型ノコギリを用い1段目と2段目のみを収穫しました(写真3)。


写真3:収穫した果掌


 しかし、その後の結論を先に書きますと、5月15日には下段も全て色づいたり果皮が裂けてきたので、結局5月15日に全て収穫を終えたそうです。
 つまり「完熟収穫」に拘ったとしても5月13日に一括に収穫して良かったと思います。
 従って、このバナナの「完熟収穫」は、5月13日だったと判断します。

 そうしますと、この株の開花最盛期が平成18年11月11日でしたので、11月に出蕾した三尺バナナの完熟収穫までの日数は183日間になります。
 また
 これは沖縄県の果樹栽培要領に書かれているバナナ(仙人種)の開花時期から収穫までの所要日数(表1:11月開花であれば160日)より3週間ほど長く結実していたことになりますが、市場出荷を考えて通常の収穫で考えると近い日数かもしれません。

表1:収穫までの所要日数は開花時期(仙人種)

「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.より抜粋


 因みに開花最盛期の平成18年11月11日から収穫前日の平成19年5月12日までの名護市の平均気温の積算温度は3,464℃となっていました(沖縄気象台HPより)。

 次に収穫されました三尺バナナの果掌ごとの果指数と重量を表2に記します。
 果掌の段数は基部に近い側を1段目とし、重量は写真3の様に果軸を除いた状態で測定しました。

表2:収穫された三尺バナナの果掌ごとの果指数と重量


 今回収穫された三尺バナナの果掌の段数は8段、果指数は122本/房、果実重量は18.0kg/房でした。
 
 このバナナは知人のご近所に配られ、とても好評だったそうです。
 この三尺バナナの株は収穫後切り倒され、引き続き3本の吸芽が育成されています。
 次回の収穫に期待が膨らみます。

○参考文献
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台