熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

殻が硬すぎるマカダミア

2008年01月20日 | マカダミア
 マカダミアと言えばハワイ土産の「マカダミアナッツチョコ」を連想される方が多いと思われますが、マカダミアの原産地はハワイではなくオーストラリアの亜熱帯多雨林地域とされています。
 マカダミアが経済栽培される様になったのは、1900年代ハワイに導入されてからです。
現在ではハワイやオーストラリアをはじめ熱帯、亜熱帯地域で広く栽培されています。

 実は、沖縄県でもマカダミアは結実します。
 経済栽培にこそなっていませんが、植物園や観光農園は当然のことながら、畑の隅や庭木等で開花、結実している風景を見かけます(写真1、2)。


写真1、2:マカダミアの花と果実


 しかし、面白いことに結実した樹をお持ちの方に「結実したマカダミアを食べましたか?」と聞くと大抵「食べたことがない」と答えられます。

 どうして、せっかく結実したマカダミアを食べないのでしょうか?
 食べない理由を聞くと「マカダミアだということを知らなかった(忘れていた)」「食べ方がわからない」といった回答が得られました。

 かなり勿体ない話なのですが、マカダミアに関しては仕方がない気もします。
 と言うのは、マカダミアは収穫適期になると果実が落果するのですが、写真2の様な緑色の状態で果実が地面に落ちます。
 大抵の方は「緑のまま落ちたから食べられない」と諦めてしまうのですが、これが大間違いです。

 マカダミアは、緑の状態で落ちてもかまいません。
 とにかく落果したら拾って、直ちに緑色の外果皮を剥きます(写真3~5)。


写真3~5:外果皮を剥くと硬い内果皮に包まれたナッツが現れます


 出てきた内果皮を剥けば、中に仁(殻果:ナッツ)が入っています。
 このことを知っていれば「知らないから食べられない」ということはなくなります。

 ところが、新たな問題が生じます。

マカダミアは、内果皮がとにかく硬いです。
 ペンチで挟んで砕こうとしても割れません。
 ペンチで固定して金槌で叩いても内果皮が割れるより、果実が弾丸の様に飛んでいく割合が高いです(とても危険です!)。
 万力で挟めば割れないこともないのですが、ナッツを1つ食べるのに労力がかかり過ぎます。

 熟した果実を目の前にして「物理的に食べられない」という稀有な状態にされるのがマカダミアです。

 私にとっても「内果皮が硬くて食べられない」状態が長く続きました。
 しかし、救世主が現れました。
 新婚旅行でオーストラリアに行くという同僚です。
私は即座に「マカダミアナッツ割りを買ってきて!」と不躾なお願いをしました。

 そして、同僚が買ってきてくれた「マカダミアナッツ割り」が写真6です。


写真6:マカダミアナッツ割り(約1,100円)


 シンプルな形状ですので特に説明は不要かと思われますが、使い方は果実台に果実を置き(ヘソを上に向けて置くのがポイント)、コアラを模られたハンドルを回してネジを締め、先端が尖った金属で果実に圧力をかけて内果皮を砕きます(写真7~12)。


写真7、8:果実のヘソを上に向け設置する



写真9、10:グリップをしっかり握り、ハンドルを回して内果皮を割る



写真11、12:中から仁が現れました


 仁は、生食も可能ですが、軽く煎って塩を振るとなお美味しく食べられます。

 最後に、果実のヘソを上に向けずに設置すると果実は上手く割れませんでした(写真13、14)。果実に圧力をかける方向は重要です。


写真13、14:ヘソを手前に向けると果実側面に窪みができるだけでした


○参考資料
 ・「熱帯果樹とその利用」.1997.大東宏.農林統計協会.


パパイアの葉にいたハダニハンター

2008年01月12日 | パパイア
 2008年1月4日に掲載した「パパイアの冬季温度管理について」で書いた様に、沖縄県でパパイアの経済栽培を行う際は、低温又は多雨の時期(11月~6月)は施設にビニール被覆を行うことが基本となります。

 これは言い換えると「パパイア栽培施設の中は、周年温かく乾燥した状態である」と言えます。
 パパイアの生育を促し、立枯症の軽減を図るために環境を整えると「温暖+乾燥」といった環境になりがちです。

 しかし、「温暖+乾燥」の条件下では幾つか問題が生じます。

 まず1つ目の問題は、パパイアは比較的水を必要とする作物ですので、雨が降らない(ビニール被覆により雨が当たらない)時期は、人の手で水をやらなければいけないことです。水はけが良い土地でたっぷり水をかけるのが、パパイアの栽培には向いています。

 もう1つの問題は、「温暖+乾燥」という環境下ではハダニ類が大発生することです。


※この先は虫の話題ですので、虫嫌いな方は読むのをここで止めて下さい。


 パパイアを栽培していて、「葉の色がかすり状に抜けて薄くなってきた様だ」「葉の光沢がなくなってきたぞ」「葉に小さな白い斑点が見られる」等と思った際は、ハダニ類の被害を疑って下さい(写真1、2)。


写真1、2:ハダニの被害を受けたパパイアの葉


 ハダニの寄生を疑ったなら、次は葉の表も裏もじっくりと観察して下さい。
 ハダニの大きさは、成虫でも0.4~0.5mmと小さいため見落とすかもしれないので、必要な方は虫眼鏡やルーペを用いて観察して下さい(写真3、4)。


写真3、4:パパイアの葉に寄生していたハダニ、ねこがため愛用ルーペ


 ルーペは小さな虫を観察するには便利な道具です。
 私が愛用しているのは、東海産業の「ピーク・ルーペ 15X(№1962)」です。
 これまで幾つかのルーペを使ってきましたが、このルーペは「形状がシンプル&コンパクト」「ぴったり被せたところでピントが合うから使いやすい」「レンズの下のフードが透明なので明るくて見やすい」「1,500円程度で購入できるお買い得感」等とお奨めの逸品です。
 因みに写真3のハダニ写真は、野外でルーペにデジカメのレンズを近づけマクロ撮影しました。

 話を戻します。
 とにかく、パパイアの畑はハダニ類が大発生しやすい条件が揃っています。
 2007年の年末に知人のパパイア畑を訪ねた際もハダニが大発生していました。

 私は「ハダニの被害が多いなぁ~」位にしか思っていなかったのですが、同行していた私の果樹病害虫のブレインの一人“ふたさん”が「あっ、ハダニの天敵がいますよ」と葉の裏を指差しました。指差された先には、1~2mm程度のイモムシ状の虫がハダニに齧り付いていました(写真5、6)。


写真5、6:ハダニに齧り付いてる虫を発見


 この虫を持ち帰り、ネットで調べてみると沖縄県病害虫防除技術センターが発行している「平成19年度病害虫発生予報第9号(12月予報)(PDF:52.1KB)」に掲載されているヒメハダニカブリケシハネカクシ(Oligota kashmirica benefica)の幼虫に似ています。
 しかし、専門家に尋ねたところ「沖縄県からはヒメハダニカブリケシハネカクシの分布は報告されておらず、同種が亜種に認定された報告書(Naomi.1984)内に沖縄県産の標本が含まれていないことから亜種である可能性がある」とのことです。
 従って、以下この虫をケシハネカクシの幼虫と記すことにします。

 ケシハネカクシの幼虫を実態顕微鏡下で観察していると、歩き回りながら次々とハダニの卵、幼虫、成虫と見境なく食べていきます(写真7~10)。




写真7~10:ハダニを捕食するケシハネカクシの幼虫


 ケシハネカクシの幼虫の捕食方法は、ハダニや卵に穴を開けて中身を吸い取る方式の様です。
 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所による報告(岸本.平成13年度研究成果情報)では、電子顕微鏡で観察すると、ヒメハダニカブリケシハネカクシの幼虫は、ハダニ類の卵に2つの大型孔(左右の孔の大きさ、形状がほぼ同じ(7~15μm)で孔と孔の間隔が広いのが特徴)が見られるそうです。

 次々とハダニを捕らえる様子が面白いので、30分程実態顕微鏡を覗いていました。
 ケシハネカクシの幼虫(恐らく終齢幼虫)が卵の捕食に要する時間は15秒前後、ハダニの成虫の体液を吸うにも1分程度しかかかりません。そして、食べ終えると2分程徘徊して再び捕食します。
 観察されている状況下で、これだけ積極的に捕食行動を見せてくれるとは誠に頼もしい天敵です。

 ヒメハダニカブリケシハネカクシについては、本土でもハダニの有力天敵として研究が行われている様ですので、それらを参考にしながら沖縄県でもケシハネカクシがハダニの天敵として活用できれば面白いと思います。

 最後に、2008年1月に再びケシハネカクシの幼虫を見つけたパパイア畑を訪れました。
 そしてハネカクシの成虫を見つけましたので、写真を掲載しておきます(写真11、12)。
 成虫の体長は約1mmとゴマ粒より小さいので、幼虫同様に知らないと見逃す虫だと思います。
 因みに、ケシハネカクシの成虫もハダニを食べるそうです。


写真11、12:ケシハネカクシの成虫


○参考資料:
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.
 ・「写真による 農作物病害虫診断ハンドブック」.2002.沖縄県植物防疫協会.
 ・「Studies of the Genus Oligota MANNERHEIM(Coleoptera Staphylinidae) from Japan;Ⅰ. On the Species-group of O.yasunatui KINSTNER, with Description of a New Subspecies」.1984.Shunichiro Naomi.The Entomological Society of Japan; Konchu, Tokyo, 52(4):516-521.
 ・「ミカンハダニ卵上に残された捕食痕に基づく天敵種の識別法」.岸本英成.平成13年度研究成果情報一覧.独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所.

○参考サイト
 ・「東海産業
 ・「Yahoo!ショッピング
 ・「沖縄県病害虫防除センター
 ・「むしこら」:ハダニが増えるとやって来る天敵ケシハネカクシ


パパイアの冬季温度管理について

2008年01月04日 | パパイア
 沖縄県でパパイアの栽培を行う際に、最も生産にダメージを与える災害は台風とウィルス病です。そのため、パパイアの経済栽培を行う場合は、最低でもネットハウスの整備が必要となります(写真1、2)。


写真1、2:施設で栽培されるパパイアと栽培施設


 しかし、ネットハウスを整備したからと言ってパパイアの栽培が円滑にできるかと言えば実はそうではなく、多くの方が畑の水はけの悪さに起因する立枯症(疫病による立ち枯れが多い様です)に悩むことになります。
 また、経営を有利に展開するためには、パパイアの生育適温を把握し、温度管理を行うことが重要です(表1)。

表1:パパイア(サンライズ・ソロ)の生育適温

(参考資料:「果樹栽培要領」.沖縄県農林水産部、「パパイアにおける果実の着生と発達」.H. Y. Nakasone(著)、出花・井上(訳))


 表1から、パパイアは23~28℃で栽培するのが最も好ましい様です。

 しかし、私が住んでいる沖縄県北部(名護市)では、10月~5月は最低気温が23℃以下になります(図1)。平均気温で見ても11月~4月は概ね23℃以下です。
 従って、秋から冬にかけて施設にビニールで被覆し保温することが適切な温度管理であると言えます。


図1:名護市の気温(平年値)とパパイアの生育適温
(参考資料:沖縄気象台ホームページ


 ビニール被覆の時期は、沖縄県「果樹栽培要領」には11月~6月と書かれています。
 これは恐らく、ビニールの被覆開始時期を10月としなかったのは台風襲来時期であるためで、ビニールを剥ぐ時期を5月としなかったのは梅雨時期(長雨による立枯症回避)のためだと思われます。従って、ビニールを剥ぐのは梅雨明け宣言後が適期ではないでしょうか?
 もちろん、5月~6月は当然のこと、その他の時期の日中にハウス内が高温になる際は、ハウス側面のビニールを巻き上げ、施設内ができるだけ28℃以上にならない様に管理するのは言うまでもないことでしょう。

 沖縄県下では露地栽培であっても低温でパパイアが枯れることはない様ですが、生育が緩慢になります。
また、フルーツ用として栽培している場合「冬季の低温下で登熟した果実(春~初夏にかけて収穫される果実)は糖度が低い」ので、美味しいパパイアを得るためには温度管理がお奨めです。


○参考資料:
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.
 ・「パパイアにおける果実の着生と発達」.1997.Henry Y. Nakasone(著)、出花幸之介・井上裕嗣(訳).沖縄農業;第32号第1号;p.68-88.沖縄農業研究会.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台

新年あけましておめでとうございます2008

2008年01月01日 | ブログ運営
 昨年中は、「熱帯果樹写真館」をご愛顧下さいまして、誠にありがとうございました。
 今年も皆様の好奇心をくすぐるサイト&ブログとなることができれば幸いと、マニアックな熱帯果樹ネタに取り組みたいと思います。



 しかし、最近の悩みの種は、熱帯果樹ネタで「面白い!」と思う発見の多くが病害虫ネタであることです。
 果樹のサイト・・・・なのかなぁ?

 そんな感じですが、今年もよろしくお願いします。