熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

バッタカビ Entomophaga grylli

2019年11月07日 | パインアップル

 今回は2006年11月に掲載した「バッタの怪死 -鉢植えパインアップル栽培記より-」の続報です。

 2019年10月19日に沖縄県名護市で草や樹の枝に頭を上にして、しがみついて死んでいるバッタ類(イナゴ亜科;恐らくコイナゴかハネナガイナゴ、以下バッタと記す)を複数見かけました(写真1~3)。





写真1~3.草や樹の枝に頭を上にして、しがみついて死んでいるバッタ類。



 前回(2006年11月19日)に見た光景とよく似ています。
 この現象は秋(10~11月;平均気温20~26℃)の大雨後に見られる気がします(図1)。



図1.バッタの怪死は秋の大雨後に発生する?



 前回の記事では「よく見るとバッタの頭と胸の間に白いカビが生えている様です。恐らくは、バッタに寄生する菌類が発生し、バッタの集団死を招いたのだと思います。」と記しましたが、今回はその辺りをより深く追求してみます。

 前回は漠然と「菌類」と記しましたが、今回はどの様な種類の菌類なのかを調べてみます。
 そのために、バッタの怪死を確認した1週間後(2019年10月27日)に怪死したバッタの採集を行い、翌日に顕微鏡下で観察しました。

 まずは実体顕微鏡下での観察です。
 頭と胴の間の間接部分や脚(肢)の基部に白い半透明の瑞々しい球体が多数見られました(写真4~6)。







写真4~6.バッタの体表に多くの半透明な球体を確認。



 また、羽(翅)と腹部の間には膜を形成していました(写真7)。



写真7.羽(翅)と腹部の間の半透明球体は膜を形成していました。



 次に、膜状に発達した球体の集合体を光学顕微鏡下で観察しました。

 このとき「こんなものが観察できるのでは?」と想定していたのは、バッタに感染するカビとして広く知られる Entomophaga grylli (Fressenius) Batko の分生子です(写真8)。



写真8.Entomophaga grylli (Fressenius) Batko の分生子。

画像は農研機構;Entomophaga grylli (Fres.) Batko の紹介ページより引用


 接眼レンズ10×対物レンズ40倍の拡大率400倍で観察したところ、乳頭状突起がある卵形の分生子が確認できました(写真9、10)。





写真9、10.観察できた乳頭状突起がある卵形の分生子。



 想定通りバッタカビ(E. grylli)の分生子とよく似ています。
 Entomophaga 属の分生子は似たものが多いので絵合わせ同定だけで E. grylli と決め付けるのは乱暴ですが、Entomophaga 属は宿主特異性が高い様なので(E. grylli は病型(pathotype)により特定のバッタ亜科にのみ感染する様です(Bidochka et. al. 1995))、現時点では E. grylli と同定しました。
 これにより、沖縄県名護市で秋に見られる「バッタの怪死」の原因はバッタカビ(E. grylli)であることが確認できました。 

 今後、このバッタカビをバッタ駆除に使えないものか…、上手く利用できればバッタの大発生による食害「蝗害」を予防・鎮圧できるかもしれない、と思う方も多いでしょう。
 しかし、米国 Wikipedia の「Entomophaga grylli」のページには以下の様に書かれています(2019年10月30日時点)。

Use in biological control

In western Canada and the western United States, grasshoppers are estimated to cause over $400 million economic damage each year to crops and rangeland. From 1986 to 1992 an integrated pest management program was initiated by the United States Department of Agriculture and the Animal and Plant Health Inspection Service to attempt to control grasshopper numbers without the use of vast quantities of insecticide. The inclusion of the E. grylli complex in the program was investigated. A disadvantage to its use is that the fungus cannot be mass-produced and its effectiveness depends on the weather conditions (more grasshoppers are infected in warm, moist conditions).[2]

Attempts to control grasshoppers with this fungus have been largely ineffective; insects can be successfully infected by injecting them with the pathogen, but introduction of North American pathotypes into Australia and vice versa have failed to establish long term infections. The pathogen has potential for biological control of grasshoppers but more research is needed.[1]

生物学的防除での使用

カナダ西部および米国西部では、バッタが作物と放牧地に毎年4億ドル以上の経済的損害を与えると推定されています。 1986年から1992年にかけて、米国農務省動植物衛生検査局によって、大量の殺虫剤を使用せずにバッタの数を防除しようとする総合的な害虫管理プログラムが開始されました。 そのプログラムではE. grylli 群についても調査されました。E. grylli 群を使用する際の欠点は、真菌を大量生産することができず、その有効性が気象条件に依存することです(暖かい、湿った条件でより多くのバッタが感染します)。[2]

この菌でバッタを制御する試みは、ほとんど効果がありませんでした。昆虫に病原体を注入することで正常に感染させることができますが、オーストラリアへの北米の病原型の導入およびその逆は、長期の感染を確立することに失敗しました。病原体はバッタの生物学的防除の可能性を秘めていますが、さらなる研究が必要です。[1]
(google 翻訳&ねこがため による翻訳)



 私もバッタカビの増殖ができないかと思い、分生子の膜をPDA培地に乗せてみましたが全く殖えませんでした。
 それでも、培地を工夫することでバッタカビを増殖、保管し、圃場レベルでの短期間、局所防除に利用できるのでは?と云う妄想を膨らませているのは、また別の話。

○参考文献

 ・槐真史.2017.バッタハンドブック.(株)文一総合出版.
 ・Wikipedia(米)上での引用文献。
 [1] Capinera, John L. (2008). Encyclopedia of Entomology. Springer Science & Business Media. pp. 1230?1231.
 [2] Ramos, Mark (1993). "Entomophaga grylli: Zygomycetes: Entomophthorales". Biological control. Cornell University. Archived from the original on 2015-01-29. Retrieved 2015-03-28.
 [3] Bidochka, M. J.; Walsh, S. R.; Ramos, M. E.; Leger, R. J.; Silver, J. C.; Roberts, D. W. (1995). "Pathotypes in the Entomophaga grylli species complex of grasshopper pathogens differentiated with random amplification of polymorphic DNA and cloned-DNA probes". Applied and Environmental Microbiology. 61 (2): 556?560.

○参考サイト

 ・農研機構Entomophaga grylli (Fres.) BatkoEntomophaga maimaiga Humber, Shimazu & Soper
 ・Wikipedia(米);Entomophaga grylli





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大きくて美味しいパインの作り方2

2009年02月07日 | パインアップル
 前回は、出蕾後の株ではどうしようもないけど、パインアップルの果実重量(以下、果重)を決定する重要な要因である「品種」と「出蕾前の株の大きさ」について説明を行いました。
 今回は引き続き、条件付きではありますが、出蕾後の株においても果重を増加させることができる栽培管理技術として、「芽の整理による果重の増加効果」について説明を行います。

 出蕾後に果重を増加させる栽培技術には、えい芽の除去(除えい芽)があります。
 えい芽とは果梗のすぐ下に付いている芽のことです(図1)。



図1:パインアップルの各部位名称
(「沖縄の果樹パインアップル」.沖縄県農業協同組合.より抜粋・加工)
※茎に付いている葉を除去した状態です。


 えい芽は、大きさが揃った苗が多く確保できる芽なので、次回の植え付けに必要な量を残し、余分なものを除去します。この「えい芽を除去する作業(除えい芽)」を行うことで品種によっては果重の増加が期待できます(表1)。

表1:除えい芽による果重の違いについて

(沖縄県農業試験場名護支場.2001 より抜粋・加工)


 表1では、えい芽の処理を行わない場合に対して除えい芽を行った場合では、ソフトタッチ及びハニーブライト、N67-10のいずれの品種においても果重の増加が見られます。
 しかし、統計的にみた場合では、除えい芽で果重に「有意差がある」のは、ハニーブライトだけです。

 これは、各品種の株ごとの発生えい芽数が、ハニーブライトで約8本なのに対してソフトタッチでは約5本、N67-10で約1.5本であることに影響していると考えられます。
 多くのえい芽が発生する品種では、除えい芽による果重増加の効果が表れやすく、えい芽発生数が少ない品種では効果が判然としないことが示唆されます。

 因みに、表1で掲載されていない品種における株ごとの発生えい芽数は、ボゴールとサマーゴールドで約3.5本、ゴールドバレル約0.6本(出花ら.2007)と、沖縄県では除えい芽が必要ない(えい芽数が少ない)品種が選抜されている様です。

 除えい芽以外の芽の処理に沖縄県のパイン畑で見かける方法に、果実上部にある「冠芽の芯を抜く(芯止め)」というものがあります。
 しかし、芯止めを行ってもN67-10以降の品種では果重の増加は余り期待できない様です(表2、3)。

表2:各地域の芯止めによる果重の違いについて(N67-10)

(沖縄県北部農業改良普及センター作成資料.2007. より抜粋)


表3:各品種の芯止めによる果重の違いについて

(沖縄県農業試験場名護支場.2001 より抜粋・加工)


 表2では、同一品種(N67-10)において地域を変えて芯止めによる果重の増加効果を確認していますが、いずれの地域でも統計的には「有意差なし」です。

 表3では、表1と同様ソフトタッチ、ハニーブライト、N67-10の各品種で芯止めと除えい芽を組み合わせることにより果重の増加が見られるかを確認していますが、こちらも各処理区で統計的には「有意差なし」です。

 つまり、N67-10以降の品種では、冠芽の芯を抜いても果重の増加は表れにくいことがわかります。

 それでも、パイン農家が冠芽の芯止めを行うのは、冠芽サイズを抑えて倒伏防止や出荷時に箱詰めしやすくなる等の効果を狙うための様です。
 また、収穫間際に冠芽を大きめに除去して生長点のある部分を苗として利用し、果実にも冠芽を付けて見栄え良く出荷すると云った考えもある様です(図2)。



図2:収穫後期に除去した冠芽の利用例
(沖縄県北部農業改良普及センター作成資料.2007. より抜粋・加工)


 「芽の整理により果重を増加させる方法」のうち「除えい芽」は、出蕾後に果実を大きくするのに利用できる技術ですが、えい芽の発生数が多い(4本以上)品種や株での効果が現れやすいことが示唆されるため、「条件付き技術」と考えたいと思います。

 この様に、出蕾後に果実を大きくするのは難しいことが解っていただけたと思います。
 次回は果実品質を向上させる要因及び方法について書いてみたいと思います。


○参考文献
 ・「沖縄の果樹パインアップル」.JA沖縄経済連.
 ・「生食用パインアップル新品種の除えい芽による増収と高品質果実生産」.2001.沖縄県農業試験場名護支場.九州沖縄農業研究成果情報;第16号;p.201-202.農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター.
 ・「早生で大果の生食用パインアップル新品種「ゴールドバレル」」.2007.出花幸之介、池宮秀和、高原利雄、金城鉄男、正田守幸、比嘉ひろの、粟国佳史、大城和久、仲宗根福則、比嘉正和、添盛浩、喜納兼二、岩本由美、新崎正雄、上地邦彦、井上裕嗣.平成17年度 果樹研究成果情報;p.13-14.果樹試験研究推進会議・(独)農業・食品産業技術総合研究機構・果樹研究所.
 ・「パインアップルの芯止めは何のために必要?」.2007.沖縄県 北部農業改良普及センター.講習会資料.

大きくて美味しいパインの作り方1

2009年02月02日 | パインアップル
 掲示板でパパイア牛乳さんから受けた質問「大きくて美味しいパインの作り方」について、データを加えた解説を数回に分けて行います。

 まず、パパイア牛乳さんの質問を要約すると、

 ・冠芽から育てていた鉢植えパイナップルに花芽が着いた。
 ・できれば大きな甘い実を収穫したいので、管理方法等のアドバイスが欲しい。


 ということでした。

 質問で出たパインアップルの株は、神奈川県横浜市において鉢で栽培されており、冬場は屋内で管理されている様です。

 この質問への回答は、「大きくて美味しいパインの作り方」を「大きな果実を作りたい」と「美味しい(糖度が高く、酸度が少ない=糖酸バランスの良い)果実を作りたい」に分解して考えたいと思います。

 まず、パインアップルで「大きな果実を作りたい」と考えた際に、重要となるのは「出蕾前の株の大きさ」と「品種」です。
 どちらも出蕾後の株に対しては適当な回答ではないと思いますが、まず基本的なことを知っておいて欲しいので記載します。

 パインアップルの「品種」ごとの果実の大きさ(重量)を、沖縄県下で栽培されている品種を例に説明します(表1)。

表1:パインアップル各品種における地域別自然夏実の特性

(「パインアップル栽培技術研修会資料」.2008.沖縄県農業協同組合 より抜粋)


 表1で果実重(赤枠内)に注目すると、沖縄本島北部地区と八重山地区の両地区において、各品種ごとの重量は同じものが重いことがわかります。
 つまり、一番重いのは「N67-10」。次いで「サマーゴールド」、「ソフトタッチ」。一番軽いのは「ボゴール」です。

 このことから、栽培地域が違っても、大きくなる品種とあまり大きくならない品種があることが伺えます。
 「大きな果実を作りたい」のであれば、「大きくなる品種を選ぶ」ことが近道になります。

 とは言え、大きくなりにくい品種でも「より大きな果実を作りたい」というのが人情なので「出蕾前の株の大きさ」と果実の大きさの関係について説明します。

 パインアップルは定植後、40枚程度の葉を出した後に花芽を形成します。
 言い換えると、栄養生長を終えた後に生殖生長へと移行するので、花芽が出た後に株の大きさや葉数が増加することは、ほとんどありません。
 また、果実収穫後に果実重量と茎重量を測定すると正の相関があります(図1)。


図1:茎重と果実重の関係
(小那覇ら.1983. 「熱帯特産果樹」.農文協.より抜粋)


 図1は、元々は「花芽誘導回数が1果重に及ぼす影響」を示すグラフですが、茎重と果実重の相関を十分に示していると思います。

 つまり、「より大きな果実を作りたい」のであれば、「出蕾までに大きな株を作る」ことが重要になります。
 しかし、出蕾後の相談に対しては、この回答も適当ではありませんね。

 次回は、条件付きで出蕾後にできる果実重を増加させる栽培管理技術等の説明を行います。

○参考文献
 ・「パインアップル栽培技術研修会資料」.2008.沖縄県農業協同組合
 ・「パインアップル」.1997.(社)国際農林業協力協会.
 ・「果樹園芸大百科17 熱帯特産果樹」.2000.農文協.
 ・「パイナップルの薬剤による花芽誘導に関する研究. 第1報 エスレルによる花芽誘導と果実重の関係」.小那覇安優・仲宗根福則・池宮秀和.1983.九農研.45,p.268.(孫引き)


石垣市が生食用パインアップルの拠点産地に認定されました

2007年08月19日 | パインアップル


 2007年8月10日(金)に石垣市が沖縄県県農林水産部により戦略的な農水産物の産地育成を目指す「拠点産地」に認定されました(八重山毎日新聞.07/08/11)。

 記事の内容は以下の通りです。

石垣市がパインの拠点産地に 県が県内2カ所目の認定

 【那覇】県農林水産部(護得久友子部長)は10日、戦略的な農水産物の産地育成を目指す「拠点産地」(果樹)に、パインアップル(生食用)を生産する石垣市(大浜長照市長)を認定した。県は2000年から拠点産地制度に野菜・果樹・花き園芸など産地を認定。

 (中略)

 パインの認定は東村に次いで県内2カ所目となる。護得久部長から認定証を受けた大浜市長は「大変うれしく思う。これからも拠点産地として、ブランド化に向けて生産体制の確立に力を入れたい」と抱負を話した。

 同認定は県農林水産業振興計画に基づき、農水部調整会議で選定された戦略品目の拠点産地形成を促進するもの。石垣市では07年6月にパインアップル産地協議会を設立し、今後の取り組みについて協議している。

 (中略)

 05年度の石垣市パイン生産農家は109戸、作付面積は73ヘクタールで出荷量は1600トン(生食用)と県内では東村に次いで2番目の出荷量となっており、05年度産出額も4億2000万円と石垣市の農業産出額の12%を占めている。
 年々増産傾向にあり、2012年度には作付面積75ヘクタール、出荷量1700トンを目標にしている。今回の拠点産地認定を受けて県は同目標達成に向け、機械化の促進やハウスパインの支援、種苗対策や品種開発などの支援を行っていく方針。



 今回、東村に続いて沖縄県内2番目の生食用パインアップルの拠点産地となった石垣市のパインアップルの生産状況について調べてみました。

 まず、石垣市の場所ですが、沖縄県の県庁所在地である那覇市の南西約410km強(東京-大阪間位離れています)の位置にあります(図1)。



 次に、石垣島のパインアップル産業についてですが、沖縄島のパインアップルとの最大の違いは、缶詰加工場がないことです。

 平成2年(1990年)のパインアップル缶詰輸入自由化に伴い、沖縄県内ではパインアップル缶詰加工場が次々と閉鎖し、石垣島を含む八重山地域では平成8年(1996年)にパインアップル缶詰加工場(宮原食品)が閉鎖しました。

 そのため、パインアップルの収穫面積、出荷量は落ち込みましたが、近年では美味しい生食用パインアップルの需要が伸び、再び出荷量が増加傾向にあります。
 また、パインアップルの出荷も以前の加工用が中心から生食用が中心へと変遷を遂げています(図2)。


図2:石垣市のパインアップル出荷量と収穫面積の推移
(「園芸・工芸農作物市町村別統計書」より抜粋・加工)


これからも石垣市が美味しい生食用パインアップルの産地として発展することを願っています。

○参考サイト
 ・「八重山毎日新聞」:2007/08/11.石垣市がパインの拠点産地に 県が県内2カ所目の認定
 ・「沖縄タイムス」:1996/07/22.社説.パイン振興対策を見直せ

○参考資料
 ・「八重山の農林水産業 平成18年度」.2007.沖縄県 八重山農政・農業改良普及センター.
 ・「園芸・工芸農作物市町村別統計書」.沖縄総合事務局統計調査課.





8月1日は「パインの日」、8月は「パイン消費拡大月間」です

2007年08月10日 | パインアップル
 ○月△日は「□□の日」と云うのは色々ありまして、詳しい暦を見ますと毎日が「□□の日」となっています。
 今回は、その中でもパインアップルに関わる日の紹介と説明をしたいと思います。



 8月1日は「パインの日」なのですが、「パインの日」をインターネット検索で調べてみますと、「沖縄県・農林水産省などが制定」「パ(8)イ(1)ン」の語呂合せ」等と説明が書かれているのを目にしますが、実はこれら説明には誤った情報が含まれていたり、説明に不足している部分があったりします。

 まず8月1日「パインの日」は、平成2年に「沖縄県パイン・果樹生産振興対策協議会(以下、同協議会)」により制定されました。
 同協議会の構成団体は、沖縄県、沖縄県農業協同組合中央会、沖縄県経済農業協同組合連合会、沖縄県農業会議、沖縄県パインアップル缶詰工業組合、北部市町村会、北部地区農業協同組合長会、南部市町村会、南部地区農業協同組合長会、宮古市町村会、宮古地区農業協同組合長会、八重山市町会、八重山地区農業協同組合長会となっており、農林水産省等国の機関は関わっていません。
 つまり、8月1日「パインの日」の制定に農林水産省は関わっていません。
 補足情報として、同協議会は平成10年度末に解散しています(解散理由は、同協議会と事業内容及び構成団体が重複した組織が設立されていたため)。

 次に8月1日が何故「パインの日」なのか、についてです。
同協議会が8月1日を「パ(8)イ(1)ン」の語呂合せから「パインの日」と制定したのは間違いではありませんが、それだけが理由ではないことが同協議会が作成した「パインの日制定要領」から読みとれます。
 「パインの日制定要領」によりますと、

(パインの日、パイン消費拡大月間)

 第2条   パインの生産の最盛期である8月を「パイン消費拡大月間」とし、
      パインの語呂と8月のスタートの意味から8月1日を「パインの日」と定める。



 と、書かれています。
 つまり「パインの日」は、「パイン消費拡大月間」がスタートしたことを告げる日でもあったわけです。
 8月1日の「パインの日」だけでなく、8月は「パイン消費拡大月間」という追加情報も併せて憶えてください。

 最後に、平成2年(1990年)という時期に「パインの日」が制定された背景には、この年4月からパインアップル輸入自由化が開始されたことと密接に関連していることが容易に想像できます。
 制定した組織が解散しても、沖縄県産パインアップルの生産振興を願った先人たちの想いは「パインの日」「パイン消費拡大月間」という記念日等と共に引き継がれていくものだと思います。


※今回の記事を書く際に、沖縄県農林水産部園芸振興課に問い合わせたところ、快く情報を提供していただきましたことに深く感謝の意を表します。

バッタの怪死 -鉢植えパインアップル栽培記より-

2006年11月24日 | パインアップル
 今年の春から、私はパインアップルの鉢栽培を行っています。
 パインアップルの鉢栽培には尺鉢を用いる人が多い様に思いますが、私は口が広く、浅いシクラメン鉢を用いています(写真1)。


写真1:シクラメン鉢を用いたパインアップル鉢栽培


 これは、パインアップルの根が地表深くに多く、深さ20cm以内に約95%、株周辺の20cm以内に約90%が存在しているとされているためです(表1,2)。

表1:パインアップルの根の垂直分布の1例(国際協力事業財団.1987)

「パインアップル」.1997.(社)国際農林業協力協会.より抜粋


表2:パインアップルの根の水平分布の1例(国際協力事業財団.1987)

「パインアップル」.1997.(社)国際農林業協力協会.より抜粋


 シクラメン鉢でのパインアップルは概ね順調なのですが、葉が囓られていて悔しい思いをすることがあります(写真2)。


写真2:囓られた葉


 この囓り痕の犯人は、バッタです(写真3)。


写真3:葉を囓ったバッタ


 バッタの種類はよくわかりませんが、恐らくコイナゴかタイワンハネナガイナゴだと思います。

 バッタは捕っても捕ってもどこかから来ますので打つ手なしかと思っていたのですが、先日(11/21)に不思議な光景に遭遇しました(写真4)。


写真4:バッタの怪死


 バッタがパインアップルの先端で葉を抱えたまま死んでいました。
 しかも周囲を見渡すと同様の死に方をしているバッタが3個体いました。
 そして、よく見るとバッタの頭と胸の間に白いカビが生えている様です。

 恐らくは、バッタに寄生する菌類が発生し、バッタの集団死を招いたのだと思います。
 この後、白い菌糸がモコモコと膨らむのを期待していのですが、環境が合わなかったためか数日後にはバッタの体内は空洞になって干からびて終わりました。

 この菌類が発生したためにバッタが全滅したわけではないですが、生態系は1種類の生物だけが増加することを簡単には許さないんだなぁ、としみじみ感心しました。

○参考資料
 ・「パインアップル」.1997.(社)国際農林業協力協会.

○参考サイト
 ・「昆虫ブログ むし探検広場

東村がパインアップルの拠点産地に認定されました

2006年10月05日 | パインアップル
 2006年9月8日(金)に東村は沖縄県県農林水産部により戦略的な農水産物の産地育成を目指す「拠点産地」に認定されました(沖縄タイムス.06/09/09)。

 記事の内容は、以下の通りです。

パイン拠点産地に東村

 県農林水産部は8日、戦略的な農水産物の産地育成を目指す「拠点産地」(園芸作物)に、生食用パイナップルを生産する東村を認定した。パイナップルの拠点産地認定は県内初。

 県庁で認定証の授与式があり、国吉秀治農林水産部長は「近年需要が高まる生食用パイナップルの産地づくりを支援することで、加工用を含めた総合的なパイナップルの生産振興を図っていきたい」と期待した。

(後略)


 今回、東村は「パインアップル(生食用)」の産地として県の認定を受け、県内初のパインアップルの拠点産地になりました。

 東村は沖縄本島の北東部に位置し、北は国頭村、北西は大宜味村、南西は名護市に接し、南東は太平洋に面した南北に細長い村です。



 平成16年産沖縄県の「園芸・工芸農作物市町村別統計書」によりますと、沖縄県産パインアップルの出荷量は、11,100t、うち沖縄本島産は8,930t(80%)となっています。
 同資料には東村産パインアップルの出荷量は3,980tと記されています。これは出荷量の占有率で考えますと、沖縄県産パインアップルの36%、沖縄本島産パインアップルの45%を占めることになります。
 このことから東村が県内最大のパインアップル産地であることがわかります。

 また、東村産パインアップルの出荷量3,980tのうち51%を占める2,020t(51%)が生食用として出荷されており、東村は生食用パインアップルの県内最大産地でもあります。  
 生食用パインアップルと云えば、加工場(缶詰工場)が閉鎖された八重山地域を思い出す方も多いかと思いますが、生食用パインアップルの出荷量で云えば石垣市が1,600t(県内第2位)、西表島を含む竹富町は313tと東村には及びません。



 これまでも東村は沖縄県内では「パインの里」として知られる存在でしたが、今回の拠点産地認定では特に「生食用パインアップルの産地 東村」としても名乗りをあげ、振興を行う東村の強い決意の現れが感じられます。

 沖縄県のパインアップル産業を引っ張る大産地だけに、加工用パインアップルの原料数量確保だけではなく、近年需要が高まっている生食用パインアップルの振興も同時に行うということでしょう。
 
 東村が加工用、生食用の総合的なパインアップル産地として発展することを願い、応援したいと思います。

○参考資料
 ・「平成16年産 園芸・工芸農作物市町村別統計書」.2005.沖縄総合事務局農林水産部統計調査課.

○参考サイト
 ・「沖縄タイムス



東村から露地パインのゆうパック出荷が始まりました

2006年08月14日 | パインアップル
 沖縄県の熱帯果樹で8月中旬からのお楽しみと云えば、やんばる産露地パインです。
 この時期のパインアップル(品種:N67-10)は、味(甘味、酸味)、果汁量、香りと申し分なく美味しくなっています。



 やんばる産露地パインを農家自身がゆうパックで販売している団体があります。
 それが「東村パイン生産出荷組合」です。

 同組合では、8月10日に露地パインの初出荷式が行われた模様です(沖縄タイムス;2006年8月11日)。

 この組合が出荷するパインアップルの特徴は、出荷のその日に収穫し箱詰めするため「畑でぎりぎりまで熟させた甘さが特徴」とのことで、追熟しないパインアップルの販売方法としては理想的です。
 注文して届いた果実はすぐに食べることをお奨めします。

 また、今年のパインアップルの出来は「今年は強い日差しと降雨のバランスがよく味、香り、大きさともに去年よりはるかにいい出来栄え」と同組合の田中伸介組合長も自信をもって推奨しています。

 そんな露地パインのゆうパックは、3玉(4.5kg)/箱が郵送料・税込みで県内2,300円、県外2,700円とのこと。
 出荷期間は9月下旬までですが、関心をもたれた方は早めの注文をお奨めします。

○お問い合わせ先
 東村パイン生産出荷組合
 TEL.0980-43-2727

○参考資料
 ・沖縄タイムス;2006年8月11日夕刊
 ・琉球新報;2006年8月14日朝刊
 ・「沖縄の果樹パインアップル」.JA沖縄経済連.


八重山からスナックパインをいただきました。

2006年03月18日 | パインアップル

 先日、八重山の方からスナックパインをいただきました。
 スナックパインと云うのは俗称というか商品名で、小果をゆびでちぎって食べられることから名付けられたもので系統を示す場合はボゴールと呼ばれています。



 パインアップルの果実は、小果と呼ばれる小さな果実の集合体です。
 果実の鱗の様に見えるもの1つ1つが小果で、通常はくっついているのですがスナックパインの場合は小果が外れやすくなっているので、手でちぎって食べることができます。
 そのため、「スナックパイン」または「ちぎりパイン」と呼ばれています。



 スナックパインの食べごろは、ハウスで栽培された果実が3~5月頃、八重山産の露地栽培の果実が6~7月、沖縄本島産の露地栽培の果実が7月頃とされていますので、その時期に沖縄でスナックパインを見つけれた方は是非ご賞味ください。