熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

ドラゴンFの果皮がマグロの刺身になる、だと…?

2021年09月16日 | ドラゴンフルーツ
 2021年9月15日の夜。
 熱帯果樹仲間からLINEが届きました。

 沖縄の面白情報を発信しているサイト「Dee Okinawa」のmioon 記者が「ドラゴンフルーツの皮は本当にマグロになるのか」と題した記事を書いているとのこと。
 内容を読むと、、、やってみたい!

 幸いにも、冷蔵庫の中にはドラゴンフルーツが入っています。



写真1.ねこがための野菜室(2021/09/15)。


 翌、9月16日 8:20。
 冷蔵庫からドラゴンフルーツ(白肉:1果、赤肉:2果)を取り出し、まずは表面を水洗いしました。



写真2.今回使うドラゴンフルーツ果実。


 続いて、ヒレ部分を包丁で切り取ります(mioon 記者はカットした後でヒレを切り取っていますが、カット前に切り取った方が楽です)。



写真3.果実のヒレ部分はカット前に除去。


写真4.ヒレ部分や花落ち部分、基部を切り落とした果実。


 果実をカットして、果肉を取り出します。



写真5.果肉はフルーツとして美味しくいただきました。


 白肉果実は、果皮に果肉が少し残ったので、スプーンで削ぎとりました。



写真6.これがマグロになるのか?


 果皮を小さく切り分けます。



写真7.果皮を食べやすい大きさに切り分ける。


 このとき、白肉の果皮表面が少し固かったので、半分は果皮表面を削ぎ取りました(しかし、結果的には、この作業は必要なかった様に思います)。



写真8.結果的には必要なかった薄皮剥き。


 そして、沸騰したお湯で1分程湯がきます。



写真9.果皮を1分程度湯がく。


 その間に、果皮を漬け込むタレを準備します。
 今回、準備したのは3種類のタレ。
 1)ワサビ醤油、2)漬けダレ(卵1個、醤油大匙1、みりん大匙2、ごま油少々)、3)ウナギのタレ。



写真10.左から、ワサビ醤油、漬けダレ、ウナギのタレ。

 
 湯がき終わった果皮をザルで水切りし、各タレに絡ませながら、漬け込みます。



写真11.湯がいた果皮をザルで水切りする。


写真12.ワサビ醤油に絡ませた果皮(この程度の量で十分でした)。


写真13.漬けダレに漬け込んだ果皮。


写真14.ウナギのタレに絡ませた果皮。


 あとはラップをして、冷蔵庫で保管(この間、調理開始から約10分)。



写真15.冷蔵庫で3時間以上保管。


 待つこと3時間半。
 正午になったので、昼食タイムです。
 丼にご飯を入れ、3種の果皮を載せます。
 ウナギのタレに漬け込んだ果皮だけは、フライパンで温めてから。
 ワサビ醤油と漬けダレに漬け込んだ果皮には、刻み海苔もかけてみよう。



写真16.完成!ドラゴンFの果皮でつくったマグロ風丼。


 見た目からして美味しそうです!

 実食!!
 
1)ワサビ醤油;マグロそのもの!ではないのですが、予想以上にマグロ!ご飯がすすむ!美味しい。◎

2)漬けダレ;美味しいけど、味がまろやか過ぎる?醤油が足りなかった?ドラゴンFの果皮は、マグロほどパンチ(生臭さ?アミノ酸的美味さ?)がないので、まろやかさが、物足りなさに直結した感じ。美味しいか否かと聞かれたら、美味しい。〇’

3)ウナギのタレ;温めたらウナギっぽくなるかと思ったけど、ウナギじゃない。でも、十分美味しい。恐らく、マグロの刺身をウナギのタレに漬け込んで、フライパンで温めたものより美味しい。温かい具として、ご飯に載せるのであれば、ワサビ醤油より優っているかもしれない。〇

 結果として、予想を上回る美味しさでした。
 マグロの刺身と違って、数日間冷蔵庫で保管できるだろうし、弁当にも入れられそう。
 ちょっと凄いぞ、これ!って感じでした。



〇参考サイト
 ・「Dee Okinawa」>「ドラゴンフルーツの皮は本当にマグロになるのか




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良き道具にこそ匠あれ07  - ドラゴンフルーツの収穫に適したハサミ「Dr. Cut® SENTEI」 -

2019年10月23日 | ドラゴンフルーツ

 ドラゴンフルーツ(以下、ドラゴンF)は、サボテン科 Hylocereus 属に属する多年生の登はん性多肉植物です。
 その茎は三角状を呈し、茎の節からは不定根が生じ、定植した株は物にからまって登はんし、最高で高さ数十メートルに達します。
 原産地は南メキシコや太平洋周辺の中米諸国ですが、現在では熱帯アメリカ、西インド諸島、米国南フロリダ州及び熱帯地区において広く分布或いは栽培されています。

 ドラゴンFは、高温及び長日照条件下で花芽分化し、茎の棘座部分に出蕾します。
 ドラゴンFの花は月齢に合わせて満月や新月の夜間によく開花します。

 開花の時間帯は、最も早い花は夕暮れ頃に開花し、午後10:00までには開花します。
 そして翌朝の陽光が差す頃には花は萎れています(写真2)。



写真2.開花翌朝のドラゴンFの花。



 夏季(十分な温度がある場合)であれば、開花後26~27日で果実は着色を開始し、30日前後で収穫適期となります。

 沖縄県では一夏の間に4~6回、ドラゴンFは開花、収穫を繰り返します。

 ドラゴンF果実の収穫には、コツがあります。

 ドラゴンFの茎の中心には硬い芯が通っています。
 この芯が棘座に繋がる様に分岐し、果実の発育と共に発達し、果実を収穫する頃にはしっかり硬い芯となっています(写真3)。



写真3.収穫適期のドラゴンFでは茎内に硬い芯が発達している。
※ この写真では、茎肉を取り除き、茎内の芯を露出させています。



 つまり、ドラゴンF果実を収穫する際には、茎内に埋まった芯を断ち切る必要があります。

 このときに収穫に用いる道具は、

 1)刃先が細長く、最小限の切り口で芯を切断できるもの。
 2)硬い芯をストレスなく切れるもの。

 という2つの条件を満たしたものが理想的です。

 これまで、剪定鋏、芽切り鋏(先端が尖ったハサミ)、採果鋏(先端が短く少し反り返ったハサミ)等を用いてきましたが、いずれも2つの条件を共に満たすものとは言えませんでした。
 そのため、ドラゴンFの収穫はある程度握力がある人でなければ、億劫な作業でした。

 そこで今回紹介するのが、「Dr. Cut® SENTEI(芽切剪定ハサミ)」です。
 この鋏は、本ブログ記事『良き道具にこそ匠あれ05  - 手指が痛くなりにくい採果ハサミ「Dr. Cut®」 -』で紹介した採果鋏型Dr. Cut®のシリーズ商品です。

 購入直後の「Dr. Cut® SENTEI(芽切剪定ハサミ)」は、刃の片方の先端が尖っていません(写真4)。



写真4.Dr. Cut® SENTEIは刃の片方が尖っていない。



 そこで、グラインダーで削り、両方の刃の先端が尖っている状態にします(写真5)。



写真5.Dr. Cut® SENTEI(改)。



 これにより、ドラゴンF果実基部の芯に合わせて茎を貫きやすくなります(写真6、7)。



写真6.芯の位置を予想して刃の先端を茎に差込みます。





写真7.芯を捕らえたところでハサミの柄を握り、茎内の芯を切断する。



 芯を捉えてしまえば、後は楽ちん♪
 抜群の切れ味とDr. Cut®ならではの切断時の衝撃吸収により、とても円滑に果実収穫ができます。

 ドラゴンFの収穫は数日間に多くの硬い芯を切ることになるので、収穫道具が悪いと手が腱鞘炎になる可能性があります。
 「Dr. Cut® SENTEI(芽切剪定ハサミ)」は少し高価(24,000円(税別))とも思えますが、快適な作業が持続できる価値はプライスレスです。

 「Dr. Cut® SENTEI(芽切剪定ハサミ)」は、ウド・エルゴ研究所HPの商品注文フォームからご購入できます。

○参考サイト
・ウド・エルゴ研究所\製品のご案内\Dr.Cut(ドクター・カット)



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ドラゴンフルーツの育種に係る備忘録

2011年05月03日 | ドラゴンフルーツ

 今回は、2010年12月にお会いしたイスラエルのドラゴンフルーツ研究者M氏に伺った「ドラゴンフルーツの育種」に係る話題の備忘録をつけたいと思います。

 ドラゴンフルーツの育種と云えば、日本でも2007年12月に「ちゆらみやらび」が品種登録されています(「ちゅらみやらび」だと思っていました!)。
 「ちゅらみやらび」は、果肉が淡いピンク色で、糖度が高く、クリーミーな食感といった特徴を備え、ドラゴンフルーツの品種改良の有用性を示してくれた品種です(写真1)。

 ただ、果肉のピンク色については「ちゆらみやらび」でなくても、実生で株を育てた際には、よく現れる形質の様です(写真2)。



写真2:実生で育成した複数株より得られた果実の断面



 果肉がピンク色のドラゴンフルーツが全て「ちゆらみやらび」ではないので注意が必要です。

 イスラエルはドラゴンフルーツ育種の先進国です。
 M氏は、ドラゴンフルーツの育種(品種開発)に携わる研究等を長年に渡り行ってきた方です。

 以下にM氏から伺った話題をQ&A方式で記します。



Q1:イスラエルでのピタヤの育種の概要を教えてください。

A1:イスラエルでは約80年からピタヤの育種を行っており、国内8ヶ所の圃場(全体で80ha程度)で選抜を行っている。これまでに250系統 程度が収集、育成されている。


Q2:イスラエルでは、ピタヤは重要品目ですか?

A2:地中海を経て、ヨーロッパに輸出している重要品目である。


Q3:ピタヤの品種育成に要する期間を教えてください。

A3:概ね10年である。


Q4:播種~初収穫までに要する期間を教えてください。

A4:2年と考えている。


Q5:ピタヤの味は、父本または母本由来のどちらと考えていますか?

A5:どちらもありえると考えている。


Q6:これまで得られた系統・品種の中で特徴的なものは、どの様な特性を備えていますか?

A6:Selenicerus属(イエローピタヤ)とHylocereus属(ドラゴンフルーツ)の交雑系統(赤肉)を得た。これは、開花から収穫までに2ヶ月程度を要する。他にもイスラエルで は、台木用の品種もある。


Q7:ピタヤの栽培を考えた際に、イスラエルと沖縄県を比較してイスラエルが有利だと思う点はどこですか?

A7:イスラエルは湿気が少ないため病気が少ない。また、露地で潅水量の調節が可能である。あと、台風がない。


Q8:逆に、沖縄県が有利だと思う点はどこですか?

A8:イスラエルは昼温と夜温の差が大きく、地域間の環境差も大きい。あと、沖縄県は水が豊富にある。


Q9:潅水量の調整が可能とのことですが、潅水量と果実の甘さに相関がありますか?

Q9:相関はない(低い)と思う。


Q10:ピタヤの栽培で特に気をつける作業を1つ挙げるとすれば何ですか?

A10:枝(結果枝)が重ならない様にすること。とても重要である。


Q11:ピタヤの育種を行う際の選抜基準を教えてください。

A11:一律の数値基準があるわけではないが、以下の7点を重視している。
  1.耐暑性および耐寒性
  2.味(Brix だけでなく達観による食味が重要)
  3.貯蔵性(10℃で3週間+常温で5日間)
  4.果実の大きさ
  5.果実の形状および容姿
  6.生産量(反収)
  7.倍数性→F2を作る際に重要



 以上です。
 多忙なスケジュールにも関わらず、丁寧に対応していただきましたM氏に改めてお礼を申し上げます。

〇参考サイト
 ・「農林水産省 品種登録ホームページ