熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

パッションフルーツの高畦栽培で土づくり(1)

2018年06月24日 | パッションフルーツ

 2017年10月にパッションフルーツ(以下、パッションF)を栽培している知人から土づくりに関する相談を受けました。

 相談内容は「パッションFの多年栽培(又は収穫を行いながら次年度株の育成)をしていると畦の表面を根が覆っているので、耕起をすることができない(根を切りたくない)」「しかし、耕起をしないと土が固くなり生育が悪くなる」とのこと。

 私は対応策として「敷き草を行い、表面から土壌改良してはいかがでしょうか?」と提案しました。
 ところが「高畦栽培をしているので、畦の表面に敷き草をしても雨が降ったら敷き草が流れ落ちる」と反論を受けました(図1)。



図1.高畦栽培なので雨が降ると敷き草が流れ落ちる。



 そこで、第2案として「畦の上に板を立てて、その中に敷き草を入れる」ことを提案しました(図2)。



図2.板枠を作ることで敷き草が流れ落ちない。



 使用する板は、市場や港等のフォークリフトで荷物を運搬している場所では産業廃棄物になりがちな(破損した)木製パレットの割れていない板を集めて使いました(写真1)。



写真1.畝上に板枠を設置。



 板が外側に倒れない様に鉄筋で補強し(写真2)、内側に倒れない様に敷き草をたっぷり入れることと金属製ハンガーを切ったもので板を固定しました(写真3)。



写真2.板が外側に倒れない様に鉄筋で固定。





写真3.金属性ハンガーで作った資材で板をさらに固定。



 また、敷き草は農場周辺に植栽している防風林(テリハボク、ネズミモチ等)の剪定した枝葉をウッドチッパーで粉砕したウッドチップを用いました(写真4、5)。



写真4.防風林の剪定枝チップで畦を覆う。





写真5.剪定枝チップは短期間で枯葉、枯枝になるが、土づくりはここから。



 この後は、畦上の剪定枝チップを土壌中の生物(ミミズ、ダンゴムシ、菌類等)が食しながら掻き混ぜてくれるkとで、人が耕すことなく土壌の物理性が改善できるはずです(図3)。



図3.土壌生物による土づくり(イメージ図)。



 ところが、同知人から2018年5月に「敷き草をした畦でパッションFの生育が悪い」「葉が黄化して濃い緑色にならない。葉の大きさも小さい」と再び相談を受けました。

 何故、敷き草をしたパッションFは樹勢を落としてしまったのでしょう?
 この謎解きは次回に行います。




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台風4号に対するパッションフルーツの被害対策と結果

2007年07月15日 | パッションフルーツ
 沖縄本島では、過去2年間(平成17年・18年)に直撃した台風がありませんでした。
 そこへ今回の非常に強い大型台風4号が襲来しました。

 台風4号が沖縄本島に直撃することがほぼ確定した7月12日(木)。
 私は、昨年秋から育てているパッションフルーツ2樹を始めとする趣味で栽培している熱帯果樹類の台風対策を行いました。
 今回は、収穫期真っ只中のパッションフルーツで行った台風対策とその結果をお伝えします。

 栽培しているパッションフルーツは、A樹(約3年樹で粗放垣根仕立て)とB樹(昨年11月に定植した立体垣根仕立て)の2樹です(写真1)。


写真1:パッションフルーツのA樹とB樹


 A樹、B樹は共に紫色種で、B樹はA樹から挿し木繁殖で殖やした株です。

 台風対策を行ったのはB樹のみです。
 まず高さ約1.5mに設置されている横枝の誘引パイプを高さ1m程度まで下ろし、次に農業用の防風ネットで垣根を覆い、ネットをパッカーや針金で固定しました(写真2)。


写真2:B樹の台風対策


 所要時間15分程度の簡易な対策ですが、風当たりが強くなければ、それなりの効果が期待できると思われます。

 そして、台風4号が沖縄本島に再接近した7月13日(金)。
 午前2時頃から沖縄本島は暴風域に入り、午前7時40分には台風の目が沖縄本島南部に差し掛かりました(図1)。


図1:午前7時40分の台風情報
(「気象庁」のサイトよりデータを抜粋・加工)


 午前中から正午過ぎまで強風と時折の大雨が降り、午後2時過ぎには一旦風が治まり、夕方から少し風が強まる、そんな印象の台風4号でした。
  夕方18時50分の台風情報を確認すると、台風の目は沖縄本島を縦断せずに、西の海上に抜け、このときには奄美大島の西側まで移動していました(図2)
 この後、吹き返しが想定されますが、沖縄本島北部地域では主に吹き始めが最も驚異となる時期だった言えそうです。


図2:18時50分の台風情報
(「気象庁」のサイトよりデータを抜粋・加工)


 一夜明け、7月14日(土)。
 気象台のサイトでは、7月13日の気象情報のデータが更新されていました。
 それによりますと、私が住む名護市では、正午付近で降水量が最も多く、風速も強かった様です(図3)。


図3:7月13日の名護市における1時間当たりの降水量及び風速、風向き
(「沖縄気象台」のサイトよりデータを抜粋・加工)


 また、7月13日の名護市における平均風速は17.2m/s、最大風速は28.8m/s(南東)、瞬間最大風速は50.9m/s(南東)、1日の降水量は216mmでした。

 この様に強烈な風が吹き、降水量の多かった台風4号の影響で、名護市内の各地で街路樹の太い枝が折れ、道路に散乱していました(写真3)


写真3:街路樹の太い枝が散乱する名護市内


 市内の惨状を見ながらパッションフルーツの栽培地に到着すると、B樹周辺のバナナは全てなぎ倒され、B樹に台風対策のために被せた防風ネットは剥がされ、葉の多くにも欠損が見られました(写真4)。


写真4:台風後のB樹


 肝心の果実の被害状況を確認しますと、落果している果実は36果中の5果(うち着色前の状態での落果は1果)と台風による落果は実質1果(3%)でした。

 次に特に台風対策を行わなかったA樹の様子を確認しました。
 A樹は垣根が歪み、葉は飛ばされ、貧弱な外観となっていました(写真5)。


写真5:台風後のA樹


 しかし、A樹も落果した果実は65果中の12果(うち着色前の状態での落果は2果)と台風による落果は実質2果(3%)でした。

 A樹、B樹共に、今後台風による風擦れ及び葉の欠損による品質の低下が見られるかもしれませんが、落果という形での台風被害は予想より軽微に済みました。

 台風対策の有無が被害量の差にならなかったのは意外でしたが、とにかく被害が少なくて良かったです。
 最後にB樹の垣根を台風前と同じ仕様に戻し、作業を終えました(写真6)。


写真6:垣根を台風前の仕様に戻したB樹



○参考サイト
 ・「気象庁
 ・「沖縄気象台

露地パッションフルーツの花芽形成時期が早い?

2007年02月21日 | パッションフルーツ
 旧正月(今年は2月18日~20日)を終えた今日この頃。
 そろそろ沖縄県北部地域は各地で芽吹きが始まり、春が感じられる季節となっています。

 この季節、私が特に気になるのは露地栽培のパッションフルーツです。
 こちらは新芽ではなく花芽が確認できますが、今年は2月21日に初花芽を確認しました(写真1)。


写真1:2月21日に確認した露地パッションフルーツの花芽


 今年のパッションフルーツ花芽は少し早めに確認できた様な気がしますが、毎年のデータを記録していないので早いのか遅いのか正確なことは言えません。
 とりあえず状況証拠から真実が見いだせないか探ってみたいと思います。

 パッションフルーツの花芽形成と云えば、温度と明期の長さの条件を満たせば花芽形成を行うことが知られています。
 温度で云えば日中温度が20℃以上(表1)、明期の長さで云えば11時間/日以上(表2)が花芽発生の条件となっています。

表1:日中温度がパッションFの花芽出現率に与える影響

(「小笠原のパッションフルーツ」.東京都小笠原亜熱帯農業センター.より抜粋)


表2:パッションFの明期時間と花芽発生

(「小笠原のパッションフルーツ」.東京都小笠原亜熱帯農業センター.より抜粋)


 今年の2月の気象条件は、パッションフルーツの花芽形成の条件を満たしていたのでしょうか?
 また、平年値と比べ、早めに花芽が形成される条件が満たされていたのでしょうか?

 まずは日中温度(最高気温)から探ってみたいと思います。

 沖縄気象台のサイトでは、平年値(1973年~2000年の平均値)及び各年の名護市の地上気象観測統計資料を閲覧することができます。
 そのデータを用いて今年と平年値の2月最高気温を日毎データを見ると、平年値の2月最高気温では20℃以下の日が続くのに対し、今年の2月最高気温は2月5日以降ほぼ20℃以上となっていることがわかりました(図1)。


図1:2007年と平年値の2月最高気温の推移
(沖縄気象台発表データより抜粋・加工)


 次に今年2月の明期時間ですが、国立天文台 天文情報センター 暦計算室のサイトで那覇(沖縄県)の日の出、日の入りの時刻を調べ算出することにしました。
 明期時間が11時間以上になったのは、2月3日以降となっています(表3)。
 また、新暦では同月日における日の出、日の入り時刻は毎年ほぼ同じです。

表3:2007年2月の那覇(沖縄県)の明期時間

(国立天文台 天文情報センター発表データより抜粋・加工)


 以上のことから、パッションフルーツの花芽形成に必要な気象条件は、明期時間は2月3日以降、日中温度は2月5日以降は満たされていたことになります。
 両条件が満たされて約2週間後に花芽形成が確認されたことになります。

 日中温度が平年より高かったため、今年は花芽形成が早めに行われた可能性はあります。
 しかし、これからも花芽形成時期を確認して知見を深めたいと思います。

○参考資料
 ・「小笠原のパッションフルーツ」.2002. 東京都小笠原亜熱帯農業センター、東京都産業労働局農林水産部.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台
 ・「国立天文台 天文情報センター 暦計算室