熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

SNS(Facebook & Twitter) のパパイア記事 -2013~2016年-

2017年03月20日 | パパイア

 「ねこがため」の名前でSNS(Facebook & Twitter)にも熱帯果樹の小ネタを投稿しています。
 小ネタですのでブログ記事ほどのボリュームはありませんが、「SNSって使わない」と云う方々も多くいらっしゃると思いますので、品目毎にまとめ記事を作成します。

2013年1月9日
台湾の高雄農業改良場でパパイア新品種「高雄9号(日光)」が育成されました。台湾におけるパパイアの主要品種は「台農2号」ですが、「高雄9号(日光)」はそれより甘く、果実が小ぶり(600-750g)で豊産性とのこと。要チェックです。
http://kdais.coa.gov.tw/view.php?catid=4894  ←リンク切れ(2017.01/21確認)

2013年11月15日
2013年11月。沖縄県南城市で収穫された大きなパパイア(品種は不明)です。果実重量は、4,580gありました。これより重いパパイアの情報をお待ちしています。




2013年11月26日
雑誌「果実日本」2013年12月号掲載記事、深町浩著「沖縄県におけるパパイヤ「石垣珊瑚」の最新動向」が面白い。最近のパパイア生産動向や品種「石垣珊瑚」の特性等が詳しく書かれています。
http://www.nichienren.or.jp/home/kjnh/kjnh68.htm

2016年10月22日
最近、沖縄県中央卸売市場では青パパイア(野菜用)はセリ販売時にサンプル(1果)が縦断されています。 これは果肉色を確認するためで、青パパイアの実儒者が白い果肉を好むためです。果肉が黄色または赤色っぽくなっているものは人気がありません。
青パパイアは品種により果肉の色づきが異なる様です。
「台農2号」や「オキテング」は白っぽく、「紅妃(レッドレディ)」や「石垣珊瑚」は赤っぽくなりがち、とのこと。
「未熟なら野菜用、熟せば果実用」、「少し色付いても使える」と考えがちですが、有利販売する際は異なる価値観がある様です。











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良き道具にこそ匠あれ04 - パパイアシリシリーを作ろう -

2016年05月06日 | パパイア

 パパイアと云えば、マンゴーやキウイと並ぶ果物だと連想する方が多いでしょう。
 しかし、沖縄県ではパパイアは果物としてより野菜として消費されることが多い品目です。

 野菜で食べる場合は、果皮が緑色の状態(通称「青パパイア」)で収穫し、火を通して惣菜にします。
 代表的なメニューは「パパイアシリシリー(別名:パパイアイリチー)」です。

 今回は、知人より青パパイアと素晴らしいシリシリー器をいただいたので、我が家の晩餐づくりを公開したいと思います。

 準備するのは、まずは青パパイア(2果)。





 果皮をピーラーで剥き、種子をスプーンで取り除きます。





 それをシリシリー器を用いて千切り状になる様に擦り下ろします。
 つまり、果肉を「擦り擦りー(シリシリー)」するわけです。





 ここで、自慢したいのが使用したシリシリー器。
 長さ × 幅 × 厚さ=45cm × 8cm × 1cm の木の板に真ちゅう製の金具が取り付けられています。
 これは通常見かけるシリシリー器と比べると、かなり大きめです。





 金具は彫金で形が整えられ、楕円形の穴が6、5、6、5、6と合計28個開けられています。





 このシリシリー器を斜めに金ボールの底に立てかけて左手で支え、右手にパパイア果肉を持って擦り付けると、みるみるパパイアがシリシリーされます。
 しかも絶妙な太さ!
 道具が良いと料理も楽しい!!

 シリシリーが楽しくなってきたので、さらにニンジンを3本シリシリーしました。





 これらを油を加えたフライパンで炒めます。
 このとき、水分(水や酒)を加えることでパパイア果肉の軟らかさが調整できます。






 しんなりしたところで、フライパンに入りきらなかった残りを加えて、さらに炒めます。






 炒め終わった野菜は金ボールに取り、細かくした鶏肉(モモ肉、500g)を炒めます。
 今回は鶏肉を使いましたが、別にシーチキン缶でもその他肉類でも何でもOKです。





 鶏肉に火が通ったのを見計らって、さきほどの炒めた野菜を加えます。
 野菜も今回はパパイアとニンジンですが、好みの野菜を加えてもOKです。





 味付けも野菜炒めを作るのと同じ様に好みで調味料を加えます。
 今回は、塩コショウ、中華スープの素、だしの素、めんつゆ、オイスターソースを適量用いました。

 全体的に味が馴染んだところで調理完了です。





 
 パパイアシリシリーが好きでよく作られる方、このシリシリー器は上等です。
 私も頂きものなので販売店を知らないのですが、見かけたら購入をお奨めします。




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パパイア果実腐敗の犯人は誰だ!?

2013年03月14日 | パパイア

 2012年8月に「収穫後に完熟したパパイア果実が腐る」という相談を受けました。
 果実を確認させてもらうと、全体的に黄色く着色した果実表面に直径1cm弱~3cm程度で水浸状の病斑らしきものが観察できました(写真2)。



写真2.腐敗したパパイア果実


 
 今回は「このパパイアの果実腐敗の原因をどの様に診断したのか」を解説します。
 
 まず、腐敗している部分は、形状が「全て円形(同形)」であり、症状が「水浸状(湿った感じ)に腐敗」「やや凹んでいる」という共通な点を多くもつことから病気を疑いました。
 物理的な原因による傷だと同じ形状の傷はつきにくく、害虫の食痕なら即腐敗にはならないと思います。
 従って、病気か生理障害を疑いました。
 
 次に病気の候補を考えます。
 
 まずは、既知の情報や手持ちの資料から病気の種類を推定します。
 子どもの頃から生き物好きであった私は日常的に図鑑を眺めていました。そのため、初見の生き物に出会った際に「○○だ!」と同定できたり、「△△の仲間に違いない」と推定できたものです。
 同様に、普段から熱帯果樹の病気に関する書籍を読んでいると「これかな?」という候補がわかってきます。
 同じ様なものを観て違いがわかる様になるには「普段から意識しておく」ことが大切です。

 熱帯果樹の病害に係る書籍でお勧めなのは、国際農林業協力協会(AICAF)から発行された「熱帯果樹の病害」や全国農村教育協会が発行している「日本植物病害大辞典」です。
 品目毎に病害写真が豊富に掲載されているので重宝します。
 
 図鑑がない、所有している図鑑に記載がない場合は次のステップです。
 日本語で報告されている植物病害なら名称や病原菌のデータベースがあります。
 ネットで検索する際は、「農業生物資源ジーンバンク」の「遺伝資源データベース」の「日本植物病名データベース」が便利です。
 
 上記データベースで「パパイア」を検索すると22種類の病気が該当しました(表1)。



表1.パパイアの病害一覧(日本植物病名データベース)



 
 今回はこの中から熱帯果樹の果実腐敗(「炭疽病」や「軸腐病」)では定番となっている病原菌 Colletotrichum (コレトトリクム)属を容疑者として、病巣部および周辺の果肉から分生子(胞子のうち鞭毛をもたず細胞壁が比較的薄いもの。これで同定できる病原菌が多い)を探すことにします(図1)。



図1.Colletotrichum 属の分生子
(「植物病原菌類図説」より抜粋)


 
 Colletotrichum 属はカビの仲間です。
 カビの大部分は顕微鏡観察で観察と診断が可能なはずです。
 
 果肉を針の先で少し採取し、スライドガラスに載せ、水を1滴加えて、カバーグラスで閉じて、検鏡・・・。
 あれ?
 観察できた分生子は見たこともない奴でした(写真3)



写真3.パパイア果実の病巣部から得られた分生子


 
 見たことないけど、どこかで見た・・・。
 確か、(株)ソフトサイエンス社「植物病原アトラス -目でみるウイルス・細菌・菌類の世界-」に載っていたはず・・・。
 この図鑑は価格がやや高め(税込み18,900円)ですが、植物病原のカラー顕鏡写真が豊富でお勧めです。
 
  写真3に似た分生子をもつ病原菌がありました(図2)。



図2.Pleospora 属(アナモルフ Stemphylium 属)の分生子
(「植物病原アトラス -目でみるウイルス・細菌・菌類の世界-」より抜粋)


 
 Pleospora 属(アナモルフ Stemphylium 属)だそうです。
 
 【 マメ知識 】  
  本菌を含む子嚢菌は、有性世代(完全世代=テレオモルフ)と無性世代(不完全世代=アナモルフ)という異なる形態のステージを持つものが多く、世代により異なる名称(学名)が与えられています。
 同種の蝶とイモムシに異なる学名が与えられている様な違和感を覚えますが、そういうものだと割り切ってください。


 
 しかし、前述の「日本植物病名データベース」には本菌を病原菌としたパパイアの病害は報告されていません。
 となれば、次に調べるのは海外文献です。
 一昔前なら、この段階で挫折する人が多かったでしょうが、今や検索サイトで「Papaya Pleospora」とか「Papaya Stemphylium」をキーワードに検索すると幾つも情報がヒットします。
  学術的な報告書や論文を探す際は、Google なら「検索ワード filetype:pdf」で検索すると学術的な文献がヒットしやすくなります。
 
 今回は K. F. Chau et al. (1983)の「Postharvest Fruit Rot of Papaya Caused by Stemphylium lycopersiciStemphylium lycopersici による収穫後のパパイア果実腐敗)(PDF:853KB)」を読みました。
 
 この文献の ABSTRACT(要約)には、

 A previously undescribed storage disease of papaya by Stemphylium lycopersici is characterized by dark brown sunken lesions with distinct reddish brown margins. The pathogen infects wounded fruits more readily than it does unwounded fruits, and symptoms usually appear after extended cold storage (7-21 days). Lesion size and disease incidence were reduced by decreasing the storage temperature from 10℃ (normal shipping temperature) to 4℃, but could injury was observed on fruits stored at 6℃ or lower. The fungus was pathogenic to lettuce, alfalfa, bean, and tomato.

 これまでに記載されていない Stemphylium lycopersici によるパパイアの貯蔵病害は、暗褐色の窪んだ病斑に明確な赤茶色の縁があるのが特徴である。病原体は傷ついてない果実よりも傷ついた果物をより容易に感染させる。通常、病状は低温貯蔵(7~21日)後に拡がって現れる。損傷範囲および疾病発生率は、10℃(正常な発送の温度)から4℃まで貯蔵温度を低下させることにより軽減された。しかし、6℃以下で 保存すると果実に冷害が観察された。本菌は、レタス、アルファルファ、豆およびトマトで病原菌として知られている。(ねこがため訳)



と書かれていました。
 症状や観察された分生子と文献記載が似ていることから、簡易同定の結果は「今回のパパイア果実腐敗は、Pleospora 属(アナモルフ Stemphylium 属)に因るものである可能性が高い」としました。

 簡易同定結果をより科学的なものにするには、病原菌候補を分離して、健全なパパイア果実に接種し同様の症状が現れるか否かを確認し、同様の症状が観られた際は病巣部から同じ病原菌候補が得られるかを確認すると良いです(所謂「コッホの原則」を満たします)。
 その上で、「病原菌が Pleospora 属(アナモルフ Stemphylium 属)のうち何という種なのか」まで同定できれば尚良しです。

 そういった作業の中に悦びを見出してしまったら「植物病理マニアの扉」が開かれます。

 私の場合は(その扉は遠目に眺めるだけにして)、植物病理マニアのT氏にアドバイスを求め「(写真等を見た結果、パパイア果実腐敗の病原菌として Pleospora 属(アナモルフ Stemphylium 属)を疑う)診断は概ね正解ではないでしょうか。病原性があれば国内で初確認になるかと思います」との助言を頂くに留めました。
 共通する分野内で異なる専門性をもつマニアと交流をもつことはとても有用です。


○参考文献
 ・「熱帯果樹の病害」.1994. 国際農林業協力協会(AICAF).
 ・「日本植物病害大辞典」.1998.全国農村教育協会.
 ・「植物病原菌類図説」.1992.(編)小林享夫・勝本謙・我孫子和夫・安部恭久・柿島真.全国農村教育協会.
 ・「植物病原アトラス -目でみるウイルス・細菌・菌類の世界-」.2006.(編)米本勝美・夏秋啓子・瀧川雄一・堀江博道・有江力.(株)ソフトサイエン ス社.pp.154.
 ・「Postharvest Fruit Rot of Papaya Caused by Stemphylium lycopersici(Stemphylium lycopersici による収穫後のパパイア果実腐敗)」.1983. K. F. Chau, Anne Maino Alvarez.Plant disease;Novemver;pp.1279-1281(PDF:853KB
 
○参考サイト
 ・「分生子 コトバンク
 ・「子嚢菌門 _ Wikipedia
 ・「コッホの原則 _ Wikipedia




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パパイアの葉にいたハダニハンター

2008年01月12日 | パパイア
 2008年1月4日に掲載した「パパイアの冬季温度管理について」で書いた様に、沖縄県でパパイアの経済栽培を行う際は、低温又は多雨の時期(11月~6月)は施設にビニール被覆を行うことが基本となります。

 これは言い換えると「パパイア栽培施設の中は、周年温かく乾燥した状態である」と言えます。
 パパイアの生育を促し、立枯症の軽減を図るために環境を整えると「温暖+乾燥」といった環境になりがちです。

 しかし、「温暖+乾燥」の条件下では幾つか問題が生じます。

 まず1つ目の問題は、パパイアは比較的水を必要とする作物ですので、雨が降らない(ビニール被覆により雨が当たらない)時期は、人の手で水をやらなければいけないことです。水はけが良い土地でたっぷり水をかけるのが、パパイアの栽培には向いています。

 もう1つの問題は、「温暖+乾燥」という環境下ではハダニ類が大発生することです。


※この先は虫の話題ですので、虫嫌いな方は読むのをここで止めて下さい。


 パパイアを栽培していて、「葉の色がかすり状に抜けて薄くなってきた様だ」「葉の光沢がなくなってきたぞ」「葉に小さな白い斑点が見られる」等と思った際は、ハダニ類の被害を疑って下さい(写真1、2)。


写真1、2:ハダニの被害を受けたパパイアの葉


 ハダニの寄生を疑ったなら、次は葉の表も裏もじっくりと観察して下さい。
 ハダニの大きさは、成虫でも0.4~0.5mmと小さいため見落とすかもしれないので、必要な方は虫眼鏡やルーペを用いて観察して下さい(写真3、4)。


写真3、4:パパイアの葉に寄生していたハダニ、ねこがため愛用ルーペ


 ルーペは小さな虫を観察するには便利な道具です。
 私が愛用しているのは、東海産業の「ピーク・ルーペ 15X(№1962)」です。
 これまで幾つかのルーペを使ってきましたが、このルーペは「形状がシンプル&コンパクト」「ぴったり被せたところでピントが合うから使いやすい」「レンズの下のフードが透明なので明るくて見やすい」「1,500円程度で購入できるお買い得感」等とお奨めの逸品です。
 因みに写真3のハダニ写真は、野外でルーペにデジカメのレンズを近づけマクロ撮影しました。

 話を戻します。
 とにかく、パパイアの畑はハダニ類が大発生しやすい条件が揃っています。
 2007年の年末に知人のパパイア畑を訪ねた際もハダニが大発生していました。

 私は「ハダニの被害が多いなぁ~」位にしか思っていなかったのですが、同行していた私の果樹病害虫のブレインの一人“ふたさん”が「あっ、ハダニの天敵がいますよ」と葉の裏を指差しました。指差された先には、1~2mm程度のイモムシ状の虫がハダニに齧り付いていました(写真5、6)。


写真5、6:ハダニに齧り付いてる虫を発見


 この虫を持ち帰り、ネットで調べてみると沖縄県病害虫防除技術センターが発行している「平成19年度病害虫発生予報第9号(12月予報)(PDF:52.1KB)」に掲載されているヒメハダニカブリケシハネカクシ(Oligota kashmirica benefica)の幼虫に似ています。
 しかし、専門家に尋ねたところ「沖縄県からはヒメハダニカブリケシハネカクシの分布は報告されておらず、同種が亜種に認定された報告書(Naomi.1984)内に沖縄県産の標本が含まれていないことから亜種である可能性がある」とのことです。
 従って、以下この虫をケシハネカクシの幼虫と記すことにします。

 ケシハネカクシの幼虫を実態顕微鏡下で観察していると、歩き回りながら次々とハダニの卵、幼虫、成虫と見境なく食べていきます(写真7~10)。




写真7~10:ハダニを捕食するケシハネカクシの幼虫


 ケシハネカクシの幼虫の捕食方法は、ハダニや卵に穴を開けて中身を吸い取る方式の様です。
 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所による報告(岸本.平成13年度研究成果情報)では、電子顕微鏡で観察すると、ヒメハダニカブリケシハネカクシの幼虫は、ハダニ類の卵に2つの大型孔(左右の孔の大きさ、形状がほぼ同じ(7~15μm)で孔と孔の間隔が広いのが特徴)が見られるそうです。

 次々とハダニを捕らえる様子が面白いので、30分程実態顕微鏡を覗いていました。
 ケシハネカクシの幼虫(恐らく終齢幼虫)が卵の捕食に要する時間は15秒前後、ハダニの成虫の体液を吸うにも1分程度しかかかりません。そして、食べ終えると2分程徘徊して再び捕食します。
 観察されている状況下で、これだけ積極的に捕食行動を見せてくれるとは誠に頼もしい天敵です。

 ヒメハダニカブリケシハネカクシについては、本土でもハダニの有力天敵として研究が行われている様ですので、それらを参考にしながら沖縄県でもケシハネカクシがハダニの天敵として活用できれば面白いと思います。

 最後に、2008年1月に再びケシハネカクシの幼虫を見つけたパパイア畑を訪れました。
 そしてハネカクシの成虫を見つけましたので、写真を掲載しておきます(写真11、12)。
 成虫の体長は約1mmとゴマ粒より小さいので、幼虫同様に知らないと見逃す虫だと思います。
 因みに、ケシハネカクシの成虫もハダニを食べるそうです。


写真11、12:ケシハネカクシの成虫


○参考資料:
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.
 ・「写真による 農作物病害虫診断ハンドブック」.2002.沖縄県植物防疫協会.
 ・「Studies of the Genus Oligota MANNERHEIM(Coleoptera Staphylinidae) from Japan;Ⅰ. On the Species-group of O.yasunatui KINSTNER, with Description of a New Subspecies」.1984.Shunichiro Naomi.The Entomological Society of Japan; Konchu, Tokyo, 52(4):516-521.
 ・「ミカンハダニ卵上に残された捕食痕に基づく天敵種の識別法」.岸本英成.平成13年度研究成果情報一覧.独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所.

○参考サイト
 ・「東海産業
 ・「Yahoo!ショッピング
 ・「沖縄県病害虫防除センター
 ・「むしこら」:ハダニが増えるとやって来る天敵ケシハネカクシ


パパイアの冬季温度管理について

2008年01月04日 | パパイア
 沖縄県でパパイアの栽培を行う際に、最も生産にダメージを与える災害は台風とウィルス病です。そのため、パパイアの経済栽培を行う場合は、最低でもネットハウスの整備が必要となります(写真1、2)。


写真1、2:施設で栽培されるパパイアと栽培施設


 しかし、ネットハウスを整備したからと言ってパパイアの栽培が円滑にできるかと言えば実はそうではなく、多くの方が畑の水はけの悪さに起因する立枯症(疫病による立ち枯れが多い様です)に悩むことになります。
 また、経営を有利に展開するためには、パパイアの生育適温を把握し、温度管理を行うことが重要です(表1)。

表1:パパイア(サンライズ・ソロ)の生育適温

(参考資料:「果樹栽培要領」.沖縄県農林水産部、「パパイアにおける果実の着生と発達」.H. Y. Nakasone(著)、出花・井上(訳))


 表1から、パパイアは23~28℃で栽培するのが最も好ましい様です。

 しかし、私が住んでいる沖縄県北部(名護市)では、10月~5月は最低気温が23℃以下になります(図1)。平均気温で見ても11月~4月は概ね23℃以下です。
 従って、秋から冬にかけて施設にビニールで被覆し保温することが適切な温度管理であると言えます。


図1:名護市の気温(平年値)とパパイアの生育適温
(参考資料:沖縄気象台ホームページ


 ビニール被覆の時期は、沖縄県「果樹栽培要領」には11月~6月と書かれています。
 これは恐らく、ビニールの被覆開始時期を10月としなかったのは台風襲来時期であるためで、ビニールを剥ぐ時期を5月としなかったのは梅雨時期(長雨による立枯症回避)のためだと思われます。従って、ビニールを剥ぐのは梅雨明け宣言後が適期ではないでしょうか?
 もちろん、5月~6月は当然のこと、その他の時期の日中にハウス内が高温になる際は、ハウス側面のビニールを巻き上げ、施設内ができるだけ28℃以上にならない様に管理するのは言うまでもないことでしょう。

 沖縄県下では露地栽培であっても低温でパパイアが枯れることはない様ですが、生育が緩慢になります。
また、フルーツ用として栽培している場合「冬季の低温下で登熟した果実(春~初夏にかけて収穫される果実)は糖度が低い」ので、美味しいパパイアを得るためには温度管理がお奨めです。


○参考資料:
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.
 ・「パパイアにおける果実の着生と発達」.1997.Henry Y. Nakasone(著)、出花幸之介・井上裕嗣(訳).沖縄農業;第32号第1号;p.68-88.沖縄農業研究会.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台

パパイアの果形いろいろ

2006年10月17日 | パパイア
 2006年10月16日のブログ記事「穴開きパパイアの謎」で、パパイアは花型(花タイプ)で果形が変わるということを紹介しました。

 しかし、これは品種・系統による変異があります。
例えば「もともと細長い系統」でしたら、雌花と云えども球形、卵形だけではなく、もっと細長い果形の果実が得られます。

 今日は10月15日の海洋博覧会無料入館日に「熱帯ドリームセンター」の中庭で「細長い果実を着ける系統のパパイア」が栽培されていましたので、その写真を用いて実例を紹介したいと思います。

1 雌果実のいろいろな果形(細長い果実を着ける系統のパパイア)

 まずは写真1の様な雌花を開花させていた雌株における果形の変異をご覧下さい(写真2~5)。


写真1:雌花


写真2:雌果実(卵形)


写真3:雌果実(長円筒形)


写真4:雌果実(うりざね形)


写真5:雌果実(洋ナシ形)


 写真2の果実であれば典型的な雌果実といえますが、写真3~5の果実は果物専用品種「サンライズ・ソロ」等では両性果実だと思う様な果形です。

2 両性果実の果形(細長い果実を着ける系統のパパイア)

 同じく写真6の様な両性花を開花させていた両性株に結実した果実をご覧ください。


写真6:両性花


写真7:両性果実(長円筒形)


 写真7の両性果実は長円筒形としましたが、写真3の雌果実の長円筒形と比べてさらに細長いことがわかるかと思います。

 この様に、同品種、同系統内で雌果実と両性果実の果形を比べたときは、雌果実はより丸みを帯びた果形といえますが、品種や系統がわからないと果実だけでは性型を判断しづらい場合も多いかと思います。

3 雄果実の果形いろいろ(おまけ)

 パパイアの雄花は基本的には果実を着けないとされていますが、春先に開花した花(低温時に花芽分化を行った花)には稀に着果することがあります。
 上記の「細長い果実を着ける系統のパパイア」とは別系統ですが、雄果実もバナナ形以外の果形を着果させることもあることを確認するために写真8をご覧ください。


写真8:パパイア雄果実(バナナ形、長円筒形等)


穴開きパパイアの謎

2006年10月16日 | パパイア
 9月の末に珍しいパパイア果実を観察する機会に恵まれました。
 果頂部に穴が開いたパパイア果実です(写真1・2)。


写真1:果頂部に穴が開いたパパイア果実


写真2:穴開き果断面

 今回は、何故この様な「穴開き果」が生じたのか、原因を考えたいと思います。
 このパパイア果実は、紅妃(レッドレディ)と呼ばれる品種の両性株から得られたものらしいとのことです。

 パパイアの果実は、果形は一般的に球形か卵形、又は洋ナシ型で、正常な果実は5つの縦の心皮が側面で癒合して一体化した構造です。果実には大きな1つの中央腔を形成し、その内部には多数の種子が子房壁に位置する胎座に着生します。

 果形は、花型により決定すると考えられています。
 パパイアの花型は、雄花、両性花、雄花の3タイプに大別されますが、このうち両性花は雄しべの数により、さらに4タイプに分けられます。
 つまり、パパイアの花は雌花1タイプ、雄花1タイプ、両性花4タイプの計6タイプに分類されます。
 以下に各花型の特徴を記します(表1)。

表1:パパイアの花型


○参考資料:「パパイア ~生果用サンライズ・ソロの作り方~」


 写真1を見直しますと、穴開き果実の心皮数は「いずれも5個で心皮のゆ合が不完全で、果実によっては心皮にねじれが見られる奇形果」であることがわかります。
 表1と併せて考えますと、タイプⅢ(奇形花)の特徴を見事に表現した果実と言えそうです。

 両性花であれば、タイプⅡ又はタイプⅣであれば正常果が得られたはずですが、何故タイプⅢの花が咲いてしまったのでしょうか。

 パパイアの両性花のタイプは極めて不安定で、温度、遺伝因子、土壌水分、チッ素レベル、昼夜温差等の様々な影響により変化することが知られていますが、花タイプを決定する主な要因は温度(高低と昼夜温差)と遺伝因子であるとされています。
 一般に夏の高温時に花芽分化すると花は雄化(雌しべが退化)し、冬の低温時に花芽分化すると花は雌化(雄しべが減少または欠落)することが知られています(図1)。


図1:パパイアの花型と両性花に対する温度の影響

○参考資料:「パパイア ~生果用サンライズ・ソロの作り方~」


 ここで、今回の穴開き果実が発生した原因を考えてみたいと思います。
 パパイアの花のタイプを左右する温度とは、開花前の花芽分化時と考えられています。
 また、タイプⅡ・Ⅲの花は低温時に花芽分化した際に発生しやすい花のタイプとされています。

 野菜用パパイアの開花から収穫までの日数を示した資料を私は残念ながら持っていませんので、完熟パパイアの登熟日数を参考に考えます(図2)。


図2:果物用パパイアの開花時期と登熟日数

○参考資料:「果樹栽培要領」


 5月に開花した花が果実用として収穫されるまでの日数(登熟日数)が約140日ですので、5月上旬に開花した花が9月下旬に収穫される計算になります。
 しかし今回の果実は果実用に熟した果実ではないので、5月下旬に開花して120日程度経過したものではないかと仮定します。

 パパイアの花芽分化から開花までの日数は、一般に45~90日とされています。
 もし5月末に開花したのであれば、花芽分化の時期は3月上旬~4月中旬と考えられます。
 この頃の名護市(沖縄本島北部地域)の気温はどの様になっていたのでしょうか(図3)。


図3:2006年3月~4月の半旬別気温の推移(名護市)

○参考資料:沖縄気象台HP


 図3で注目すべきは、平均最低気温の推移です。
 
 Nakasone等(1997)によると、ハワイでパパイア(ソロ品種)の両性株を栽培して得られたデータとして、

 平均最低気温20.5℃以下で、ソロ品種には心皮化した花ができ始め、15.5℃まではその割合が増え続ける。


と記しているからです。

 図3の平均最低気温の推移を見ますと、3月上旬~4月下旬までの半旬別平均最低気温は10.7℃~18.2℃の間を推移していますので、Nakasone等の云う心皮化した花(タイプⅢ)が生じるのと同条件だと言えるのではないでしょうか。

 因みに、今年(2006年)の名護市における半旬別平均最低気温で20.5℃以上になるのは概ね5月上旬以降ですので、露地栽培では4月末までに花芽分化を行った株では奇形花(タイプⅢ)が生じたかもしれません。

 穴開き果の様な奇形果を生じさせないためには、果形を確認して奇形果なら早期に摘果することはもちろんですが、それでも奇形果が多い様なら栽培品種の検討を行う、または温度変化による果形の変異が少ない雌株中心の栽培に切り替える等の工夫が必要かもしれません。


○参考文献
 ・「パパイアにおける果実の着生と発達」.1997.Henry Y. Nakasone(著)、出花幸之介・井上裕嗣(訳).沖縄農業;第32号第1号;p.68-88.沖縄農業研究会.
 ・「パパイア ~生果用サンライズ・ソロの作り方~」.2003.伊藝安正.(財)沖縄県農業後継者育成基金協会(沖縄県青年農業者等育成センター).
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台









「石垣市パパイア研究所」開所

2006年01月24日 | パパイア
 年末年始も世間の熱帯果樹情報はバンバン発進されていました。
 今年になって、私が一番「オッ!」と思ったのは、昨年末の情報になるのですが石垣市に「石垣市パパイア研究所」が開所したことです(八重山毎日新聞.05/12/28)。

 この研究所は、「石垣市が栽培特許を取得し、戦略的農作物として期待するパパイアの調査・研究拠点となる」とのことですが、市が単一品目のために研究所を設置するとは凄いと思います。

 沖縄県の園芸作物を統計的に調べたいときに重宝する資料「園芸・工芸農作物市町村別統計書(沖縄総合事務局農林水産部統計調査課)」によると、平成15年産の沖縄県産パパイアの結果樹面積は33ha(うち成熟果:8ha、うち未成熟果:25ha)、収穫量は1,020t(うち成熟果:246t、うち未成熟果:776t)、出荷量は 913t(うち成熟果:223t、うち未成熟果:690t)、となっています。

 そのうち石垣市産のパパイアは、結果樹面積は5ha(うち成熟果:1ha、うち未成熟果:3ha)、収穫量は 140t(うち成熟果:40t、うち未成熟果:100t)、出荷量は 125t(うち成熟果:33t、うち未成熟果: 92t)、となっています。

 つまり、石垣市産パパイアは県産パパイアの結果樹面積で15%、収穫量、出荷量で14%を占めていることになります。
 また、他のパパイアの生産が盛んな産地に豊見城市(パパイアの拠点産地として県の認定を受けている)や糸満市等の同等の規模を誇る産地がありますが、平成15年時点では石垣市は県内3大産地に含まれる有力産地と言えます。

 この研究所でたくさんのパパイア研究が行われ、石垣市がパパイア産地として、さらなる飛躍を遂げることを願っています。

○関連情報
 ・石垣市が取得した栽培特許についての詳細は、特許電子図書館の「初心者向け探索」の「特許・実用新案の検索」でキーワード「パパイヤ・石垣市」で検索し閲覧できます。
 ・「パパイヤ養液土耕栽培の汎用化技術の開発