熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

スターアップル(緑色系)をもらいました

2010年06月23日 | スターアップル
 2010年5月13日。
 熱帯果樹仲間から沖縄島南部で収穫されたスターアップル(緑色系)の果実をもらいました。

 これまで、紫色系のスターアップルは食べたことがあったのですが、緑色系は初めてです。
 果実をもらった翌日の14日に、写真撮影を終えた後に食べてみました。

 感想は・・・。
 あれ?
 甘味がほとんど感じられない。

 今回食べた緑色系のデータを表1に記します。



 糖度を示すBrix値が7.5%は低いと思います。
 そこで、ネット上でスターアップルの糖度が記載されているページを探してみました。

 見つけたのは「VIETNAM FRUIT & VEGETATABLES ASSOCIATION」というベトナムの果樹や野菜の情報サイト。
 そのページ内のレポート(PDFファイル:28KB)にスターアップル(別名:ミルクフルーツ)について記載がありました。

4. Milk fruit . Scient name: Chrysophyllum cainito . Trade name: Milk Fruit
The average weigh is 300 -500g. the ripen milk fruit has lustous and yellow- green peel, and light violet at the top of milk fruit. The milk fruit is soft, sweet, brix is from 15 – 18%. The ratio of a milk fruit which can eat is from 60 – 70%. Gathering season is from October to March . Milk fruit is arranged into group of fresh eating and frozen canned. Milk fruit’s peel is thin, easy to become bluish black, Therefore,attention to reservation after gathering is necessary.

4.ミルクフルーツ 学名: Chrysophyllum cainito 通称:ミルクフルーツ
平均果実重は300~500g。熟したミルクフルーツの果皮は、光沢のある黄緑色で果頂部付近は明るいスミレ色をしている。ミルクフルーツは、柔らかく、甘く、brix(糖度)は15~18%、可食部割合は60~70%である。収穫時期は、10~3月である。ミルクフルーツは、生食される他、冷凍や缶詰にして利用される。ミルクフルーツの果皮は薄く、簡単に青黒くなるため、収穫後の取扱いには注意が必要である。

(ねこがため訳)



 やはり、今回食した緑色系は糖度が低いです。
 収穫適期を間違えたのか、糖度が低い系統なのか。
 理由はわかりませんが、美味しいものではありませんでした。

 しかし、熱帯果樹仲間の話では、露地で栽培されていて、5月に収穫されるとのことだったので、少し興味が湧きました。

 と云うのは、沖縄県産の果実は、実は周年安定した量が生産されないからです。
 図1に、平成21年の沖縄県中央卸売市場の果実取扱い数量を、沖縄県産(県内)と県外産(県外)、国外産(国外)の3つに分け、月別推移を見てみます。



 これを見ると、県内果実は春と秋に取扱い数量が減っていることがわかります。
 秋には県外果実の入荷が増え、春には国外果実を増やすことで、周年一定量の取扱い数量を賄っています。

 スターアップルの様に5月に収穫時期(旬)を迎える果実があれば、春の県内果実をもっと充実させることができます。
 これが露地で栽培が可能となれば、生産者の初期生産コストも下がるので有望な品目かもしれません。

 とは云っても、美味しくなければ話になりませんが、スターアップルには糖度が高い系統(品種)があります。
 将来性がある話な気がします。

 今回、得られた種子のうち17個を2日間濡れティッシュペーパーで包んだ後(こうすると種子表面に残った果肉が取れやすくなる)に撒いてみました。

 すると播種26日後の6月11日には47%(8/17)の種子が発芽しました。
 播種30日後の6月15日には64%(11/17)、最終的には播種32日後の6月17日には88%(15/17)の種子が発芽しました(写真2)。



 スターアップルの種子は、状態が良ければ同時期に高確率に発芽する様です。

 いつの日か、美味しいスターアップルの系統・品種が見つかる日のために台木を養成してみようと思います。


○参考サイト
 ・「沖縄県中央卸売市場」.市場年報;平成21年 Ⅱ青果部(PDFファイル:4,843KB);p.33.
 ・「VIETNAM FRUIT & VEGETATABLES ASSOCIATION

2010年 マンゴー食べ初めは珍品種から

2010年06月21日 | マンゴー
 2010年6月19日に沖縄県は梅雨明けしました。
 梅雨が明けると一気に夏です。
 マンゴーの季節が到来します。

 国内で栽培されているマンゴーの品種は「アーウィン」が主ですが、私が今年最初に食べたマンゴーは「アーウィン」ではなく「ゴールデンリペンス(Golden Lippens)」でした。



 「ゴールデンリペンス」に関する国内の情報は少ないですが、伊藝らが1998年に「A Guide To Mango in Florida」という資料を翻訳し刊行した「マンゴーの品種」という冊子(現在 在庫はなく入手困難)に品種特性等の記載が見られます。
 それによると、「ゴールデンリペンス」は、「アーウィン」と同じく「リペンス」という品種の実生から得られたとされています。
 また、「ゴールデンリペンス」は、果形は長円形で、果皮色は明るい黄色でときどきピンク色の紅がのる、果肉の繊維とヤニ臭さが少なく、味は濃厚と記されています。
 この資料では、各品種の食味を5段階評価しており、「ゴールデンリペンス」の食味評価は最高の「優(excellent)」です。

 この他にも、米本(2000?)は、「ゴールデンリペンス」は「アーウィン」より収穫期が遅く、糖度が高いことを報告しています(表1、2)。





 これらの事前情報から、私も期待して食したのですが、甘味が薄く「「淡い味だなぁ・・・」という感想をもちました。
 それ以外は、繊維は少なく、ヤニ臭さも気にならず(アーウィンよりは有る)、ジューシーと申し分ないのですが、味が淡いと「美味しいマンゴー」なイメージと結びつきません。
 表3に私が食した「ゴールデンリペンス」のデータを記します。



 既存のデータと比べると、収穫時期が早く、果実サイズが小さく、糖度が低いことがわかります。
 つまり、私は品種本来の特性を十分に発揮できていない果実を食べたのだと思います。
 珍しい品種が食べられたので良かったのですが、8月以降に品種特性を発揮した「ゴールデンリペンス」を食べなおしたいものです。


○参考文献
 ・「マンゴーの品種(原著:A Guide To Mango in Florida)」.(訳)1998.(訳)伊藝安正・井上裕嗣.宮古農業改良普及センター.
 ・「マンゴーの品種特性について」.米本 仁巳.2000?.農林水産総合技術センター山村産業試験場(平成11年度成果発表).