熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

タンカンのシーズン到来

2007年01月09日 | 柑橘類
 沖縄県の冬を代表する果樹と言えばタンカンです。



 今年もタンカンの時期が到来したことを沖縄県内のマスコミは連日伝えていますので、その模様をお伝えします。

 まずは、1月6日の沖縄タイムス朝刊では、以下の通りタンカンのゆうパック販売開始を告げる記事が掲載されました。


「タンカンの季節到来 ゆうパック発送始まる」

 やんばるの冬の味覚タンカンの「ゆうパック」全国発送キャンペーンが四日、「道の駅」許田、名護郵便局などで始まった。
(中略)
 価格は輸送料込みで五㌔・三千二百円(県外三千五百円)。
 問い合わせは同局、電話0980(52)2042か、「道の駅」許田、0980(54)0880。北大東、南大東、西表島郵便局でも扱う。


 続いて、1月7日の琉球新報朝刊では、以下の通りタンカン狩り開始に向けての記事が掲載されました。


「タンカン狩り 13日開始PR 伊豆味みかん生産組合」
 13日から本部町伊豆味で始まるタンカン狩りを前に、伊豆味みかん生産組合の饒平名知春組合長と生産農家の池宮城秀雄さんが5日、琉球新報北部支社を訪れ「おいしいタンカンを多くの人に食べてもらいたい」とPRした。2月中旬ごろまで実施予定。
(中略)
 入園料は小学生以上250円、幼稚園・保育所の団体は200円。タンカンは1㌔当たり250円で持ち帰り可能。入園時間は午前9時から午後4時まで。問い合わせ・入園受け付けは伊豆味みかんの里総合案内書 0980(47)2889。


 そして最後に紹介するのは、1月9日の琉球新報朝刊で掲載されました、ゆうパック発送に関わる記事です。


やんばるタンカン全国へ ゆうパック発送を開始

 【名護】名護郵便局は4日から、やんばる産のタンカンを全国へ届けるゆうパック発送を始めている。山城幸男局長=写真左から2人目=は同日、琉球新報北部支社を訪れ、「今やんばるの一番の旬はタンカン。地域に根差した局として、やんばる活性化の一助になればと思う。郵便局のネットワークを活用してほしい」とPRした。期間は31日まで。
 昨年は同局から1万5000個が県内外に発送された。今回は離島の北大東、南大東、竹富、西表大原郵便局でも受け付けを開始。購入者には飲料水などの景品が当たる抽選会を実施している。
 タンカン4キロ3000円(県内は2600円)、5キロ3500円(同3200円)、10キロ5500円(5300円)で取り扱っている。
 問い合わせは同郵便局0980(52)2042、「道の駅」許田0980(54)0880。


 今年のタンカンも昨年同様、夏場に台風の直撃を受けていませんので高品質であることを期待したいと思います。

○参考資料
 ・「沖縄タイムス;タンカンの季節到来 ゆうパック発送始まる:07/01/06」
 ・「琉球新報;タンカン狩り 13日開始PR 伊豆味みかん生産組合:07/01/07」
 ・「琉球新報;やんばるタンカン全国へ ゆうパック発送を開始:07/01/09」


「いずみ紅」の出荷が始まっています

2006年12月17日 | 柑橘類
 12月13日より沖縄本島北部に位置する本部町伊豆味から「いずみ紅」という柑橘類の出荷が始まりました。

 はじめに、「いずみ紅」とは、伊豆味果樹生産組合の農家が作っている「大紅蜜柑(オオベニミカン)」という柑橘類を販売する際に用いる地域ブランド名(商品名)のことです。


写真1:大紅蜜柑の果実


 大紅蜜柑の学名は Citrus tangerine hort. ex Tanaka であり、英名はダンシータンジェリン(Dancy tangerine)又は単にタンジェリン(Tangerine)と言います。
 大紅蜜柑の特徴は、㈱養賢堂から出版されています「果樹園芸大辞典」には、

 赤蜜柑、赤ツラなどの異名があり、インドのマドラス原産でフィリピン、海南島、アメリカのフロリダ州やカリフォルニア州などに栽培され、日本では鹿児島、高知、宮崎、和歌山などに点在するが、南西諸島にはまだかなり残存している。果実は扁球形をなし、果皮はとう紅色を呈しなめらかで光沢がある。大きさはウンシュウミカンとほぼ同じくらいであり、外観美麗で害虫抵抗性強く、栽培も容易であるが、食味が淡白でそう快味がなく、種子も多い。
 アメリカのダンシータンジェリンは本種の実生から出た優良系統で、かなりの生産額を有する。



 と記されています。

 また大紅蜜柑は、田中長三郎氏の分類によると後生柑橘亜属のミカン区のうちコミカン亜区・かん(柑)香類・大果亜類というポンカン等と同じグループに属しています。

 さて、その様な大紅蜜柑ですが、沖縄県では近年12月中下旬に出荷される柑橘類として人気を集めています。
 人気の理由は、濃い紅色の美しい外観であること、果皮が剥きやすいこと、優良な果実は瑞々しく食味が良いこと、同時期に競合する沖縄県産マンダリン類がないこと等が考えられます。

 出荷期間が短い柑橘ですから、購入・注文は早めに行うのが良いと思います。

 伊豆味果樹生産組合により生産された大紅蜜柑「いずみ紅」は、本部郵便局(TEL.0980(47)2302)を通して注文できる様ですので、沖縄本島北部まで足を運びにくい方は、ゆうパックで注文するのが良いかもしれません。
 価格は、5kg入りで沖縄県内向け3,300円、沖縄県外向け3,500円、10kg入りは県内外とも5,500円(価格は全て送料込み)となっている様です。

○参考文献
 ・「園芸学用語集 園芸作物名編」.1979.園芸学会(編).㈱養賢堂.
 ・「第2次改訂追補 果樹園芸大辞典」.佐藤公一ら.1986(第2次改訂追補後の第6版).㈱養賢堂.
○参考サイト
 ・「琉球新報;ほのかな酸味味わって「いずみ紅」きょうから出荷:06/12/13」


うるま市が「中晩柑(あまSUN)」の拠点産地に認定

2006年12月14日 | 柑橘類
 平成18年12月5日に、沖縄本島中部に位置するうるま市が「中晩柑(あまSUN)」の拠点産地として沖縄県より認定を受けました。


うるま市ホームページより抜粋・加工


 沖縄県が認定する拠点産地とは、沖縄県のホームページ中の「県民ハンドブック;第3部しごと(農業・林業・水産業)」の項に以下の様に説明されています。


 県は、沖縄県農林水産業振興計画に基づきサヤインゲン、ゴーヤー、カボチャ、キク、マンゴー等を戦略品目と定め、市場競争力の強化や有利販売に取り組んでいます。園芸作物の生産振興を図るため、県では、定時・定量・定品質を出荷原則に、市場の信用とおきなわブランドの確立による拠点産地の形成を進めています。



 また、平成18年12月現在における果樹拠点産地は表1の通りです。

表1:果樹の拠点産地認定一覧(平成18年12月現在)

沖縄県農林水産部園芸振興課ホームページ;園芸の拠点産地の項より抜粋・加工


 今回の拠点産地認定は、果樹では8カ所目、中晩柑類では初めての認定となります。

 ここで気になるのは「あまSUN」という聞き慣れない名称です。
 実は「あまSUN」とは、「天草(あまくさ)」の名称で品種登録されている柑橘類の沖縄県産ブランド名(商品名)です(写真1)。


写真1:天草(あまSUN)の果実


 因みに「あまさん」とは、沖縄の方言で「甘い」という意味です。
 「あまSUN」を食べた際は是非「でーじ あまさん(とっても甘い)」と口にしてみて下さい。

 さて、「あまSUN」もとい天草の特長については、農林水産省の品種登録ホームページによりますと、


 この品種は,(「清見」×「興津早生」)に「ページ」を交配した交雑実生であり,果皮色が紅橙で,果面が滑らかで果皮が薄く,果重が200g程度になる,育成地(長崎県南高来郡口之津町)において12月下旬から収穫できるかんきつである。 樹姿はやや開張,樹の大きさはやや小,樹勢は中である。枝梢の節間長は中,太さはやや細,とげの多少は少である。葉身長は長,幅は中,葉形指数は中,面積は大である。翼葉の長さは長,幅は中である。花の大きさ(花蕾の重さ)は軽,花弁の長さは短,幅は狭,色は白,数は4枚である。雄ずいの分離の程度は分離,数は少,花粉の多少は少,子房の長さは短,直径は中,形は短球である。果実の外観は扁平,果梗部の形はやや球面,果頂部の形は平坦,果面の粗滑は滑,油胞の凹凸はやや凸,果皮の色は紅橙(JHS カラーチャート1306),赤道部果皮の厚さは薄,剥皮の難易は中である。じょうのう膜の硬さは中,中心柱の大きさは小,果実の大きさは大(200g程度),砂じょうの色は橙,大きさは小,形は紡錘である。果汁の多少は少,甘味は中,酸味及び香気は少である。発芽期は晩,開花期は中,成熟期は早で,育成地において12月下旬~1月上旬である。 「清見」と比較して,果面が滑らかであること,果皮の色が紅橙であること,成熟期が早いこと等で,「ページ」と比較して,葉身長が長いこと,果実が大きいこと等で,「南風」と比較して,葉の幅が広いこと,果実の外観が偏平であること,果皮の色が紅橙であること等で区別性が認められる。



 とのことです。

 沖縄では12月に収穫される「あまSUN」は食味と外観の良さから近年人気の贈答用果樹として取り扱われています。
 今期の出荷は、うるま市だけで37t、沖縄県全域(と言っても沖縄本島中北部)で80tを見込んでいるそうです。この全量が沖縄県内で消費されてしまいますので、沖縄県内の店頭で「あまSUN」を見かけた方は是非一度は購入してみて下さい。
 出荷期間は12月いっぱいとのことですから、逃してしまいますと来年まで味わえません。

 「あまSUN」を食べるときは、果皮がとても薄く剥きにくいので、包丁で縦に4~8分割してオレンジの様に食べると食べやすいです。

 甘酸っぱくジューシーな「あまSUN」を食べて、「でーじ あまさん!」と笑顔になりましょう!

○参考文献
 ・「あじまあ.2005年1月号.沖縄県農業協同組合」

○参考サイト
 ・「うるま市ホームページ
 ・「沖縄タイムス 経済ニュース;あまSUN/拠点産地にうるま市:06/12/05」
 ・「琉球新報 経済;「あまSUN」の拠点産地 県農水部がうるま市に認定書:06/12/05」
 ・「沖縄県園芸振興課
 ・「農林水産省;品種登録ホームページ




 

オートーは「黄橙?」or「青唐?」

2006年12月07日 | 柑橘類
 沖縄県に晩秋を告げる在来柑橘類オートーの紹介をしたいと思います(写真1)。


写真1:オートーの果実


 オートーは、田中長三郎氏の分類によると後生柑橘亜属のミカン区、コミカン亜区、芳香類に分類されるマンダリンの1種です。
 つまり、オートーは以前に紹介したカーブチータロガヨと同じグループの柑橘類とされています。
 学名はオートーという標準和名に因み、Citrus oto hort. ex Y.tanaka です。

 しかし、学名の基となったオートーという名称の由来ははっきりしていません。
 伊藝(1995)は、オートーの名称の由来について、以下の様に記しています。


(前略)
 田中諭一郎氏(昭和23年)は、「オートーの名称は黄橙の意で、果色よりその名を得」としている。一方、新城正徳(昭和26年)はオートーは青くても食べられる意で、名称のオートーは、青唐九年母の九年母が打ち切れて、青唐になまり、オートーと呼ばれるようになったとしている。
(後略)



 何だかよくわかりませんが、オートーってことです。

 オートーは100g/果前後(大抵は100g弱だと思います)と温州みかんよりやや小ぶり程度の柑橘類です。オートーの果皮は滑らかで、果肉と密着状態を呈するものの剥きやすいです。果肉は半透明で、はじめは緑色を帯び、汚黄色にならないことや種子が小ぶりであることからカーブチーと区別がつきます。
 オートーのセールスポイントは豊富な果汁でジューシーな食感かもしれません。
 また味は、糖度の割には酸度(クエン酸含量)が多いため、酸味が強いと言えます。
 香りはカーブチーの様に特に優れたものは嗅ぎとれません。

 沖縄県の在来柑橘類として区別がつきにくいオートー、カーブチー、タロガヨですが、各果実特性を表1で示します。

表1:オートー、カーブチー、タロガヨの果実特性(比嘉:1994)

「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類Ⅰ)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.より抜粋


 オートーの収穫時期はカーブチーより、およそ一月遅く、11~12月に旬を迎えます(図1)


図1:平成17年 沖縄県中央卸売市場におけるオートーの月別入荷数量


 図1を見て気づいた方がいるかもしれませんが、実はオートーの市場入荷量はカーブチーと比較してかなり少ないことが伺えます。
 カーブチーの入荷量が11,903kgオートーの入荷量は1,782kgしかありません。

 実は沖縄県の在来柑橘類は、かつては県産果樹生産量の多くを占める品目でしたが、年々その地位は下がっています。

 昭和2年の沖縄県における果樹生産量を見ますと、オートーの生産量は292,500kgあり、これは沖縄県の果樹生産総量1,335,129kgの21.9%を占めていました(表2)。

表2:昭和初期の沖縄県産柑橘類の生産状況

「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類Ⅰ)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.より抜粋


 それが、昭和40年代に沖縄県に早生温州やタンカンが導入されたことにより、徐々にそれら経済性の高い柑橘類へと更新が行われていきました。

 昭和50年代初期まではオートー300t、カーブチー400t程度の収穫量を維持していた様ですが、徐々に栽培面積(統計的には結果樹面積)、生産量共に減少していきます(図2)。


図2:オートーとカーブチーの生産推移
園芸・工芸農作物市町村別統計書.沖縄総合事務局統計調査課.より抜粋・加工


 今や、産地である沖縄本島北部地域で地元消費用や果実狩り用にわずかに利用される希少な柑橘類となったオートーですが、この記事を読まれた方は記憶の片隅に止め、見かけることがありましたら話のタネに一度お求め下さい。

○参考資料
・「園芸学用語集 園芸作物名編」.1979.園芸学会(編).(株)養賢堂.
・「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類Ⅰ)」.1995.吉田俊雄・桑波田龍澤・伊藝安正.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.
・「原色版 花づくり庭づくり 沖縄園芸百科」.1985.(株)新報出版.
・「園芸・工芸農作物市町村別統計書」.沖縄総合事務局統計調査課.



あなたはだあれ? タロガヨ

2006年11月06日 | 柑橘類
 沖縄県の秋の味覚である在来柑橘類のタロガヨを紹介したいと思います(写真1)


写真1:タロガヨの果実


 タロガヨは、タルガヨ(タルガヨー)或いはマーサクニブー(美味しいミカンの意)とも呼ばれる沖縄県の在来柑橘類です。
 タロガヨという名称は、タルガヤラ(何かなぁ?の意)に由来すると言われています。
 これは、タロガヨが他のよりメジャーな在来柑橘類であるカーブチーでもない、オートーでもないことから「あなたはだあれ?」みたいな感じでタロガヨと呼ばれる様になったためです。
 タロガヨの扁平果はカーブチーに、扁球果はオートーに似ていますので、この名称は言い得て妙なのかもしれません。

 しかしタロガヨは、田中長三郎著「琉球の柑橘(琉球柑橘豫察報文)」によりますと、


(前略)
 本種もまた田中諭一郎氏により独立園生種と認められ、Citrus Tarogago Hort. ex Y, Tanaka として発表されたものである。(「日本柑橘図譜」第2巻422頁)
(中略)
 考説 完熟の標本を見ないから確なことは云えないが、葉翼の殆どない点、果端の凹入少く、凹環もなく、油胞の非常に細密な点、砂じょうが稍々細かく、全体平行網状をなす点、砂じょう尖端が往々2岐するものがある点、果肉は始めから稍々濃厚な点等、カブチーとオートーの中間型と称し難い個条が多々あり、独立種とする田中諭一郎氏の鑑定は当を得ていると思う。
(後略)



 と記載されています。
 タロガヨも柑橘類分類の大家から見ると、個性ある独立種と判断された様です。

 タロガヨは沖縄県においてもマイナーな柑橘類だと思います。
 沖縄県中央卸売市場の品目取扱情報が掲載されている「市場年報」にはカーブチー、オートーは独立して月別取扱数量等が掲載されていますが、タロガヨについては記載がありません。
 また、「特産果樹情報提供事業報告書 マンダリン類1」にはタロガヨについて、


(前略)
 タロガヨは、昭和30年代にカブチーの次に収穫される早生みかんとして普及が図られたが、カブチーに比べて特にすぐれた点がなかったこともあって殆ど普及しなかった。
(後略)



 と散々な評価が書かれています。

 とは言われるものの、タロガヨとカーブチーを食べ比べてみると、タロガヨの方が果実が大きい、タロガヨの方が果皮が薄いため可食部割合が多い、タロガヨの方が酸味が強く味が濃く感じる等、タロガヨにはタロガヨの良さがあると思います。

 タロガヨを持ち上げたり貶めたりと紆余曲折した感がありますが、その評価は皆様自信で判定していただくためにも、タロガヨをお見かけの際は是非ご賞味ください。

○参考資料
 ・「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類1)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.
 ・「琉球の柑橘(琉球柑橘豫察報文)」.田中長三郎.1957.琉球政府經濟局.
 ・「平成17年 市場年報」.2006.沖縄県中央卸売市場.

瑞々しく爽やかな香りの柑橘 カーブチー

2006年11月02日 | 柑橘類
 沖縄県で10~11月に美味しい果樹と言えば、沖縄県在来柑橘類のカーブチーが挙げられます。



 カーブチーの名称は園芸学会編集による「園芸学用語集 園芸作物名編」によれば「カブチー」ですが、現在沖縄県で口語的に使用されている通称は「カーブチー」ですので、ここでの記載はカーブチーとしたいと思います。

 カーブチーは果皮が厚いのが特徴で、「カー(皮の意)」、「ブチー(厚いの意)」に由来した名称の様です(写真1)。


写真1:カーブチーの果実


 カーブチーは、田中長三郎氏の分類によると、後生カンキツ亜属のミカン区のうちコミカン亜区・芳香類に分類されるケラジの一変種と位置づけられています。
 同じコミカン亜区・芳香類には、オートー、タロガヨと云った沖縄県の在来柑橘類が見られます。

 カーブチーは果皮が緑色のうちに収穫され食されます。
 果重は60g/果くらいですが、果皮が厚く、浮皮になりやすいことから果実の大きさに対して果肉歩合が低く、果皮を剥くと可食部が小さくて驚きます。
 カーブチーの魅力は、力強い香りと緑色の果皮からは想像できないは爽やかな甘味だと思います。

 特に香りについては、(株)オキネシアから販売されている「UTAKI」という香水の原料になる程ですから、一度は嗅いでみる価値があります。

 カーブチーは10・11月であれば那覇市内の果物屋さんや本島北部地域の道の駅、主産地である本部町を走る県道84号線沿いの露店等で入手できると思いますので、是非ご賞味ください。

○参考資料
 ・「平成17年 市場年報」.2006.沖縄県中央卸売市場.
 ・「園芸学用語集 園芸作物名編」.1979.園芸学会(編).(株)養賢堂.
 ・「花づくり・庭づくり 原色版 沖縄園芸百科」.1985.(株)新報出版.
 ・「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類1)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.

○参考サイト
 ・「琉球玉手箱オキネシア


葉上の大決戦 on シークヮーサー

2006年10月30日 | 柑橘類
 今回は果樹とは間接的なネタ「害虫と天敵昆虫」に関わる話題です。
 虫が嫌いな方はお読みにならない方が良いかもしれません。

 2006年10月中旬の某日。
 私はシークヮーサーの拠点産地である大宜味村にいました。
 10月のシークヮーサーと云えばまだ果皮色は緑色ですが、果実は太り、シークヮーサー特有の香りと酸味、果汁が豊かです。
この時期のシークヮーサーは、スダチの様に料理に搾りかけて使う「酢の物用果実」やジュース等の原料になる「加工用果実」として収穫されます(写真1)。


写真1:青切りシークヮーサー


 果実がたわわに実る樹には秋に芽吹いた新芽も見受けられます。
 そして新芽の中には、葉が展開する前に丸まった状態のものが見られます。

 犯人はアブラムシ(種未同定)でした(写真2)。


写真2:シークヮーサーに寄生していたアブラムシ


 シークヮーサーは8月末頃から11月末頃まで「酢の物用果実」「加工用果実」を収穫し続けるため、収穫期間を控えた時期から収穫期間中までは農薬を使用しないのが慣例となっています。
 そのため、夏や秋に芽吹いた新芽はアブラムシの格好の餌食となってしまいます。

 しかし、アブラムシの集団(コロニー)に迫り来る影がありました。
 テントウムシの幼虫です。
 テントウムシの幼虫は、アブラムシの群れの中に入るや否やもの凄い勢いでアブラムシを食べ始めました(写真3)。


写真3:アブラムシを捕食するテントウムシの幼虫


 アブラムシも逃げれば良いのに抵抗もせずに食べられるだけです。

 そこにアブラムシの用心棒のアリ(未同定)が登場!
 アリはアブラムシが出す甘い排泄物を好むため、アブラムシをを天敵等から庇護することが知られています。

 必死にテントウムシの幼虫を追い払おうとするアリ。
 アリの攻撃はうざったいけれどもアブラムシを食べ続けようとするテントウムシの幼虫。
 隣のアブラムシが食べられているのに、我関せずのアブラムシ。

 シークヮーサーの葉上は、さながら「昆虫大決戦」です。

 直接的な果樹の話題ではありませんでしたが、果樹園でおこった生き物ドラマを目にしたのでレポートしました。
 最後に、私が昆虫に詳しくないため登場する昆虫が未同定ばかりでは申し訳なく思い、テントウムシの幼虫は連れ帰り、飼育して羽化させ同定しました。

 ダンダラテントウになりました(写真4)。


写真4:ダンダラテントウの成虫


○参考文献
・「昆虫の図鑑 採集と標本の作り方」.2005.福田晴夫・山下秋厚・福田輝彦・江平憲治・二町一成・大坪修一・中峯浩司・塚田拓.南方新社.

マーコットの美味しい季節になりました

2006年02月26日 | 柑橘類
 昨日、沖縄本島北部の名護市にある「道の駅 許田」で「マーコット」という柑橘を購入しました。

 沖縄県の主要な柑橘と言えば、夏の「青切りみかん(温州みかん)」、秋の「シークヮーサー」、冬の「タンカン」ですが、それ以外の柑橘も少量ですが栽培されています。
 今回紹介するマーコットもその1つで、2月中旬頃から美味しさがのってくる晩生のタンゴール(みかんにオレンジを交配して育成された柑橘類の総称)の一品種です。



 マーコットの魅力は何といっても濃厚な味わいです。
 沖縄県産の柑橘は、爽やかな酸味やさっぱりした味わいが魅力のものが多く、強い甘味を特長としたものが少ない様に思われます。
 その中でマーコットは、2月中旬以降であれば糖度14度以上の濃厚な味わいになることから、個性的かつ魅力的な柑橘です。また、酸味、香り、果汁量も申し分なく、私が初めてマーコットを食べたときには「沖縄県でもこんな美味しい柑橘が作られているんだ」と感動したものです。

 しかし、沖縄県においてマーコットはメジャーな柑橘とは言えません。
 何故なら、沖縄県におけるマーコットは栽培面積、出荷量が極めて少ないため、売られている果実をほとんど目にしないからです。
 そもそもマーコットは、全国でも栽培面積22ha、出荷量317.3tしかないマイナーな柑橘です。



 何故、美味しいマーコットがメジャーになりきれなかったのでしょうか?

 マーコットが初めて日本に導入されたのは1954年(昭和29年)、沖縄県に導入されたのは、1976年(昭和51年)頃とされています。
 導入されてから間もないから普及が遅れているという訳ではなく、耐寒性が弱いため本土では栽培に施設が必要であり生産コストがかかること、隔年結果が強いため生産が安定しないこと、種子が多い・果皮が剥きにくい等の食味以外の嗜好的理由等が普及を妨げた原因と考えられます。

 私が購入したマーコットは、価格がタンカンの2倍程度でしたが、これも生産量が少ないからでしょう。
 そして、果皮が少し剥きにくいです。果梗部(ヘタ)側から剥くと剥きやすい様です。
 さらに種子が多い・・。温州みかんサイズの果実ですが、種子が15個以上入っているものもあります。
 確かに文句なしに広まる品種ではないかもしれません。

 でも、美味しいんです。

 そう思っているのは私だけではない様で、マーコットは最近注目を集めている様々な中晩生柑橘類の育種親として利用されています。
 「せとか」、「麗紅」等、マーコットの血を引く柑橘類が近い将来日本の食卓で人気者になるかもしれません。

 マーコットを見かけることがあれば、一度は話のタネに食べてみてください。

○参考資料
 ・「話題の柑橘100品種」.松本亮司・喜多景治・向井武・大和田厚.1997.愛媛青果農業協同組合連合会.
 ・「中晩生柑橘の特性調査 ~その2.早香、不知火、マーコットの発育特性~」.伊藝安正・新崎正信.1995.平成6年度 専門技術員現地調査研究推進事業報告書;p.40-47.沖縄県農林水産部営農推進課
 ・「平成15年産 特産果樹生産動態等調査」.2005.農林水産省果樹花き課.
 ・「注目される中晩生カンキツの品種と栽培方法」.嵩原利雄.2006.果実日本;2006年3月号;p.18-23.日本園芸農業協同組合連合会.

今年のタンカンは甘くて豊作

2006年01月29日 | 柑橘類


 タンカンは沖縄県における冬の定番柑橘類です。
 タンカンは、中国広東省の原産でポンカンとスイートオレンジの自然雑種といわれるタンゴール(tangor)の1種に分類されています。
 タンカンは漢字では、桶柑と書きます。
 これは、タンカンは中国広東省で、タンカンは木の桶に入れて貯蔵されていたため、又は桶に入れて売られていたため、と言われています。
 今でも中国南部、台湾は、タンカンの主要産地です。

 国内におけるタンカンの生産状況は、栽培面積、生産量ともに鹿児島県、沖縄県が郡を抜いて多く特産果樹となっています。
 沖縄県では昭和40年代初頭に本格的な栽培が始まり、現在では、夏季の早生ウンシュウに対し、冬季のタンカンとして沖縄県の代表的な柑橘の一つとなっています。

 そんなタンカンですが、沖縄県内で生産量が多いのは沖縄本島北部です。
 その中でも本部町の伊豆味と云う集落では、毎年「タンカン狩り」が催され、休日を中心に賑わっています。
 今年の「タンカン狩り」は1月7日から開始され、3月初旬までの期間を見込んでいる様です(琉球新報.06/01/13)。

 今期のタンカンは、昨年の夏・秋に沖縄本島は台風被害が軽微であったこと等を受け豊作で味も良いとのことです。
入園料は小学生以上は250円、幼児団体は200円。
 果実は250円/kgで持ち帰ることができるそうです。
 お問い合わせは、伊豆味みかんの里総合案内所(0980-47-2889)とのこと。

 と云うことで、私も1月28日(土)に伊豆味にタンカン狩りに行ってきました。
 名護市から本部町伊豆味の集落に続く県道84号名護本部線沿いには「タンカン狩り」と書かれた看板が数多くあり、案内所を通さず直接園地を訪れても良い様です。
 ほ場で園主の方から収穫用のビニール袋をいただき、指定されたほ場で好きな果実がもぎ取れます。ハサミを使うのかと思っていたら、「手でもぎ取って下さい」とのこと。素人が下手に枝を切ると剪定しにくくなるからでしょう。
 果皮色がしっかりオレンジ色になっていて、果梗部(ヘタの部分)に放射状のシワが出ているものが熟度十分で美味しそうだったので、そういうのをしっかり選んで収穫します。
 果実は力まかせに引っ張ると果梗部の果皮が破れてしまうことがあるので、果実をねじり切る様にもぐと綺麗に果実が取れます。
 園内で試食しまくった感想としては、例年2月以降が美味しくなるタンカンですが、今年は1月末から十分美味しく、「当たり年」の様な気がします。
 まだ、やや収穫には早いかな?と云う果実も多かったので、記事にあるとおり3月上旬までは、タンカン狩りが楽しめそうです。

 「タンカン狩り」と一緒に「第28回 本部八重岳桜まつり」で日本一早い桜の開花を楽しんできました。

○参考文献
 ・「第2次改訂追補 果樹園芸大辞典」.佐藤公一ら.1986(第2次改訂追補後の第6版).(株)養賢堂.
 ・「常緑果樹の栽培」.1998.宮古農業改良普及センター.
 ・「原色版 花づくり 庭づくり 沖縄園芸百科」.1985.(株)新報出版.
 ・「平成14年産 特産果樹生産動態等調査」.2004.農林水産省生産局果樹花き課.
 ・「果樹栽培要領」.2003.沖縄県農林水産部.