熱帯果樹写真館ブログ

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オートーは「黄橙?」or「青唐?」

2006年12月07日 | 柑橘類
 沖縄県に晩秋を告げる在来柑橘類オートーの紹介をしたいと思います(写真1)。


写真1:オートーの果実


 オートーは、田中長三郎氏の分類によると後生柑橘亜属のミカン区、コミカン亜区、芳香類に分類されるマンダリンの1種です。
 つまり、オートーは以前に紹介したカーブチータロガヨと同じグループの柑橘類とされています。
 学名はオートーという標準和名に因み、Citrus oto hort. ex Y.tanaka です。

 しかし、学名の基となったオートーという名称の由来ははっきりしていません。
 伊藝(1995)は、オートーの名称の由来について、以下の様に記しています。


(前略)
 田中諭一郎氏(昭和23年)は、「オートーの名称は黄橙の意で、果色よりその名を得」としている。一方、新城正徳(昭和26年)はオートーは青くても食べられる意で、名称のオートーは、青唐九年母の九年母が打ち切れて、青唐になまり、オートーと呼ばれるようになったとしている。
(後略)



 何だかよくわかりませんが、オートーってことです。

 オートーは100g/果前後(大抵は100g弱だと思います)と温州みかんよりやや小ぶり程度の柑橘類です。オートーの果皮は滑らかで、果肉と密着状態を呈するものの剥きやすいです。果肉は半透明で、はじめは緑色を帯び、汚黄色にならないことや種子が小ぶりであることからカーブチーと区別がつきます。
 オートーのセールスポイントは豊富な果汁でジューシーな食感かもしれません。
 また味は、糖度の割には酸度(クエン酸含量)が多いため、酸味が強いと言えます。
 香りはカーブチーの様に特に優れたものは嗅ぎとれません。

 沖縄県の在来柑橘類として区別がつきにくいオートー、カーブチー、タロガヨですが、各果実特性を表1で示します。

表1:オートー、カーブチー、タロガヨの果実特性(比嘉:1994)

「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類Ⅰ)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.より抜粋


 オートーの収穫時期はカーブチーより、およそ一月遅く、11~12月に旬を迎えます(図1)


図1:平成17年 沖縄県中央卸売市場におけるオートーの月別入荷数量


 図1を見て気づいた方がいるかもしれませんが、実はオートーの市場入荷量はカーブチーと比較してかなり少ないことが伺えます。
 カーブチーの入荷量が11,903kgオートーの入荷量は1,782kgしかありません。

 実は沖縄県の在来柑橘類は、かつては県産果樹生産量の多くを占める品目でしたが、年々その地位は下がっています。

 昭和2年の沖縄県における果樹生産量を見ますと、オートーの生産量は292,500kgあり、これは沖縄県の果樹生産総量1,335,129kgの21.9%を占めていました(表2)。

表2:昭和初期の沖縄県産柑橘類の生産状況

「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類Ⅰ)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.より抜粋


 それが、昭和40年代に沖縄県に早生温州やタンカンが導入されたことにより、徐々にそれら経済性の高い柑橘類へと更新が行われていきました。

 昭和50年代初期まではオートー300t、カーブチー400t程度の収穫量を維持していた様ですが、徐々に栽培面積(統計的には結果樹面積)、生産量共に減少していきます(図2)。


図2:オートーとカーブチーの生産推移
園芸・工芸農作物市町村別統計書.沖縄総合事務局統計調査課.より抜粋・加工


 今や、産地である沖縄本島北部地域で地元消費用や果実狩り用にわずかに利用される希少な柑橘類となったオートーですが、この記事を読まれた方は記憶の片隅に止め、見かけることがありましたら話のタネに一度お求め下さい。

○参考資料
・「園芸学用語集 園芸作物名編」.1979.園芸学会(編).(株)養賢堂.
・「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類Ⅰ)」.1995.吉田俊雄・桑波田龍澤・伊藝安正.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.
・「原色版 花づくり庭づくり 沖縄園芸百科」.1985.(株)新報出版.
・「園芸・工芸農作物市町村別統計書」.沖縄総合事務局統計調査課.



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