訓練場返還、思い複雑=周辺住民「空も返して」―沖縄・東村
時事通信 10月23日(日)14時40分配信
政府が年内の一部返還を目指している米軍北部訓練場(沖縄県東村など)。
国立公園への追加指定や世界自然遺産登録に大きな弾みとなるが、返還の条件であるヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事をめぐり、反対派住民らと機動隊員とのもみ合いが続いている。移設先周辺の集落では、騒音など生活環境の悪化を懸念する声も上がる。
「森を壊すな」「工事は許さないぞ」。21日早朝、東村高江の北部訓練場ゲート前。ヘリパッド建設現場に工事車両が進入すると、反対する住民らが抗議の声を上げた。この日午前に入った車両は約60台。住民らは週2回、300人規模でゲート前に座り込み、車両の進入を阻止する。
ゲート前では連日、県外から派遣された機動隊員らと住民側とのもみ合いが続く。18日には、大阪府警の機動隊員が住民に対し「土人」などと発言。8月には、現場で取材をしていた地元2紙の記者が警察に強制排除され、両紙とも「報道の自由の侵害だ」との抗議声明を発表した。
「なんで現場ばかりが頑張らないといけないのかね」。高江に住む自営業の石原理絵さん(52)はため息をつく。ヘリパッドを離着陸する米輸送機MV22オスプレイが、低空で何度も自宅の真上を飛ぶ姿に「衝撃を受ける」という。
米軍が2012年に発表した環境レビューは、新設されたヘリパッドでのオスプレイ訓練を年間約2520回と想定している。移設前の約2倍に当たり、石原さんは「生活環境の悪化は目に見えている」と顔をしかめる。
今月8日、菅義偉官房長官が沖縄を訪れ、年内返還を目指す方針を明言して以来、「すごく焦っている」と話す。「地面だけ返ってきても、オスプレイはその上を飛ぶ。空も返してほしい」と訴える。
ゲート前の抗議に参加することもあるが、日々の生活もあり毎日は通えない。「現場はこれ以上ないぐらい頑張っている。政治が動かないと(建設阻止は)間に合わないよ」とつぶやいた。