百貨店も?“百円ショップ”続々出店のワケ
2018年5月30日 19時15分
日テレNEWS24
生活用品から食品まで様々な商品がそろう“100円ショップ”。今年度も過去最高水準で新規出店が続いている。「これまでなかったアイテム」がコンセプトの100円ショップから、100円ショップの商品でオリジナルのインテリアなどを生み出すクリエーターまで、人気の背景を取材した。
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◆「百貨店」と「100円ショップ」?
高知市内の中心部にある、70年以上の歴史を誇る百貨店「高知大丸」では、急ピッチである準備が行われていた。来月15日からフロア丸ごと1階分に100円ショップが出店するという。「百貨店」と「100円ショップ」、同じ「百」でも縁遠い存在に思えるが──
小島尚取締役「100円ショップというのは百貨店のお客さまにどうなんだという話もあると思うが、(客層の)二極化の中で、富裕層を狙う部分と、低価格のお客さまを狙っていく」
百貨店には高級で気軽に足を踏み入れづらいイメージがあり、近頃は赤字フロアが出るなど、苦戦気味。幅広いターゲットを取り込むため、100円ショップに目をつけたのだ。
百貨店のお客さんは──
お客さん「デパート見て、高級品を見ておいて、いるものがあれば100円ショップ寄って帰ろうかな」
百貨店側は、100円ショップによる相乗効果でフロアの黒字転換を見込んでいるという。
◆“100円ショップ”勢いを支えているのは…
全国各地で新規出店が相次ぐ100円ショップ。昨年度、国内大手4社、『ダイソー』『キャンドゥ』『セリア』『ワッツ』の新規出店数は約530店舗だったが、今年度はそれを上回る出店計画があり、店舗数は大手4社あわせて7000を超える見込みとなっている。
100円ショップの勢いを支えているのは、その安さと豊富な品ぞろえ。“従来にないアイテム”をコンセプトに店舗数を伸ばしている100円ショップ『FLET’S 千里丘店』には、なんと冷凍食品も。
まもなく梅雨や夏を迎える中、この時期の売れ筋商品ベスト3を聞いてみた。
3位は「使い捨てくつカバー(3足組)」。靴の上からかぶせるだけで、雨の水はねやどろ汚れを防ぐことができる。2位は弁当箱の中に入れる「抗菌シート」。ごはんやおかずの上にのせて使う。そして第1位は、「虫除けシール」。
内藤幸典店長「これから虫がたくさん寄ってくる季節でもありますので」
このように実用的な商品が売れている一方で、デザインのかわいらしさも求められているという。
内藤幸典店長「かわいらしいの、いわゆるインスタ映えじゃないですけど、そういったもの、お客さんに求められてるのかなと感じる」
◆“100円ショップDIY”でオリジナルアイテム作製
笑顔で迎えてくれた女性は、100円ショップDIYクリエーターの網田真希さん。100円ショップの商品で作ったアイテムなどをSNSにアップしていて、そのフォロワー数は1万2000人以上。今回、手軽で簡単な便利アイテムを作ってもらった。
網田真希さん「ちっちゃなまな板を使って、なべ敷き、プラス、メモを置いておけるようなものを作ります」
用意したのは
・まな板
・超強力マグネット
・マグネットクリップ
・ガラスタイル×2
・包装紙
材料費は全部で600円(税別・接着剤は除く)。
まずはなべ敷きになる部分に接着剤を使ってタイルを敷き詰める。しばらく乾かしたら、好きなデザインの包装紙を切り、メモになる裏面に貼り付けていく。
ここでポイントとなるのが、「ボンドと水で“デコパージュ液”を作ること」だという。デコパージュ液とは、薄い紙などを貼り付ける際に便利な接着剤。100円ショップでも買えるが、家にある木工用接着剤と水だけで作ることもできる。
最後に両面テープでマグネットとクリップをつければ、完成!普段はメモを挟んでおくことができ、クリップを外して裏返せばなべ敷きとして使える。
網田真希さん「失敗しても100円なので、ちょっと諦めがつくじゃないですか。なので、どんどん作ってほしいですね」
拡大を続ける100円ショップ。今後もあらゆる場面で活躍が期待できそうだ。
<経済部の石川真史記者が解説>
◆こうしたお店が増え続けている理由は?
最近は、100円だけでなく300円ショップも増えてきている。代表格の『スリーコインズ』は、主に20代~30代の女性を意識した商品展開で、アクセサリーを充実させている。店舗数はこの5年で2倍ほどに増えたという。
増え続けている理由の一つとしては、やはり消費者の節約志向がある。日銀の調査によると、物価を去年と比べたところ、7割以上の人が「上がったと思う」と答えた。こうした中、お得感がある100円ショップなどに人気が集まっている。
◆「ステルス値上げ」とは…
さらに値段をめぐっては、「ステルス値上げ」という言葉がある。「ステルス戦闘機」はレーダーに映りにくい戦闘機という意味で使われるが、「ステルス値上げ」はまさに、一目では気づきにくい値上げ。
例えば、お菓子やチーズ、日用品などで、値段が変わらなくても中身の量が減ってきている。メーカーは、原料価格などが上がり企業努力では吸収できなくなったなどとしていて、実質的には値上げと同じことが起きている。
ある研究機関が全国のスーパー1200店舗を調べたところ、商品の店頭価格はこの4年間の平均でほぼ横ばいだが、中身の個数や量が減って、実質3.5%の「ステルス値上げ」があったという。
消費者は、こうした実質的な値上げを敏感に感じ取って、節約志向が続いているとみられる。100円ショップの拡大は、価格競争にもつながり消費者にとってプラス。ただ、価格競争が行き過ぎると企業は疲弊して給料も伸びずマイナス。
値上げをするときは商品に付加価値をつけるなど、企業側の努力も期待したい。