宮城さんは、沖縄経済界の重鎮のお一人で、ある方によると現在の儀間真常だと言う。儀間さんは中国から琉球に芋をもたらした産業貢献偉人のお一人。
この間、大学での講義と劇場通い、リサーチと論文執筆や批評、海外9か国を含む研究発表などに取り組んできたので、宮城弘岩さんについて、紙面で論評を読み、こんな凄い沖縄経済のリーダーが実在するのだと、認識しているだけだった。
しかし、あるご縁で、真喜志康忠生誕100年(13回忌)記念公演実行委員長を引き受けて下さった。
真喜志康忠さんは、100年に一人の沖縄を代表する名優で、かつ24作以上の戯曲(沖縄芝居)を創作し、ときわ座の座長を30年ほど担っていた方だ。その康忠さんの30年前の芸道60周年記念公演は、沖縄芝居実験劇場が中心になって取り組み、沖縄のシェイクスピア『オセロー』バージョンの『按司と美女』が上演された。感銘を受け、日本演劇学会で発表したのだった。
その時の黄色い表紙の素敵なパンフレットの公演実行委員のメンバーの中に、宮城弘岩の名前を見た時、「ああ、やっぱりご縁があったのだ」と嬉しくなった。パンフには芸能研究者ら演劇評論家の写真付きのエッセイが並んでいる。
と前置きが長くなったが、つい先日、宮城さんの最新の書籍を氏をメンターとしてご教示を受けている方からいただいて、さっそく台風の最中に読んだ。普段熱心に読まない経済や観光の専門書だが、興味深く読み終えた。
沖縄県の21世紀ビジョンの問題の指摘など、所得の上がらない沖縄のザル経済の欠陥を指摘している。大学でも一時目玉に据えられた観光学の盲点を含め、新たな視点、提言がなされている。
日本政府の農業政策の光と闇も見据え、何処に欠陥があり、どこに可能性があるのか、台湾、香港、シンガポール、ハワイ、アメリカ、オランダ、イスラエル、中国、バリ島の過去と現状も比較検証している。
具体的な実践、都市型植物工場をすでに取り組む中で、究極の沖縄農業は、日本をモデルにしない先端技術開発、加工貿易型農業だと明言している。
衰退するハワイに対するバリ島の成功事例が、都市化と地域の農業、文化とコミュニティの連帯と観光だと分析している。
オランダやイスラエルの成功事例など、現地に飛んで修得した見識が存分に生かされまとめられている。
関心のある文化への言及は多くはないが、「都会に文明はあるが自分を映すことは出来ない。文化なら自分を映すことが出来る。文化をベースに自分が映せる。これが観光だ。」などの魅惑的な文面に出合った。
観光、健康、環境と農業の関わり、その根っこに文化を見据えている方だ。
宮城さんの新著は目から鱗で手に取って読まれる皆さんに実践的インスピレーションの糧になるに違いない。