志情(しなさき)の海へ

かなたとこなた、どこにいてもつながりあう21世紀!世界は劇場、この島も心も劇場!貴方も私も劇場の主人公!

第43回山之口貘賞「Aサインバー」を今日購入して読んだ!哀愁のようなものがジワーッと染み込んできた!

2021-12-25 23:37:31 | 詩、詩集
選考員の皆さんの講評を紙面で読んで、早く読みたいと思いつつ、詩集を手にしたのは今日になった。久しぶりに「ツタヤ」に行って宮崎駿論の論文の中身を吟味するために、まだ見ていなかった「崖の上のポニョ」や前に一度は映画館で観たけれどまた確認したい「風の谷のナウシカ」、他にカタストロフィcatastropheやアポカリプスapocalypseをテーマにした論稿のための「はだしのゲン」のアニメなどをレンタルするために立ち寄ったのが、ツタヤだ。書店とCDやDVDのレンタルを兼ねているので、DVDをレンタルした後書店を見回して、衝動買いのように『Aサインバー』や『海をあげる』を手に取り、そして『スマホ脳』や『デジタル・ファシズム』や『独学大全』なども買ってしまった。まだ若者と思える近しい者へのプレゼントのつもりもあって~。

そして1時間前に『Aサインバー』を読んだ。以倉紘平さんや高橋順子さんの講評のように柔らかなことばで母と時代への鎮魂歌になっていること、幼少期の原風景が抑制された詩語で綴られ、詩集全体が、物語を編んでいることに驚いた。哀愁、ペーソスのような記憶や悼みと生きる喜びが編み込まれている柔らかいタッチの詩篇に、従来の沖縄の現代詩にない素の魅力を感じた。

A サインバーについて書かれた詩がないわけではない。小説にも論文にも取り上げられている。しかし彼女の詩の中では、早くに連れ合いを失った6人の子持ちの母親が昼は畑仕事、夜はAサインバーで商いをする姿である。その母親と共に長女の彼女はAサインバーに行った経験があったのだ。ペイデーの時の羽振りのいい米兵に虎柄の革ジャンや絹のネッカチーフやチューインガムを売ったのである。高く売れた商いで喜ぶ笑顔が見えてきた。戦後の貧しかった沖縄の風景。別天地の米軍基地や、彼らがばらまくお金で潤った時代。

時代の世相は多様だ。生きる喜びも悲しみも日常の些細なところに散りばめられている。マクロにもミクロにも語り得る物語だが~、一つの時代を語るにも百の、千の物語がありえる。

詩は暗示させる不思議なメタファーに包まれている。強いて詳細を書き込む必要はそこにはないのだと、納得させられる。

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1426770.html
沖縄を代表する詩人・山之口貘(1903~63年)の文学を受け継ぐ詩作品や詩活動を表彰する、第43回山之口貘賞(主催・琉球新報社、後援・山之口貘記念会、南海日日新聞社)の選考会がこのほど那覇市内で開かれ、長嶺幸子さん(71)=糸満市=の詩集「Aサインバー」(詩遊社)が受賞作に選ばれた。贈呈式は2月上旬に那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催を予定している。 
 新型コロナウイルスの影響で2020年度の選考会は延期したため、今回は、20年度と21年度の2年間に発刊された詩集を対象とした。応募詩集は2年間で計14冊。受賞作は長嶺さんの故郷・糸満の原風景や家族の絆、地域の人々との交流などを題材とした25編を収録している。

 選考委員は、以倉紘平氏(詩人、H氏賞、現代詩人賞受賞)と高橋順子氏(詩人、読売文学賞、藤村記念歴程賞、三好達治賞受賞)、市原千佳子氏(詩人、丸山豊記念現代詩賞、山之口貘賞受賞)。受賞作について選考委員は「母と時代への鎮魂歌。抑制の利いた文体。こんな美しい記憶を謳(うた)った詩集はまたとない」(以倉氏)、「糸満の原風景、人の営みのいとおしさに胸を打たれる。心が洗われるようです」(高橋氏)、「幼少期の原体験や原風景で輝く海馬から溢(あふ)れる母の子への慈しみ。子の海馬に抱かれる幸せ」(市原氏)と評価した。
長嶺幸子さん

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。