2時間の車旅。ものすごい坂道と急カーブをまるでパリダカに参加しているのではないかと錯覚してしまうほどの猛スピードで車は進んでいく。演奏者の一人は途中、車酔いで嘔吐し、ほとんどのメンバーの顔はB級映画に出てくる幽霊(キョンシー)のように青ざめていく。ハンドルを大きく右、左にきるごとに片方の車輪が空中に浮かぶような感覚を覚え、そのたびごとに数台の楽器のキーがぶつかり、気まぐれに不協和音を発するどこかで聞いたような現代音楽を奏でる。誰も言葉を発さず、ただグンデル・ワヤンの少々のびたミュージックテープの音だけが車内に反響する……。そんな車の中にいるにもかかわらず、不思議とその音楽が耳につくのだ。青ざめた演奏者の達の指は、車のシートを握りながらもかすかにテープに合わせて指を動かしている。無意識の演奏行為。(9月2日、デンパサールで記す)
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