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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

桜の樹の下で

2009年07月24日 | 
 『桜の樹の下で』と書くと渡部淳一の母娘が同じ男性を愛してしまった小説になってしまい、たぶん作家の名前か、同名の映画を思い浮かべてしまうだろうが、今日のブログはそんな恋愛の話とは程遠い。さらに梶井基次郎『桜の樹の下には』を思い浮かべる人は、かなりマニアな小説好きで「桜の樹の下には何が埋まっているのだろう?」なんて考え始めると今日の話にはついていけなくなる。
 私は先週の日曜日、その「桜の樹の下で」ヤシ油のランプを使ってワヤンを上演するはずだったのである。青々と葉の茂った桜の樹々は、淡いピンクで満開になった桜に負けずおとらず美しい。夜にはヤシ油の炎に照らされてそんな木々の枝ぶりや葉の形がシルエットのようにのぞめるはずだったのだ。しかし雨が降って、私はこの舞台で上演することなく小玉川を後にした。
 帰る日の朝は雨もあがり曇り空。私は早起きしてぶらり歩いて宿からこの舞台に向かった。まだ朝6時過ぎで周りには誰もいない。少しの間、村の人々がこの上演のために築いてくれた何も置かれていないまっさらな舞台をボーっと眺める。するとそんな舞台の上にはちゃんとスクリーンやガムランやそれを取り巻く人々が見えてくる。賑やかなガムランの音や私自身の「聞きなれない声」や観客のざわめきまで耳に届くのだ。桜の樹の下には、そんな不思議な感性を呼び起こす力が渦巻いているのだろう。私はそのときやっと何かをやりとげたような爽快感に満ち足りて、あらゆる拘束から解き離たれたような開放感を味わうことができたのだ。すべてはあの桜の樹の下での不思議な出来事。


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