ワヤンの素材は牛の皮からできています、といってもなかなか実感できないと思います。昨日、バリに数件しかない牛の皮からワヤンやバロン、舞踊の衣装などにつかう皮を実際に作っている場所にお伺いして、いろいろな話を聞き、記録をとりました。長いことワヤンを勉強し、また自分でワヤンを制作してきたにもかかわらず、こういう専門職の現場に足を運んだことはありませんでした。
まず、その匂いが強烈です。牛の皮ですし、わずかな肉もそぎ落としたものですがやはり生臭いのは仕方がありません。またその匂いは、牛のさまざまな状況(されたものか、すでに死んでしまった牛のものか)によりかなり異なるようです。 晴れた日であれば三日乾かして、4、5時間で両面をきれいにそぎ落とし製品にするそうです。
クンダンに使う皮、ワヤンに使う皮など、それぞれ牛の大きさの違いもあり、なかなか面白いお話がうかがえました。そぎ落とすには写真のようなパティルpatilとよばれる道具を用います。機械を使わずすべて手作業。話を聞いていて思ったのは、自分たちが伝統的な方法で作り出す皮がいかに良質で、ジャワで作られている物と異なるかが常に強調されていたことです。職人はやはりこうでなくてはいけませんね。自分たちも芸術にかかわる大事な仕事をしているという自信にみなぎっていたことが印象的でした。