院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

「糟糠の妻」が絶滅した

2008-11-01 08:24:32 | Weblog
 昭和30年代の話が続いて恐縮だが、もう少しおつきあい願いたい。また、食い物の話が好きなので、それもお許しを。

 私のひい婆さんは糠漬けの名人と近所で言われていた。毎日、糠床を整えていた。そして、夏はどのくらいの時間漬ければよいか、冬はどうするかといったことを勘で知り抜いていて、絶妙のタイミングで漬物を糠床から取り出した。

 糠漬けは早いとナマ漬け、遅いと古漬け。塩加減が悪くてもダメな、きわめて神経質な料理なのである。

 昔から「糟糠(そうこう)の妻」と言い、長年連れ添った良妻の代名詞だった。「糟糠の妻」とは、毎日糠床を手入れして、本人が糠みそ臭くなってしまったような妻である。

 私が幼いころの糠漬けは本当においしく、どこでも食べられた。それが10年後には食べられなくなってしまい、現在では高級料亭でしか食べられないのではないか?

 第一、糠床のある家がなくなってしまった。うちにもない。糠漬けは非常に手のかかるものである。また匂いがよくない。マンションでは糠床を持つのは不可能だろう。

 こうして「糟糠の妻」という言葉は死語になった。それに匹敵するような妻たちは沢山いるだろうが、なにせ糠床がなくなってしまった。

 私は老後の楽しみに糠漬けを復活させようと、今から構想を練っている。