ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

金銭感覚

2023年12月11日 | 日記

 まだサラリーマンになりたての頃、会社の近くに住んでいた同僚から、アルバイトの学生たちと自分の家で飲み会をするからお前も来い、と誘われた。面倒なので断ると、総務部で日ごろアルバイトや派遣社員の困り事処理に当たっているお前が来なきゃダメでしょう、と周囲に聞こえるような大声で言うので仕方なくついて行った。

ところが、食材を買いにコンビニへ入ると、そいつは声を潜めて僕に言った、「コンビニで2千円以上買い物をする女の子とは結婚したくないよな。」

店のほとんど斜め向かいに中型スーパーがあった。

誰が聞いているかわからないので返答せず受け流したのだが、その言葉は妙に頭に残った。

のちに娘にも、昔そんなことを言っていた同僚がいたよと話したが、私はないから大丈夫だよ、と一笑に付されている。

 コロナ禍の中で、ある日突然、自室と事務所以外立ち入り禁止になってしまったことがある。

あわてて買い物リストを書き、当座の食料を近くのコンビニへ買い出しに行った。

「1880円になります。」

お、かろうじて限度内だったな、危ね~、と胸をなでおろしたあとで、こんな非常事態にもかかわらず、元同僚の一言にこだわっている自分が可笑しかった。

三日後、やや気持ちが落ち着いた僕はエコバッグと、前回の買い物リストを持ってスーパーへ出かけた。

商品をあわあわなりながらなんとかセルフレジへ通すと「合計1360円」と画面に表示された。あれ、何か買い忘れたっけ?

店を出た後にレシートを確認したが、点数は前回と同じだった。

あの元同僚は、はたして堅実なパートナーを見つけることができただろうか。

 

 

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インタビュアー

2023年12月08日 | なごやか

 NPO法人なごやかの理事長が珍しく東日本大震災以降の活動状況に関するインタビューに応じることになった。

相手は県都センダード市の研究機関職員で、法人のHPを見て理事長へ直にコンタクトを取ってきたのだそうだ。

 コーヒーを出す際にちらりと見ただけだが、事務室のソファに端然と座った理事長はいつも以上に落ち着いているように見えた。

実際、質問に対して簡潔かつ丁寧に答えている。

インタビュアーもソファに浅く腰掛け、理事長の返答から見事なほどの間合いを取って次の質問を投げかけている。

真紅のセーターにツイードのパンツの彼女は、非常に顔の輪郭が濃く、深いまなざしをしていた。

 終了後、インタビュアーとカメラマンを送り出した理事長は、額にうっすらと汗を浮かべていた。

長時間、真摯に対応されてお疲れになったのでは、と声を掛けると、彼はネクタイを緩めながら頭を振った。

いいや、質問へそれなりに答えるたび、相手はそうですね、と品の良い声で相槌を打つのだけれど、そのアーモンドアイがね、まったく違うことを語っているんだ。

もっと本当のことを言え、心の奥底を話してしまえ、と訴えかけてきて、頭の芯がしびれ始めた。

彼女はショートボブのメドゥーサだ。本当に恐ろしかった。

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「上流社会」

2023年12月04日 | ハリウッド

 

  ハイ・ソサエティ・カリプソ

  (作詞作曲コール・ポーター)

 

空からの眺めはとっても素敵

オイラはロード・アイランド州ニューポートへと向かってる

オイラこれまで長いこといろんな場所で演奏してきたけどさ

今からニューヨークっ子になろうってわけ

 

ハイ、ハイソ

ハイソ、上流社会

 

昔からの親友のために演奏してやりたいんだ

そいつは地元でジャズフェスティバルを開くんだって

名前はデクスター、いいヤツだよ

けどさ、聞くところによると、そいつ何やらブルーらしい

 

ハイ、ハイソ

ハイソ、上流社会

 

そいつを悲しませている、前の奥さん

明日から新生活を始めようとしてる

彼女ったら最近新しいロマンスに出会って

あさはかにも堅物と結婚しようとしてるんだって

 

ハイ、ハイソ

ハイソ、上流社会

堅物とはよく言ったもんだ

ハイ、ハイソ

ハイソ、上流社会

 

けどさ、親友デクスター、このサッチモを信じてくれ

結婚はご破算、最後は勝利だ

オイラがトランペットを吹いて、愉快にする

彼女がきみの元へと戻ってきたくなるように、楽しくするよ

 

ハイ、ハイソ

ハイソ、上流社会

 

サッチモおじさんのお話、わかってくれた?

素敵な上流社会でスイングしてる

歌はおしまい、

物語のはじまりだ

 

 ミュージカル映画「上流社会」(1956年)は、グレイハウンド・バスに乗って物語の舞台へと向かっているルイ・アームストロングの楽しい歌で始まる。

もともとこの作品は1940年に作られた傑作ロマンティック・コメディ「フィラデルフィア物語」のリメイクで、キャサリン・ヘップバーンのためにあて書きされたキャラクターを引退直前のグレース・ケリーが、その年のアカデミー主演男優賞に輝いたジェームズ・スチュアートのキャラクターをフランク・シナトラが、それぞれ演じている。

こう一つ書いただけで非常に不利なのだが、この「上流社会」はなんというか、僕には古過ぎて。

唯一、オープニングでサッチモに物語の背景とこれからの進行を歌わせる趣向だけが面白かった。いや、シナトラの相棒のカメラマンを演じたセレステ・ホルムもいいので、もし機会があれば、注目していただきたい。

 

「フィラデルフィア物語」(1940年)。手足がひょろひょろ長いスチュアートがとにかくチャーミング。

 

「上流社会」より、同じシーン。

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