
北京で開かれていた6か国協議で13日に採択された共同文書について、北朝鮮が同日、自らに都合のいい一方的な解釈を打ち出し、早くも履行に暗雲が差している。
共同文書は、北朝鮮が核放棄に向けた措置を取らない限り、大量なエネルギー支援を得られない仕組みになっているが、
北朝鮮は核施設を「臨時」に停止しただけで100万トン供与の合意を取り付けたと主張しているためだ。北朝鮮が支援規模に文句をつけ、合意を履行しないための布石でないかとの見方が出ている。
共同文書は、北朝鮮が核放棄に向けて取るべき措置を2段階にわけ、〈1〉60日以内に核施設の活動停止・封印と、国際原子力機関(IAEA)による監視・検証を受け入れれば、他の国は重油5万トンを支援〈2〉さらに核計画を完全に申告し全施設を使用不能にすれば、最大95万トンを支援する――としている。
だが、朝鮮中央通信は合意数時間後の13日夜、「協議で各国は、(北)朝鮮の核施設の稼働臨時中止に関連して、重油100万トン相当の経済・エネルギー支援を提供することにした」と伝えた。
これについて米国首席代表のクリストファー・ヒル国務次官補は14日、北京のホテルで記者団に、「北朝鮮のメディアは十分な情報を得ていないことがあるが、北朝鮮の代表団は合意内容を十分理解している。あまり心配していない」と述べ、北朝鮮側は核施設の停止を解体に向けた措置と承知しているとの見方を強調した。
だが、韓国・西江大の金英秀(キム・ヨンス)教授は、〈1〉別の解釈を持ち出すことで合意の拘束力を弱める〈2〉履行にはさらに討議が必要であると米国に思わせる〈3〉北朝鮮上層部に対し有利な合意であるかのように宣伝する――との意図があると分析。「北朝鮮が合意をそのまま履行する見込みは薄い」と見る。
この背景には、今回の協議で議長国・中国が最初に出した草案と、採択された文書で、文言に違いがある点がある。草案では「第1段階で5万トン、第2段階で95万トン」と完全に区別がつけられていたが、北朝鮮が受け入れを拒否。このため最終的には、「第1段階で5万トン、第1段階と第2段階で計100万トン」と表記された。北朝鮮はこの点を突いて意図的に曲解しているわけだ。
北朝鮮は2005年9月の6か国協議で共同声明が採択された際も、核放棄後を想定して盛り込まれた「軽水炉の提供問題」という文言について、「軽水炉提供が核拡散防止条約(NPT)復帰の条件」と独自の解釈を翌日に表明している“前歴”がある。
(読売新聞)
核兵器は別問題=北朝鮮筋
タス通信によると、6カ国協議に近い北朝鮮筋は13日、核兵器は同協議で採択される合意文書とは「別問題」だと述べた。北朝鮮は既に、核保有を宣言している。
(時事通信)
「とても悪い合意」ボルトン氏が6か国協議批判

ジョン・ボルトン前米国連大使は12日、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議で、北朝鮮の核放棄に向けた核施設の閉鎖などと見返りのエネルギー支援で合意したことについて、「とても悪い合意だ。1994年の米朝枠組み合意の繰り返しに過ぎない」と述べ、米国は受け入れを拒否すべきだとの考えを表明した。米CNNテレビのインタビューに答えた。
ボルトン氏は、「大量破壊兵器拡散をもくろむ世界中の人々に対し、長く持ちこたえて国務省の交渉担当者を疲れさせれば、報酬を手にすることができるという誤ったシグナルを与えるだけだ」と批判した。さらに、今回の合意は、北朝鮮の核実験を踏まえた国連安保理制裁決議の効果を損ない、イランの核問題にも悪影響が出ると指摘した。
ボルトン氏は対北朝鮮強硬派の代表格。今後、同様の批判が政権や議会などから噴出することも予想される。
(読売新聞)
中国の面子を立てて無理に合意した六者会合。まず、北朝鮮から本音が出た。そもそも北朝鮮が平和的に「核」を放棄することなどあり得ないのである。『北朝鮮は長い間、生き残りのために米国を取るか、核を取るかの葛藤を続けてきた。一時期は、核開発を米国との正常化実現の最大のカードとして、使った。それが、最近では核こそが体制崩壊を防止する最大の「武器」、と意識するようになっている。「外交カード」を「武器」として扱うようになった。』(重村智計著「朝鮮半島「核」外交」より)。「核」を手放せば大国の属国になる。北朝鮮は米国も中国もロシアももはや信用できないのである。
北朝鮮は決して六か国協議とは言わない。韓国が朝鮮の一部であり米国の傀儡政権が「大韓民国」を名乗っているという立場だ。この関係は「中国」と「台湾」の関係と同じなのだが。ただこの点について、安倍首相は的確な判断だ。北朝鮮立場に配慮してかどうかは不明だが、常に「六者会合」というフレーズを使っている。今回の合意で改めて北朝鮮の強かさを思い知らされた。しかし、米国とても前回の失敗から、今回の合意がすんなり議会を通るとは思いがたい。
2003年八月から始まった六者会合だが、各国の立場からここで問題が解決すとは考えにくい。むしろ各国の意見が対立し、現在の状態が続くうちに北朝鮮自体が自滅して北朝鮮の民主化が達成される公算が大である。日本は効果が上がりつつある現在の「圧力」と「対話」で持久戦に持ち込むことだ。「拉致問題」が最重要課題である日本にとってそれが最良の戦略である。北朝鮮と中国、ロシアの関係は以前のような同盟関係ではない。北朝鮮にとっては「恫喝」が効く「韓国」しか当てにならないのである。北朝鮮には「軍事力」も「経済力」もないことを充分承知しておくべきである。
米大統領「拉致問題、日本の孤立ない」・首相に表明
安倍晋三首相は14日夜、首相官邸でブッシュ米大統領と約20分にわたり電話で協議した。両首脳は13日に閉幕した6カ国協議で、北朝鮮の核放棄に一定の前進が見られたことを評価。
拉致問題の重要性も確認し、大統領は「この問題で日本だけ孤立することはない」と日本の立場に理解を示したという。
協議は大統領からの申し入れによるもの。首相は拉致問題が進展しなければ、北朝鮮へのエネルギー支援には参加できないとする日本の立場を重ねて強調し、理解を求めたものとみられる。
大統領は「首相の早い時期の訪米を歓迎する」と述べ、4月下旬からの大型連休中を予定する首相の訪米に期待を表明。日米同盟の重要性も確認し、今後も緊密に連携することで一致した。
(日本経済新聞)