坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

金沢健一「音のかけら」の挑戦

2010年04月21日 | 展覧会
鉄の彫刻家、金沢健一氏は、初期には日本現代美術展などで、鉄柱を組み合わせた多様なインスタレーションで一躍前線に躍り出た。グリッド的に組み合わせた大掛かりではあるが、これまでの鉄のイメージを一変させる多面的な視覚の面白さを展開した。もう一つのライフワークとなっているのが「音のかけら」シリーズ、音響彫刻といわれるワークショップである。鉄の音叉やまさに鉄のかけらから響いてくる思いがけない音の軽やかさに、子どもたちが触れる機会をつくっている。この仕事も20年来となるが、パフォーマンスを取り入れたりとプログラミングを工夫しつつ、マニュアル化を進めている。昨年の夏は川越市美術館で実現した。今年も夏に、「音のかけら」パフォーミングが実践される予定だ。

アートで生き生き

2010年04月21日 | アート全般
「アートで生き生き」というタイトルは、『月刊美術』の長期連載となっている日野原重明氏の好評エッセイから拝借したものだ。日野原先生の日々の人との出会いや美術や音楽にお詳しい先生ならではの、いかに豊かに人生を生きていくかというメッセージが含まれている。優しい語り口調にそれだけで癒されるが、ここには現代が抱え込む心の闇、経済効率優先の時代にあっていかに芸術が心のゆとり、支えとなっているか、感性が大切なことを語りかけてくれる。最近では有名美術評論家の現代アートで女性磨きなどという軽いタッチの本もでているが(内容は詳しく拝読していません)、美術は今はやりの脳トレには、鑑賞する側、表現する側の垣根をこえて効果絶大と考えている。日常空間からスリップして古代ローマの彫像の作品群に触れるも良し、バロックの歪んだ構成に首をひねって見るのも良し、「これ作品なの?」と思わせる、内藤礼さんのひそやかな、身近な素材を使って既成概念をずらしてみせる空間に浸るのも良し、1500円ほどの鑑賞券で時間制限のないアート食べ放題。本当の贅沢な時間だと思いませんか・・・。