坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

日常空間を楽しむためのアイデア

2010年04月22日 | アート全般
室内を自分の好きなアートで飾る、これは誰もが望むことだが、マティス、ピカソの版画、リトグラフといってもやはりある程度高額になる。そこで私が提案するのは、アメリカ戦後に活躍するポロック以後の抽象表現主義の画家たちのポスターだ。瞑想的な色彩派のマーク・ロスコ、、色彩のフィールドを開いたバーネット・ニューマンなど、固定的な抽象作品ではない自由な多様さが開放感を呼び起こしてくれる。そこから系列的にポストカードをインテリアに加えたりとちょっとした自分なりのギャラリー空間をつくってみるのをお勧めしたい。1点豪華主義もいいけど、そういったショップを歩きながら買い足してみるのも楽しみの一つだ。『Art Journal』(アートジャーナル社)で、〈戦後現代美術の流れ〉の連載をしていますので、それも参考にして頂きたい。つぎは、ニュー・ペインティングのサンドロ・キアを取り上げる予定。ところで今では各美術館のショップも充実しているので、そこで自分だけのお気に入りの1点を見つけることができるかも。

企業のアート戦略

2010年04月22日 | アート全般
企業のメセナ活動の一環として、若手作家の活動支援や新人発掘のコンクール展が勃発した時期があった。バブル崩壊の前でその部門の担当者に取材しシリーズで記事をまとめたことがある。キリンビールの幅広いメディアを扱った大賞展やシャチハタは発表の場を支援する活動、メルセデス・ベンツはフランスで滞在し制作するアーティスト・インレジデンスの支援であった。それはほんの一部であるが、現在まで続行し若手アーティストの登竜門的存在になっているコンクールもある。現在私が注目しているのは、企業の美術コレクションを基盤とした縦横な企画展の展開、積極的に文化力としてアートを活用しようとする企業のビジョンである。印象派、エミール・ガレ、ティファニーのコレクションで知られるポーラ・ホールディングスヤ三井文化財団、資生堂ギャラリーの活動は言うまでもなく、今春オープンした三菱一号館美術館はロートレックのコレクションを基軸に、明治当時の建物を復元することで、新たなアート戦略に踏み込んでいる。文化支援に各企業それぞれが潤沢な予算を組んでいるわけではない。厳しい経済状況の中で日本のトップ企業が次代に向けてアートによる活力を生み出そうとする視点が興味深い。スイスのある企業の財団コレクションの展覧会が数年前に森美術館で開催されたが、企業内美術教育にも一役買っているということだ。ヨーロッパ的循環型の価値基準がアートの面でも日本に新たな光を見出していけるのか、今後の取材テーマとして取り組んでいきたいと思っている。