休日の井の頭公園。池のほとりのベンチでコーラとホットドッグを食べていたら、ひと癖
ありそうなオジさん達に、「よお、弾いてみいひんか?」てなノリで声をかけられました。
このお二人は、左が天願(てんがん)さん、右が仲間さんというお名前です。
日曜日によくここで沖縄民謡セッションをしているそうです。昼間から一杯引っ掛けて、ご機嫌です。
テーブルの向こうの数人は、もっぱら飲んだり、手拍子したり喋ったりしてました。
これがお二人の楽器、三線(さんしん)です。ニシキヘビの皮が張ってあり、触るとボコボコ
してます。棹(サオ。ネックですな)は琉球黒檀で、非常に堅く、重い。「釘も通らない」
そうです。今となっては貴重な木材なんだそうです。写真だと分かり難いですが、右の仲間さん
の楽器はピックアップが付いており、ワイヤレスでエレキ三線としても使えるのだそう。
どこでも調子に乗ってセッションしたがる私、まっきーです。仲間さんは惜し気も無くいろいろ
教えて下さり、「ハイサイおじさん」等の曲のサワリも習いました。チューニングは低い方から
C、F、Cです。(C、G、Cにしたり四通り。仲間さんは五通りの調弦を駆使するそうです。)
画像では薬指を使ってますが、実際は人差し指、中指、小指のみで押弦するのだ
とか。ギターは薬指を多用しますので、ちょっとビックリですね。
天願さんは横浜生まれですが、ご両親は宮古島出身。沖縄本島にも40年住んでらしたとのこと。
現在は井の頭公園近辺在住です。天願さんが教えて下さったのは「さんば」という琉球黒檀の板
三枚を紐で結わえた、沖縄風カスタネットみたいな打楽器です。右手をトレモロ風に使ってカララッ
と明るい音で調子を取ります。
後ろではノリに乗った仲間さんが、三線を抱えて聴衆?にアピール中。ホント、オモロいおじさん
です。このノリと人懐っこさは、見習いたいものです。ミュージシャンはこうでなくちゃね。
「ビール買ってきましょうか?」と皆さんに聞くと、「そんな神経遣わんでいいよ~」と何処までも
自然体です。
「でも、あったら飲むでしょ?」
「飲む!(笑)」
てなわけで3本買ってきました。
仲間さんとまっきー。仲間さんは会社員の傍ら、琉球民謡のプロ奏者としても活動なさっています。
彼は400~500曲のレパートリーがあるとかで、民謡から演歌、歌謡曲の手書き楽譜ファイルを見せて
くれましたが、全部縦書きで歌詞の横に独自の記号の付いたスコアです。(例えば「合」というのは
開放弦のドのことになる。)仲間さんは30年前に、三線一本を抱えて沖縄から東京に出て来たそうです。
「涙(なだ)そうそう」や「島唄」など次々と、弾き語ってくださいました。
三線の響きがすると、辺りに独特な癒しの空気が漂います。天願さん曰く「夜に三線の音がすると、それは
凄いよ。沖縄にいたころ、夜中の1時半から4時半までいつも三線を弾くひとが居た。昔ね~。」
とのこと。穏やかだったり、ときに激しくバンジョーのように掻き鳴らしたり、海の波が変化する
ように、三線の音色も表情を変えます。
アイリッシュもそうですが、伝統文化と結びついた貴重なセッションに触れた気がしました。
「ライブ」でも無く「練習」や「レッスン」でも無く、発表会でも無い、生活と結びついた普段着の
音楽文化の在り方。
今後も地道にこうしたフィールド・ワークを重ねつつ、私の音楽家としてのアイデンティティを
形成して行きたいと改めて思うのでありました。