ロック探偵のMY GENERATION

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「漫然と踏襲」……厚労省不適切調査の闇

2019-01-23 16:58:32 | 時事
厚労省の不適切な統計が問題になっています。

このブログで過去に書いてきたい文書改ざんなどの問題とベクトルを共有する事案でしょう。不適切と知りながら、漫然と踏襲していた……「漫然と踏襲」という言葉が大きくクローズアップされていますが、まさにこの言葉に日本の組織が抱える問題が象徴されていると多くの人が感じているんでしょう。

不適切な調査は、すでに実害も出ています。大変な問題であり、この件で厚労省を批判するのは当然です。
しかし、身近な職場なんかに置き換えてみると、どうでしょう。

マニュアルで決められたやり方と、現場で実際にやっているやり方が違う……などというのは、忙しい飲食店などで働いたことがある人は少なからず経験したことがあると思います。そういうときに、ちゃんとマニュアル通りにやりましょう、といえるかという話ですね。

仮に疑問を呈したとしても、現場の上司や先輩は、おそらくとりあわないでしょう。

マニュアルどおりにやってたら、業務が成り立たないから。
これまでずっとこんなふうにやってきて何も問題なかったから。
ほかの店もだいたいこんな感じだから。
世の中、そんなもんだから……

そういう言い方で、丸め込もうとするでしょう。
新入社員なんかだったら、ああ世の中そういうものなんだ、と納得するかもしれません。これが大人の世界というものなんだ……と。
それでもなお、いややっぱりこれはおかしい、ちゃんとしないといけない、といえる人は、勇気ある少数者ということになるでしょう。

そして、問題なのは、そういう人が出てきた時にどうなるかですね。
おそらく、正論をいう勇気を持つ人が少数派なのは、どこの国のどこの社会でもそうだと思うんですが、重要なのはそこから先です。
この国の組織は、みんなでその人を押しつぶしてしまうんじゃないかと想像されます。同調圧力というやつで、正論をいう人は、めんどくさいやつとみなされ、けむたがられるようになるのではないか。それが、不適切な状態を「漫然と踏襲」するという結果につながるんではないか……
そういう意味で、今回の厚労省の問題は、この国の根深い病理を垣間見せているような気がするのです。