夢畑通信『畑の花』 田舎暮らし体験日記

北海道に移住して二十数年。田舎での子育てを終え、残された夫婦は新たな楽しみを見つける旅を続けます。

カザフスタンレーポート最終話

2015-02-12 09:18:01 | クロスカントリースキー


カザフスタンアルマティで行われたノルディックジュニア世界選手権。
参加した拓は初日のスプリントこそ47位でしたが、二種目目のフリーで60位、個人種目最後のスキーアスロンはDNF(途中棄権)という結果に終わってしまいました。
二日目のフリーが終わった時点で、親なりの偏った見方を必死で正しても60位と言う結果に不満はありました。―――「いったいどうしたんだろう?」不安、疑問。
その不安が的中。スキーアスロンをFISのライブで見ていた順子から「第二関門から拓がいなくなった」と緊急の連絡が入り、悪い憶測は膨らむばかり。接触か?転倒か?事故か?
僕ですら連絡が来るまでの数時間が長がく感じたぐらいですから、順子の不安は尋常ではなかったと思われます。

全国中学スキー大会遠征中の僕の携帯に連絡が入ったのがコーチミーテイング中のこと。とぎれとぎれ声がラインから聞こえ、必死に単語を並べていく震えた声に、大きなケガがなく良かったと安堵していく僕の鼓動の音だけが小さく響いていました。
―――原因は喘息。小さい頃に一度喘息の疑いがあると言われたことがあります。そして、昨年の春にも咳が止まらないと言うので病院に行ったところ、喘息の疑いがあると診断されました。
ただ、気温の上昇と共に改善されたと聞いていたので、あまり気にしていなかったのですが、それがカザフスタンで発病したようです。
特に起因となったのが大気汚染。リゾート開発の進むアルマティは大気汚染がひどく、マスクを付けたまま練習する選手もいたほどです。現地滞在1週間、汚染された空気が徐々に肺に広がり、酸素をもっとも必要とする競技中に負担が加わったようです。三種目、スキーアスロンの競技中、機能低下を続ける肺は、ついに空気がほとんど吸えない状態になり、彼の身体を押し倒してしまいました。

ミーティング中だった僕は、とっさに聞いた内容を理解するのに精一杯で、慰める言葉が見つかりません。ただ、「やっちまったことは仕方がない、明後日にひかえたリレーに対しての行動を優先しなさい」と言ったことだけは覚えています。
その後、拓は日本で処方された気管支拡張剤を調べたり、それに変わるものを現地調達しようとしたようです。それも、言葉や勝手の通じないカザフスタン、ドーピングの心配を配慮しながら、通訳を介してのこと、なかなか上手くことは運ばなかったことは想像できます。
翌日、なんとか通訳が気管支拡張剤を現地調達し、リレーの参加を必死の思いで懇願したようです。しかし、日本チームの監督・コーチがくだした結論は参加の取り止め。今の拓の状態では、まともなレースを行うことができないと言う判断だと思われます。さぞ無念だったことでしょう。「自分一人のせいでチームに迷惑をかけた」と言う拓の言葉が今でも僕の耳の中に貼り付いて取れません。

残念な結果で、応援してもらった皆様に対し申し訳ない気持ちで一杯です。
本人が一番辛い思いを引きずっていることでしょうが、帰国した彼を見ていると時間が少し柔軟にしてくれているようです。
気持ちの整理ができていない表情を見せる時があります。ただ、無念さを闘志に変えていることは間違いありません。そして、今回の悔しい思いをさらに彼を押し上げる力に変えてもらえればと祈る思いです。帰国後、一昨日自宅に戻り、次の遠征までの間、心の傷と身体の病気を癒しながら赤井川でしっかり練習に励ませようと思います。まだまだ、拓のレースは続きます。これからもご声援宜しくお願いします。

簡単ですが、世界ジュニアの報告は終わります。
「起こるすべてのことを肥しに変え、さらに上を目指してもらいたいものです」
親バカですが、、、「まだまだ!」という期待を含め一筆させて頂きました。