もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

ねねの日記・30 ・・・ サンタクロースは絶対いる!!

2017-12-19 11:07:59 | E市での記憶
アタシたちがまだちっちゃいころ
クリスマスが近くなると
「サンタさんに何お願いした?」って
カンゴフさんからよく聞かれた。

アタシもおねえちゃんも
何もお願いしたことなかったけど
朝起きると、枕元にいつも
可愛い長靴にはいったお菓子が
置いてあった。

おねえちゃんは
クリスマスの話になると
いつも本気で言った。

「あのね、サンタさんは
ほんとにいるんだよ。
あたし見たことあるもん!」

カンゴフさんとかおばあちゃんとか
おとなの人たちはニコニコして
「そうだよね」って。

みんなちょっと
嬉しそうな顔に見えた。

でも・・・

少し大きくなるとおねえちゃんは
学校なんかで

「サンタクロースなんていないよ」

って言われるようになったみたい。

「そんなはずない!!
あたしほんとに見たんだもん!」

おねえちゃんの眼は真剣で
アタシがそばにいるときは

「ねねちゃんも見たよね。
覚えてない?」

アタシは何も言えなくて・・・

たまには「見た見た」なんて
ウソもついたけど
ほんとは全然覚えてなかった。

アタシが覚えてないってこと
おねえちゃんはわかってたと思う。


サンタクロースが
おとうちゃんだったこと
おとうちゃんの口から聞いたのは
いつ頃だったのかなあ。

「友だちとそういう話になって
あの赤い服とか帽子とか
白いひげも綿で作って・・・」

夜、暗くなってから
(でもまだおねえちゃんが
眼を覚ましてる間に)
玄関から入ってきて
プレゼントをあげたんだって。

おねえちゃんが
すごーく喜んだって
おとうちゃんも嬉しそうだった。

そのあと、お友だちのおうちにも行って
そこの子どもさんたちも
みんなきゃーきゃー言ってたって。


おとうちゃんは、ずっと後になって
身体の不自由な子どもさんたちの
「施設の医者」になってからも
たまーに「サンタクロース」に
なってたみたい。

「子どもがみ~んな喜んでくれて
やって良かった」って言ってた。

おとうちゃんの膝が悪くなって
仕事場で車椅子使うようになる前の
まだ元気だった頃のことだったのかな。

でも、その日はちょっとクタビレタ顔で
帰ってきたの覚えてる。



おねえちゃんはそれからは
「サンタクロース」のこと
言わなくなっちゃった。

「なあんだ」くらいじゃない
納得いかない感じがしたのかもって
アタシはちょっと思った。

でも、おとうちゃんは
そーゆーヒトだったんだと思う。

話してるときの楽しそうな顔
今もはっきり覚えてるよ。

でも、おねえちゃんも
そーゆー子だったんだよね。


アタシもおとうちゃんのサンタクロース
覚えてたかったな・・・





コメント
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