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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

混迷するリハビリテーション

2007-03-15 22:05:51 | シリーズ 医療制度改革
この1年間、リハビリテーション(以下、リハビリ)に関する記事や報道が何度発表されただろうか。平成18年4月の診療報酬改定により、医療保険のリハビリを受けられる日数の上限が、脳血管の病気で発症や手術から180日、手足の骨折などで150日、呼吸器の病気で90日、心臓や血管の病気で150日までと制限された。
これからの疾患によるリハビリは、提示してある日数を超えると維持期のリハビリになり、漫然と続けるものではなく、効果が明白ではないと厚労省の研究会で指摘された。
リハビリ日数が制限された一方では、発症直後のリハビリは従来の1.5倍の時間できるようになっている。

ただし、厚生労働大臣が定める疾患又は症状があり、医療保険のリハビリを継続することにより状態の改善が維持できると医学的に判断される場合は、日数上限を過ぎても医師の判断によりリハビリを継続することが可能とされている。
その疾患をすべて紹介することはできないが、例えば、
・失語症、失認及び失行症
・高次脳機能障害
・重度の頸髄損傷
・関節リウマチ
・パーキンソン病関連疾患
・言語障害、聴覚障害又は認知障害を伴う自閉症等の発達障害
その他、難病に指定されている疾患などが除外されている。
また、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する患者、つまりまだ若くリハビリをすれば回復する可能性が高い患者は日数上限から除外されている。

当初、平成18年4月から適用されるはずの制限だったが、公けにされたのが数ヶ月前と現場に大きな混乱をもたらしたため、半年間の経過措置がとられた。
さらには、現場の医師に改定の詳細が普及しておらず、疾患に関わらず一律にリハビリを打ち切られてしまうなどの問題が生じてしまった。そこで、厚労省は急遽通達を出すなど再度現場への理解を求めることになった。

しかし、混乱はそれだけでは収まらなかった。医療リハビリを受けていた患者の中には、身体機能を維持しながら仕事を続けている人もおり、自分の言葉でリハビリ継続を高らかに訴え始め、社会問題にすることに成功した。
その声と輪は大きくなり、何十万人という署名が集まり、厚労省も無視できなくなってしまっている。

なぜここまで混乱が大きくなってしまったのだろうか。一つは、医療費抑制ありきの改定であったことに原因がある。一部の研究者や現場の声を聞いただけで、綿密な調査や患者からの聞き取りが不足していたのだはないだろうか。
そしてもう一つは、リハビリの受け皿を介護保険のリハビリにしてしまったことだ。介護保険のリハビリは介護負担の軽減という側面が強く、集団で行うなど医療保険のリハビリを行っていた人には満足できないメニューであることが多い。また、介護保険事業所においてリハビリを行える専門職(理学療法士、作業療法士等)が不足している現状もある。そこに輪を掛けて、厚労省は3月、訪問看護ステーションに、理学療法士らの訪問回数が看護師の回数を超えてはならないと通知したため、リハビリを受けたい人は、同回数の看護師の訪問を受けるため、費用負担も多くなってしまう。さらに、介護保険の適用にならない40歳未満の人は、最初から介護保険の受け皿からはみ出してしまう。

当事者の声を無視できなくなった厚労省は、ここにきて日数制限から除外される疾患の範囲を広げることにした。しかし、医療費が増えることから、財政面でのバランスをとるためにリハビリの診療報酬を一部引き下げ、4月からの実施を目指している。
4月からの改正は以下の通り。
①急性冠症候群(心筋梗塞、狭心症など)、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)を新たに日数制限からはずす
②日数制限の対象となる病気でも、改善の見込みがあって医師が特に必要と認めた場合は医療リハビリが継続できる
③介護保険の対象とならない40歳未満の患者や、介護保険で適当な受け皿が見つからない人は、医療で維持期のリハビリが続けられる
④回復が見込めない進行性の神経・筋肉疾患(筋萎縮性側索硬化症=ALSなど)も医療リハビリを継続する
これで、大半の患者を救済できると厚労省は考えている。

また、介護保険においても新形態のリハビリ「個別・短時間型」を導入する方向で検討している。専門職が必ずつき、リハビリに特化するという内容だが、スタートは早くて2年後の予定だ。専門職も現状の4倍は必要という試算もあり、実現は不透明な状況。
現場の多くの声をうけ、動き出してはいるが、この混迷はまだまだ続きそうだ。

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