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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

隣組(となりぐみ)からみる「まちづくり」

2005-06-15 21:11:05 | まちづくり
私の住む地域には隣組(となりぐみ)という制度がある。地区ごとに公民館があり、その公民館の下にいくつもの隣組がある。一つの隣組が20戸くらいからなっている。
地域の行事(運動会、草取り、清掃、ゴミ当番など)は隣組単位でおこなうため、自然と隣近所と顔を合わせる機会が多くなる。
このような制度は古くからあるもので、名前こそ違うがどこの地域にも同じようなものはあるだろう。マンションなどの管理組合も、その一つとしてあげられるかもしれない。ただ、近年都市部では参加しない世帯も多いと聞く。核家族化が進んだためもあるだろうし、人付き合いの仕方そのものが変化してきているのかもしれない。

先日、近くを散歩していると、老夫婦が道端に座っていた。近づくにつれ、女性のほうが大きな声、大きな動作で道を歩く人に声をかけていることがわかった。かなり有名な人のようで、近所の人は皆その人のことを知っているようだったが、知らない人は関わらないように通り過ぎていた。もしかしたら認知症をかかえているのかもしれない。
近所の人は立ち話で、大きな声を出して迷惑だ、という話をコソコソとしていたので、実際に困っているのだろう。しかし、確実にその地域には受け入れられているようにも感じた。隣組がこんなところにも活きているのかもしれない。

「隣近所にどんな人が住んでいるか分からずに恐い」と言っているのを聞くが、それは「どんな人が住んでいるか分からないから恐い」と言い換えることができる。つまり知ってしまえば、恐さもなくなるかもしれない。
そのためのツールが隣組だといえる。そして隣組は、その地域を支えている最少単位の自治組織なのである。まちづくりとして取り組む時、既存の自治組織をいかに活かすかを考えることが重要である。逆に、そこに手をつけずにまちづくりは成り立たないだろう。

今年初めにニュースになった、民生・児童委員の担い手が不足しているのも、近所付き合いの希薄さが大きく影響している。自治組織に参加しない世帯が増えている一方で、もしかしたら入れ替わる住民に対応できるだけの自治組織の運営ができていないところもあるかもしれない。そうであるなら、ぜひ各市町村は既存の自治組織の運営に協力してもらいたい。
市町村と自治組織の関係は、相互関係であることが望ましいし、今後はそのような関係がより求められてくるだろう。個人よりも自治組織のほうが、行政に対しての発言力があるのも事実である。そして、今叫ばれている行政改革でも、自治組織の存在は、監視役としても大きな役割を担うはずである。

福岡県大牟田市では、既存の自治組織を活かした地域ネットワーク『はやめ南人情ネットワーク』というものがある。これは、地区の地域住民を中心に、老人会や小学校、福祉施設、商店などが「地域の中で安心して徘徊できるまちづくり」をめざすために協力しており、実際に徘徊模擬ネットなどの取り組みもある。子どもたちにも積極的にかかわってもらうなどして、高齢者だけではなく子どもたちの安全にも大きな役割を果たすネットワークになりつつある。
まだ2年目の新しい取り組みではあるが、その根底をささえているのは、これまであった既存の自治組織なのである。『はやめ南人情ネットワーク』については、別に詳しく記すことにする。

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