What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

シリーズ デンマークの教育② 『幼年期の教育』

2004-11-01 10:27:23 | 教育について
デンマークでは、教育の場において民主主義を教えることが中心であることは前項でも述べました。それは、0~7歳までの子どもに対する教育からもみることができます。

デンマークにおいては、ほとんどの子どもが0~3歳まで保育園(保育ママ)、3~6歳までは幼稚園に通っています。これは、デンマークが女性の社会進出が世界一であることも無関係ではないでしょう。
この就学前期間中には原則として読み書きを教えないことになっています。なぜなら、子どもが家庭から出て初めて接する社会が保育園・幼稚園であるので、皆と仲良くなることが大切とされているからです。早く皆と仲良くなれるには、読み書きよりも遊びを優先することと考えられているのです。
ですから、デンマークの保育園・幼稚園では、子どもたちは一見放任されたように遊び呆けていますが、実は遊びを通して自由を学んでいるのです。そして勝手気ままに遊んだ後は、おもちゃの後片付けをさせたり、大きい子は小さい子の面倒をみるというように、自由には責任が伴うということを理解させ身に付けるのです。そのため、年令を統合した保育園・幼稚園も数多くあるのです。
ここで日本の場合を考えてみると、反対に教育の低年齢化が進んでいることに目がいきます。幼年期から塾に行き私立小学校の受験に備えたり、英語を教えたり・・・など早くから読み書きを教えることが子どものためによく、それが教育と考えられているように感じます。しかし、本当に子どものことを考えるなら、読み書きを教えるよりもまず人とのコミュニケーションがとれるようにしたほうがいいのではないでしょうか。子どもの頃から読み書きを詰め込まれた子どもが大人になった時のことを考えると、不安を感じずにはいられません。

さらにデンマークでは、障害者への差別や偏見を持たせないようにするため、なるべく早い時期から障害を持った子どもと可能な限り同じ施設に通園させるのが良いとされています。小さい時から障害者と接することにより、子どもたちはこの世の中には男や女や老人や子ども、体の不自由な人など、いろいろな個性を持った人がいることを理解するのです。
この『ノーマリゼーション』の考え方に象徴されるように、デンマークには障害児のための教育に関する特別な法律はありません。なにも特別なことではないからです。

国民学校の1年生の前に、幼稚園学級というものがあります。これは6~7歳までの子どもが通う0年生学級のことで、この学級でも読み書きは原則として教えないことになっています。しかし、生徒が希望する場合にほ教えてもかまわないことになっています。この学級の目的は、子どもたちが国民学校1年生に抵抗なく入れるための準備期間とされています。
つまり、就学前教育(0~7歳)は、子どもたちを早く社会の一員とするためのものであって、その名の通り勉強以前に必要ないろいろなことを教えるための期間なのです。
こうして、生活大国であるデンマークの基礎はつくられているのです。

参照:千葉忠夫「デンマークの教育調査 福祉国家デンマークの教育 ~日本の福祉教育への提言~」

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