What’s ノーマリゼーション?

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シリーズ デンマークの教育⑦ 『大学・上級専門学校』

2005-02-20 23:13:10 | 教育について
ノーマリゼーションが根付く国デンマークを形作っているのは、教育であるという視点から始まったこのシリーズも7回目。今回は教育現場の最期の段階である、大学および上級専門学校に焦点を当てる。
すでに「教育の義務」の場で、民主主義が教えられていることはすでに述べたが、ノーマリゼーションの考え方も当たり前のように教えられている。だから、デンマークの若者の中には、ノーマリゼーションを提唱したバンク・ミケルセンを知らない人も多い。それだけノーマリゼーションが浸透しているということだし、言葉自体には意味がないのかもしれない。

デンマークにおいて、高等学校を卒業する頃には年齢が最低でも19歳以上になっている(前項参照)。高等学校あるいは高等学校卒と同等の学力を有する者は、大学および上級専門学校に入学試験なしで入学することができる。
上級専門学校とは、国民学校の教師、施設職員、看護師、助産婦、OT、PT等になるための学校で、就業年限は4年となっている。
大学への進学者は比較的少なく、大学教育を必要とする職業に就きたい者が進学する。例えば、医者、獣医、薬剤師、弁護士、エンジニア、高等学校教師等であり、修業年限は6年となっている。

これらの学校への入学資格は必ずしも高等学校卒を要求されるわけではない。その代わりに、“ポイントシステム”という制度があり、例えば国民学校の教師になるためには、職場経験や外国旅行の経験、国民高等学校への在籍等が加算されて入学可能なポイントを満たす必要がある。そのため、入学時の平均年齢は25歳前後で、初任教師の平均年齢は29歳前後となる。そのため、日本のように大学卒業したばかりの先生が子どもを教えるということはなく、ある程度の社会経験を積んだ大人が子どもを教えるということになる。
それだけ、デンマークでは「教育の義務」の場での教育を重くみているということであろう。

日本ではつい先日、文部科学省が「ゆとり教育」を見直す方向で動いていることが報道され、新たな波紋を巻き起こしている。「ゆとり教育」自体の理念を批判する意見は少ないが、結果的に表出した学力低下に対してはどうにかしなければいけない、という意見が多いようだ。これまで10年かけて議論されてきた「ゆとり教育」がスタートし、いざ始まってみると不具合も多かったということだろう。つまりは細かい部分でのシュミレーションが足りなかったということか。
OECD(経済協力開発機構)が実施した調査による結果が悪かったということに対して過剰に反応し、振り回されているようにしかみえないのがとても残念だ。日本の政治家、役人には20年先どころが10年先も見えていないのではないかと危惧してしまう。
最も振り回されているのが、子どもであり、これからの日本の将来であることを忘れないでもらいたい。

参照:千葉忠夫「デンマークの教育調査 福祉国家デンマークの教育 ~日本の福祉教育への提言~」

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