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シリーズ デンマークの教育【番外編】 『世界一の義務教育 フィンランド』

2005-01-09 20:46:10 | 教育について
昨年末に教育関係者のみならず、日本中で話題となったのがPISAのランキングであった。
PISAとは「Programme for International Student Assessment」のことで、OECD(経済協力開発機構)が実施した調査で、日本では「学習到達度調査」と訳されている。2000年の調査で日本は読解が8位、数学が1位、科学が2位であった。
今回(2003年)はそこに問題解決能力が加わり、その結果日本は読解が14位、数学が6位、科学が2位、問題解決が4位となった。そのため、新聞紙面では「日本の読解力低下」と大きく報道されたのが記憶に新しいところだろう。

その中で注目されたのがフィンランドである。2000年では読解1位、数学4位、科学3位であったのが、今回の調査では読解1位、数学2位、科学1位、問題解決3位と義務教育で「世界一」の評価を受けた。そのフィンランドの教育現場ではどのような工夫がされているのだろうか。
フィンランドでは94年に教育の目標や内容の決定権が国から地方に移され、国は大まかなカリキュラムを示すだけになった。学習が遅れた子どもへの特別授業は慣習だったが、06年度から施行される新カリキュラムでは制度化されることになる。新カリキュラムでは、義務教育の小中一貫も明確にされる。生徒をテストでランク付けする仕組みがなく、現行制度では高校進学に影響する中学3年の成績を除き、成績をつけるための明確な基準もない。デンマークと共通する部分も多い。
学習内容は教科書の選択を含め、現場の教師が決めることになっている。「できるだけ子どもたちの生活と学習を関連させる。国語なら読み書きの正確さより、読んだ文章について考え、感想や意見をどう表現するかに重点を置く」とある先生は言っている。時間割も学習の進み方によって柔軟に変えられるような工夫がされているのである。

ある中学校では授業中、先生が説明中にもかかわらず生徒同士がお互いに席を離れ教えあう光景がみられるという。先生も了解のもと、クラスのルールとしてわからないことはまず生徒同士が教え合うことになっている。「一人ひとりが何ができて何ができないのかを自覚することが大事。出来ない子を教えれば、より理解を深められる」と先生。これがフィンランドでは標準的な考え方とのこと。
また、理解度に合わせた指導も一般的に行われている。例えば数学のクラスについていけない子どもは、自らの選択により別室へ移り学習進度に合わせた特別授業を受けることができる。そこで理解できるようになれば、またもとのクラスに戻っていくのである。デンマークでも同じことが行われている。デンマークでは、1クラスの中に3段階くらいのレベルがあり、どのレベルに入るかは教師だけの見解ではなく、生徒の希望も入る。移動も可能であるため、低いレベルに入ったことによる劣等感やいじめはないという。

今回の結果を受け、中山成彬大臣は以下のようなコメントを残している。
「― 歯止めをかけるために全国学力テストをやって、競い合う教育をしないといけない」
過当競争の弊害が叫ばれ偏差値をなくし、ゆとり教育として週休2日にし学習内容を削減してきた文部科学相の言う言葉だろうか。いかに日本の政治・制度が先を見ていないかが顕著に現れている。結局5年先も見越しすことができていないのである。
制度を見直すことが悪いと言っているのではない。自分の利害だけの政治はやめてほしい。

最期に、フィンランドの教育相の言葉から。
「― (フィンランドの教育は)平等が原則だが、子どもがみな一様に扱われることはない。能力が劣ったり、社会環境が恵まれない子には支援がある。教師は修士課程修了が原則。さらに国の予算で継続教育をし、教師の質の向上に努めている」

日本とフィンランドの違いはトップの一言にも現れている。そのトップを選んでいるのは私たちであることを忘れてはいけない。

参照:朝日新聞 (2004.12.19 朝刊)
    PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査

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