むじな@金沢よろず批評ブログ

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選挙分析5・謝長廷の勝機はむしろ高まった

2008-01-15 02:30:28 | 台湾政治
そういう意味で、一見すると危機に陥ったかに見える謝長廷の勝機は、逆説的にむしろ高まったといえる。しかも謝長廷は民進党主席も兼ねて、党内で謝長廷に権力的にも対抗できうる陳水扁らは今回の選挙の責任を負って退却し、民進党では完全なトップになった。さらに謝長廷は分裂含みの国民党本土派ともパイプがあり、性格的にも侠気があってそれに近いから、謝長廷は民進党だけの候補というよりも、国民党本土派を含めたすべての台湾派の共同の盟主・候補となったことになる。
国民党も権力の重心は今までのように外省人が牛じる党中央ではなく、立法院会派に移ることになり、それを束ねる王金平の役割が高まることになる。事実、王は14日付け自由時報の一面インタビューに登場し、存在感を強めている。
もちろん、謝長廷にも死角と課題がないわけではない。
それは今回の結果で意気消沈しがちな緑支持層に諦めムードが続けば勝機はなくなる。そのリスクはある。「西瓜効果」(日本語では寄らば大樹の陰、勝ち馬に乗る、にあたる台湾語のことわざの「西瓜は大きくなっている側に倒れる」から来た)が働き、支持層が馬英九に傾斜する可能性もゼロではない。台湾人は現実的な商売人だからだ。
それから、民進党自身の態勢立て直しと団結が計れるかどうかである。一部の党幹部は馬勝利を予測して責任逃れに動き、謝長廷を代理主席にしてすべての責任を謝長廷に押し付けている。これが広がると致命傷となる。
実際、目先短期的な雰囲気は謝長廷にとっては大きな逆風、逆境である。とはいえ、これは謝長廷にとって大きな転機でもある。
選挙結果を厳粛に受け止めて反省し、陳水扁が作り出した硬直的でマンネリな路線と思考から脱皮し、新たなイメージと価値、それから政策を提出して、有権者への支持を訴えて行けば良い。
実際、14日付け聯合報に出ていた世論調査でも、国会と総統が同一政党であるほうがいいか否かの質問には、47%が同一政党が良いと答えたものの、異なる政党が良いが32%で、さらにわからないが19%もいたことである。
これが国民党・馬に有利な偏向と情報操作を行う聯合報の調査であることを加味し、これまでの経験から32%のほうを2倍にすれば、実際には6割以上が「国会と総統は異なる政党であるほうが良い」と考えていることになる。
さらに、謝長廷はこれまで数々の逆境を克服してきた実績と、それだけのタフな度胸と性格を持っている。実際、世の中にあれほど精神的にタフな人間はいない、と私は思う。(私が同じ状況に直面したら、絶対に重圧に押しつぶされているだろう)

謝長廷のもつ機智とアイデア、柔軟な思考、その一方での度胸と侠気は、陳水扁とはまったく異なるタイプである。
総合的に見れば謝長廷が3月22日に当選する機会はむしろ高いといえるだろう。


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