むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

台湾無知の日本人ウヨクとは一味違う若手知日台湾人によるNHK批判は傾聴に値する

2009-05-10 17:29:33 | 台湾その他の話題
台湾の実情を知らない日本人ウヨクによる一方的な罵倒に近いNHK批判とちがって、同じNHK批判でも戦後世代の知日派・黄智慧氏による「【NHK問題】日本の戦後反省は「自己満足型」」という指摘は、達者な日本語とも相俟って、傾聴に値する。

私は黄氏の指摘をすべて同意はしない。黄氏の「良し悪しというものは、比較できたからこそ、ある程度の客観性がもてるのです」という指摘は、台湾史全体の見方としてはその通りだが、あくまでも日本統治時代に比較する対象がなかった当時の気持ちを探ることが目的の、この番組に対する批判としては的はずれというしかない。
また、改姓名が強制ではなかった根拠として数字だけを持ち出すだけで、その動機が統治初期にさかのぼる差別主義にあったことを指摘しないのも、歴史を論ずるには、片手落ちである。というか、根拠として数字に拘泥するのは、戦後の悪しきアメリカニズム、数量社会科学の影響でしかない。

ただし、全体的にもっともだと思わせるのは、日本の戦後進歩派の「反省史観・贖罪意識」が対象であるアジア諸国の人たちの心情や比較の視点を見ないで、あくまでも日本人本位の「自己満足型」(私なりに悪くいえば、オナニー)に過ぎないという指摘は、その通りだと思う。
つまり、日本の左派は贖罪意識から「アジア民衆との連帯」といっているわりには、当のアジア人の視点は無視して、あくまでも日本人本位の独りよがりな「反省」にとらわれている点では、戦前の軍国主義とあまり変わっていないという指摘だ。

これはその通りだと思う。実際、左派系のブログを見ると、今回の番組は「韓国・北朝鮮と同じように台湾の人も苦しんでいた」と、さも「やっぱり台湾だって韓国と同じ反日じゃないか」と鬼の首をとったように喜んでいるものも散見されるからだ。

これはこれで、ウヨクと同じ、自惚れによる誤認、錯誤だ。
そもそも、台湾人と韓国人の歴史は同じではない。
韓国の場合は日本統治以前に曲がりなりにも独自の王朝があって、領域も存在したが、台湾はそうではなかった。戦後は戦後で韓国は米軍の直接統治を受けて、さらに独自の民族国家が成立しているが、台湾は蒋介石軍に支配された。
違う与件にあった韓国と台湾をただ日本統治を受けた点だけの共通点から、「同じように苦しみを感じていたはずだ」というのは、台湾をありのままに見ようというのではなく、視点を朝鮮において台湾を従属物だとする朝鮮民族主義史観でしかない。
台湾と朝鮮は違う。
逆にウヨクの史観は、台湾の日本語世代を中心にして、朝鮮を「反日」であることがさもおかしく悪いみたいに言い立てる点で、「台湾日本語族中心史観」でしかない。

要するに、日本でNHKを批判するウヨクも、これを喜んで韓国と結びつける左派も、同様に台湾の実態が見えていないで、日本人本位で、それぞれのイデオロギーで、虚像の台湾をこしらえているに過ぎない。

台湾の真実は、そんな日本人左右の勝手な思い込みとは違った次元と視座にあるのであって、「戦前世代の台湾人は、日本統治のすべてを礼賛する媚日」だと思いこんで外来支配という性質を忘却するウヨクも、「日本に支配されたのだから、韓国と同じく苦痛のはずだ」と韓国と同列視して台湾の独自性を阻却しようとするサヨクも、台湾人からみれば実は同じ穴のむじなだ。
ウヨクはまた国民党統治との比較で良かったと強調することで、植民地支配一般の苦痛の部分を無視し、サヨクは国民党統治よりマシだったという点に無知だ。

そういえば、謝罪贖罪史観にあるはずのサヨクほど、アジア諸国に行ったことがない場合、台湾やマレーシアやインドネシアが親日だという点を認めようとせず、逆に現地人が戦前の日本のほうが良かったとか、解放の役割があったと発言すると、「それは間違っている」といって必死になって現地人の意見を抑圧し、帝国主義者の役割を果たすことがあって、滑稽である。
台湾やマレーシアやインドネシアが日本の役割を肯定的にとらえるのは、台湾にとっては後の国民党、マレーシアにとっては前後白人支配、インドネシアにとっては前後のオランダ支配がさらに抑圧的で非合理だったからであって、ひたすら日本統治しか見ずに、朝鮮のあり方こそが標準だという朝鮮民族中心史観にとらわれている日本のサヨクは、朝鮮人の傲慢さがそのまま乗り移ったように、他民族の日本への相対的評価を抑圧しようとする。
しかし台湾、マレーシア、インドネシアの人たちが、日本のほうが良かったというのは、彼らにとっての実感であり、真実なのであって、朝鮮とまったく異なる歩みのそれらの国の人々の気持ちを朝鮮基準で否定するサヨクは、自己中心的なだけなのだ。

韓国や北朝鮮のあり方だけがすべてではないことを、サヨクは知らない。それは島国根性の偏狭さというべきだろう。アジアは朝鮮ばかりではない。いや朝鮮こそが少数派だということを、サヨクは見ようとしない。そして、マレー系を抑圧、差別する構図や構造を作り出している。

だから私はウヨクは朝鮮蔑視主義で、サヨクはマレー蔑視主義に過ぎないと思う。
いずれも、日本人本位で、イデオロギーの狭い殻と視点で断言断罪しようとしている点では、同列なのだ。

こんなことは、脳内で「アジア」をつべこべ論じていないで、台湾やマレーシアに3年以上は住んでみれば、おのずとわかることだが。

最新の画像もっと見る