むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

大高雄市長選挙、楊秋興参戦で面白くなってきた

2010-08-19 18:02:20 | 台湾政治
最近台湾政治はつまらない、と思ったら、ここにきて若干面白くなってきた。
11月27日実施予定の台湾の5都(直轄市)市長・議員選挙だが、大高雄市長選挙に民進党の予備選挙で破れた高雄県長・楊秋興が8月9日に民進党離脱し、独自に出馬することを表明したからだ。
楊秋興はECFAを支持するなど国民党寄りの路線を打ち出し、中間派から浅藍(弱い国民党支持層)を狙うようだ。

最初は「ゴルぁぁぁぁ!楊秋興!ヴォケとんのかああああ?!!!」と思ったが、どうも民進党や独立派周辺の反応を見ても至って冷静なもので、事実これまで7種の機関が発表した支持率の世論調査を見ると、いずれも民進党公認の高雄市長・陳菊の優位は変わらない。
それどころか、楊秋興が露骨に国民党寄り路線を打ち出したことから、国民党公認の黄昭順が煽りを食って3位、しかも泡沫化の兆候すら見られる事態になっている。
楊秋興はかなりトリッキーな性格だと思うので(四柱推命だと謝長廷と同じタイプ)、もし世論調査通りに投票も反映されるとすれば、実は国民党公認を泡沫化させて国民党組織をぼろぼろにする作戦なのでは?とかんぐってしまう。楊がそこまで考えているのかわからないが、これはなかなか面白くなってきた。

自由時報が18日付け1面中段記事で独自の世論調査結果を発表し、陳菊46%、楊秋興19%、黄昭順7%wという数字を出したことに、楊秋興は反発し、一部では「楊秋興の辞退を促す操作では」という観測も出ているが、それは下種の勘ぐりというものだろう。
というのも、この結果は自由時報に限らず、国民党系の聯合報も含む他の6種の調査ともほぼ一致しているからだ。しいていえば自由時報では黄昭順があまりにも低すぎて、18日夜の三立「大話新聞」でも評論家たちが「これはありえない」と指摘していることから、自由時報がもし辞退を狙ったとすれば国民党公認黄昭順のほうではないか?

自由時報は、黄昭順の数字があまりにも低すぎるのはともかくとして、1位が圧倒的に民進党公認陳菊、2位が民進党離脱した楊秋興、3位が国民党公認黄昭順というのは、どの調査も同じ

ここにそれぞれの調査をあげる
(18日夜大話新聞が整理したものをもとに再度確認したもの)

数字は陳菊、楊秋興、黄昭順の順で、パーセンテージ

8月4日聯合報    44 23 13
 (楊秋興表態參選陳菊民調領先
8月4日リンゴ日報  43.75 27.18 20.49
8月9日民進党    53.7 22.6 15.3
 (民進党新聞稿 蔡主席:遺憾楊縣長背棄承諾 對大高雄選情仍深具信心 / 2010-08-09
8月10日TVBS  46 28 14
 ( 楊秋興宣佈參選高雄市長支持度民調
8月11日楊秋興陣営 37 19 10
 (11日中天のインタビューで楊秋興が公開)
8月18日政治大学  61.0 26.5 11.8
 (政治大学未来事件交易(取引)研究所、本来は当選確率を価格にしたもの。未來事件交易所目前對五都選舉的預測結果_20100818
8月18日自由時報  46 19 7
 (大高雄市長選舉支持度/本報民調


この中で、4日のリンゴだけが楊+黄の合計が陳を上回るが、後はいずれも陳菊が他の2人の合計をはるかに上回る独走状態だ。

9日前後の自由時報の投書欄では民進党支持者の投書に「国民党陣営がもし公認の黄を棄てて、楊に乗り換えたら逆転されるのでは?」と危惧するものが多かった。
実際、楊の出馬によって、陳菊も影響を受けないわけではない(TVBS民調 楊秋興恐吸走陳菊24%、黄昭順31%(2010/08/03 19:56未來事件交易所:陳菊當選率8成跌到6成8(2010/08/05 00:56))。しかし、陳菊がこれで落選するかもしれないというのは杞憂に終わりそうだ。

だから、今後の焦点は

1.楊が勝てないとわかっていても、出馬しつづけるのか

2.国民党公認がこのまま泡沫化するのか?

にある。

もちろん、国民党は面子にかけても公認候補を泡沫化させるとは思えないので、最終的には黄昭順にある程度票が戻るだろうが、楊秋興も現職県長としてかなり強さを持っているので、結局、国民党の票は分裂して、この両者で2,3位争いになりそうだ。

しかし、その場合でも、国民党候補が得票率で30%を下回るようだと、かなり情けないことになる。いや、それどころか各種世論調査通りで推移したとしたら、国民党候補は20%以下ということになりかねない。

そして万が一楊がこのまま2位ということになれば、いくら楊の主張が国民党寄りにシフトして、そのために国民党系の支持を集めたといっても、もともとずっと民進党の人間なのだから、形式的にはその票も民進党系ということになる。
そうすると、陳+楊の民進党系合計は8割前後という空前の数字になってしまう。

楊がこのまま2位ということになれば、いくら楊の主張が国民党寄りにシフトして、そのために国民党系の支持を集めたといっても、もともとずっと民進党の人間なのだから、形式的にはその票も民進党系ということになる。
そうすると、陳+楊の民進党系合計は8割前後という空前の数字になってしまう。

いくら高雄は民進党が若干強いとはいえ、これまでは「浅緑」地域であり、国民党も決して弱くなかった。事実、2008年の総統選挙では現高雄市は馬のほうが多かったくらいだし、立法委員選挙でも高雄市・県ともに国民党が半数近くとっている。
ところが、馬政権2年あまりのあまりの失政と無能さのために、高雄ですら国民党がどんどん衰退していることがわかる。

楊秋興は、本人がどこまで自覚して謀っているかどうかわからないが(性格が性格だけに、その可能性もある)、これは南部(全国といわないまでも)の国民党を崩壊させる一里塚になるかも知れない。
だからこそ、独立派の多くも意外に冷静に情勢を受け止めているのだろう。

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