むじな@金沢よろず批評ブログ

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李登輝の「棄馬保台」発言以降、国民党の動揺が高まっている、米国も馬離れ

2010-08-01 01:35:43 | 台湾政治
李登輝は、陳水扁と関係が悪化した2005年以来、馬英九にも秋波を送るなど、その思想と立場は、ぶれにぶれてきたわけ。だが、ここ最近にきて、明確に馬英九と一線を隠し、本土派陣営に復帰した。とりあえず、緑陣営への復帰おめでとうw。
李登輝は今となってはほぼ過去の人だが、それでも国民党本土派内にはそれなりの影響力は保っているのは事実だ。だから、李登輝の動向はある意味で、国民党の動揺のバロメーターとなりうる。

その大きなきっかけは6月26日に開かれたECFA抗議デモで、デモの起点のひとつとなった萬華で「ECFAは、台湾を中国に統一させる暴挙だ。これ以上今の政権を許してはならない。棄馬保台(馬を唾棄して台湾を守ろう)だ。年末の選挙はわれわれの陣営を選ぼう!」と気勢を上げたことだ。
ここで面白かったのは、李登輝の台湾語文語能力に問題があることを差し引いたとしても、
棄馬保台をkhi3-be2 poo2-Tai5と発音していたことだ。
馬を人名としては正式のma2ではなくて、be2つまり畜生としての馬と発音したことは、馬英九に対する最大の侮辱だ。

これまで李登輝は馬英九の「敬老」精神をかわいく思い、馬とは曖昧な関係を持っていたが、これで完全に決別したことを意味する。

この効果は、国民党内の動揺を生んでいる。

たとえば李登輝直系の王金平は、馬英九系の財団主催のECFA推進のシンポジウムをドタキャンしている(7月2日、参考 王金平原定出席ECFA新情勢峰會突取消 引發揣測
王金平が本土派であることは知られているが、きわめて小心者であり、党中央に公然と反対することはこれまでなかった。それが党中央を構成する馬へ当てつけのように会議をドタキャンした背景には、何か強力な支えがなければならないだろう。
おそらく李登輝と米国だろう。

また、6月30日には、李登輝が出席した宴会に、国民党新北市長候補の朱立倫と国民党立法委員劉盛良が出席、李登輝がなにやら口説いたうえ、後に来た民進党新北市長候補蔡英文や民進党台北市長候補蘇貞昌も同席したという。
朱立倫は外省系ながら台湾意識も強く李登輝と関係が深い。劉盛良は当時のインタビューで「国民党立法委員で唯一の本土派だ」と公言した李登輝直系だ。
これはかなり意味深長だ。
さらに、朱立倫の絡みでは
搶李登輝支持! 蔡英文黏人功略勝朱立倫一籌(2010/07/24 15:00)

と、朱立倫は、「馬を棄てよう」と発言している李登輝に公然と接近しているw。選挙のためとはいえ、直接票を持っているわけではない李登輝と公然と接近しているということは、もはや馬英九ら党中央の権威と権力が党内で失墜している証拠である。

また、私が考えるに、朱立倫を新北市長に出馬させたのは、国民党中央の馬・金系列の陰謀だと思う。というのも今の情勢からいえば、朱立倫が勝てる見込みは少ない。もちろん朱立倫しか勝てそうな候補はないが、勝てる確率は少ない。
これは2012年までに持ちそうにない馬・金系統が、馬の地位を唯一脅かしそうで本土派ともつながっている朱立倫の政治生命を無くすための策謀だろう。
朱が勝てたとしてもしょせんは地方自治体首長で、その任期中は馬を脅かすことはないし、負ければ少なくとも国民党内での政治生命はない。

ただ、朱もそこらへんは読んでいるだろうから、負けることを見越して、公然と李登輝に接近しているのかも知れない。
ちょうど2001年の台北県長選挙に国民党から出て、蘇貞昌相手に敗れた後に、台連に移った李登輝系の林志嘉の例を彷彿とさせる。
朱立倫の場合、負けるら、国民党では後がないので台連に移るか、国民党を割って別の新党を立てる可能性が高い。

また、注目すべきなのは、台湾の事実上の宗主国・米国の動きだ。
米国はECFA締結など自由貿易主義にもとづく動きに関しては表面的には歓迎のメッセージを送っている。
しかし私がワシントン在住でホワイトハウスにも出入りしている米国人から聞いた話では、米国政府の間では、昨年下半期から馬英九への批判と不信が強まっているという。
馬は見切りをつけられたようだという。
実際昨年の台風による8・8水害をめぐる米国の動きは変だ。水害をめぐって待ってましたとばかりわざと沖縄などからヘリを派遣させて、これ見よがしに、馬政権の無能ぶりを浮き彫りにさせたうえ、オバマなど民主党リベラルに近CNNが、馬英九を「この男」と呼び、ネット投票で公然と「馬は総統をやめるべきか」という設問をするなど、明らかに「馬バッシング」を始めている。
最近でも苗栗県政府が農民の土地を強制収用して、農民が抗議している件についても、県政府の横暴を非難するトーンで伝えている。CNNのような媒体が、台湾ごときのしかもローカルな問題をわざわざ報道するのは異例だw。
これは米民主党が牛耳る米政府の馬に対する不快感を明確に表現しているといえよう。

馬英九は米国籍であり、明らかに陳水扁を抹殺するためのエージェントとして米国によって派遣された傀儡だ。しかし馬の無能と非常識は、米の予想を上回っていた。
何よりも米が馬に不快感を持った原因は、聨合号事件で見られる尖閣問題での対日宣戦布告と、斎藤大使の「地位未定論」発言に対する馬政権のバッシングだろう。
尖閣諸島について米国は「日米安保の適用範囲」であることを表明しているし、台湾の地位未定論は米国の立場でもある。
それを日本相手だと思ってなめてかかって、敵対行為を働いた馬英九は、実は尖閣問題と台湾地位未定論については米国の立場でもあり、それに敵対したという重大性に気づいてないアホである。

米帝の傀儡は、米帝によって身の程知らずと思われたら、いつでもきられる運命にある。
おそらく5都選挙は民進党の全勝となるだろう。そのときは国民党立法委員は、自らの保身と、米帝の意向を察知して、公然と馬降ろしに動くかも知れない。

その流れから、2012年は民進党が政権復帰するだろう。
しかし問題は、民進党も陳水扁バッシングの怖さにたじろぎ、陳水扁のように米帝相手に果敢な行動をとる可能性がきわめて低いことだ。
つまり、民進党が政権に復帰しても、もはや以前の民進党ではない。
もちろん民進党は民主政党であり、支持層には反米親日派という良識派も多いから、民進党であれば国民党ほどは露骨に米帝のエージェントになり下がることはしないだろう。
かといって、陳水扁の退任後の「末路」を見せ付けられているから、本当に台湾の国益にたって米帝とも果敢な対応をすることも期待薄だ。
もちろん、民主的でボトムアップな民進党になったほうが、国民党よりも何倍もマシなのは事実で、改善の可能性もある。

しかし、今の顔ぶれを見ると、いずれにせよ、今後の台湾はどんどんつまらない状態になっていくだけだろう。

いつか台湾人が、2・28事件の元凶が米軍であって、米国こそが台湾の真の独立性を阻害している元凶であるという真実に目覚めることを期待したいのだが。

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