月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「フラクチャー」

2008年05月04日 | ◆ハ行&バ・パ・ヴ行

 

2007年製作のアメリカ映画。
監督は、グレゴリー・ホブリッド。

どんな作品を撮ってきた監督か調べてみたら、
『真実の行方』や『ジャスティス』といった社会派サスペンス映画の監督でした。


そうしてみると、妙に納得。この映画『フラクチャー』(Fracture)もその系譜の作品だからです。アンソニー・ホプキンスと若手のライアン・ゴズリングの競演によるクライムサスペンスであり法廷サスペンスでもある本作は、地味ながらも、見終えた後の感想は、まさに両者のガチンコ映画。 演出にも過剰さがなく、それだけ推理に没入できる。
サスペンス映画としては、ラストに感服ですね!

ライアン・ゴスリングは、『君に読む物語』(2004年製作)でブレイクしたのだろうと思うけれど、この手のクライムサスペンスで顔面蒼白になる様子や心の良心との葛藤を示すしぐさなどを眺めていると、やはり、映画『完全犯罪クラブ』での高校生役だったときの顔が思い起こされてくる。

今回は、追い詰められる状況は同じでも、犯罪者サイドではなく犯罪者を検挙し裁判で黒である容疑者を追い詰める検事役だ。28歳、やっと検事役!(笑)

発端は、間違いなく犯人で供述書も取れているという連絡。絶対勝つはずの裁判だと高をくくって軽い気持ちで引き受けたライアン。こうした軽さもライアンの持ち味でしょうか。それが、裁判で使える証拠がなくなってしまった状態で法廷に立つことになったこの新進気鋭の検事は、一転して敗訴。

理由は、供述調書は取調官たる刑事たちの威圧に脅威を感じて仕方なく署名したと証言したため、その供述調書が無効となり、ほかには物証となるものが何もないからです。検事にとって何という恐るべき状態!
妻殺しは明白ながら、証拠がない・・・・妻の頭部を打ち抜いた弾創と被告の銃の弾が一致しないのだ。判決を前に、証拠捏造の示唆をする刑事の声を退けてライアンは敗訴。被告は無罪放免となる。

全ては被告の計画だった。その限りなく完全犯罪に近い計画を立てて裁判で無罪を勝ち得るのが、アンソニー・ホプキンス。こうした役柄がどうしてこうも似合っているのか・・・・・プライドと愛は紙一重、その持てる頭脳は如何様にも使われるということで・・・・。 ホプキンス、ちょっと太ってきましたが、あの自信と確信に満ちた格調高い英語は相変わらずで、航空学者という役処が意外と似合ってさえいます。アンソニー・ホプキンスファンとしては、いかなる役柄でも≪アンソニー節≫が堪能できるなら幸せの限り・・・・


無罪放免後、病院に出向くホプキンス。事件後一命を取り留めたものの植物状態となっている妻の元へライアンが通ってきていることに驚きます。そこに不安を感じたホプキンスは、妻の生命維持装置を外す手続きに入ります。
万一、植物状態から目覚めたとしたら・・・・・という不安を、クールで賢く意志堅固な(そういう役どころの)ホプキンスでも持ってしまうところが、唸らせます。そうなったら、万事休す!?とならないのに。

ライアンは敗訴した後、職も恋人も失ってしまい、今また狙撃されたホプキンスの妻をも救うことができなかった無力感で打ちのめされますが・・・・旅立つホプキンスの元を訪ね、完全犯罪のからくりを見抜いたことを示唆すると、意外なことにホプキンスは否定せず、真実をライアンに話します。

今更いかなる証拠が見つかったとしても、自分を法で裁くことは絶対に出来ない。なぜなら、『ダブルジョバディ』という原則があるから・・・・・
ライアンは叫ぶ。ああ、妻は死んで生き返って事実を語ったとしても、ホプキンスを法で裁くことは出来ない。銃がすり返られていたがゆえに、弾創が不一致だったという真実も、ダブルジョパディの前では何の力にもならない。

ただし、妻が生きていたならば、と。

一事不再理とは、新たな罪状で同じ人間を裁きの場に立たせることを阻むものではない。最初の容疑は妻への『殺人未遂罪』だった・・・・のだから。新進気鋭の勝率9割の検事ライアンは、初心に立ち返って判例を目を皿のようにして学びなおしていたのですよね・・・そこで何を見つけたのか?

ということで、
ラストのライアンの言葉の意味が分かるのに、しばし時間がかかってしまった。アンソニー・ホプキンスも同様の様子で、そりゃ無理はありません、ダメ押しで語るライアン、「女房の生命維持装置を外さなければ良かったのに、なぜ外したんだ。医者の話だと、あのままの状態ならはるか先まで長生きは出来るということだったのに・・・」という抑制された口調の台詞が、どれだけアイロニーに溢れた言葉か。

だって、銃を持っていて、いまにも発砲しそうなライアンだったんですもん。いきなり、転じられちゃ~、あれ、あれ、あれれ・・・ですよね。

 

 

面白かったです。

 

 

 


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