(2003年 ロン・クラウス監督)
ジェームズ・スペイダー主演の映画ということで、
久しぶりに彼の主演する映画を観ることにしましたが、
まさか、こういうSF映画に出ていたとは・・・・
(この表情に、非暴力志向と愛情関係に抱く諦念を読み取るなら、本作は相当に楽しめるのではないでしょうか)
彼の役柄は、スタンフォード大学だかプリンストン大学だかを超優秀な成績で卒業、いわゆる○○大学始まって以来の数学的天才というキャリアながら訳アリの共通言語学の研究者。でも、ちょっと変わったその研究はその世界では有名らしい。何といっても、宇宙言語の翻訳が研究テーマ・・・・
上司の教授から呼び出された彼は、NASAだか原子力委員会だかの研究施設のある北極で発掘されたものから電波(通信波)のようなものが出ているということで、北極の基地(研究施設)に向かうことになります。
この氷の塊の内部から出ている電波は通信なのか。宇宙への通信だという仮説でその言語を解読研究するのが、ジェームズ・スペイダーの仕事なわけですが、
(この博士を演じていた俳優名、いましばらくお待ち下さい。どこかで見た顔なのですが・・・・)
北極の基地で政府の委託でいろいろなことを研究し続けているのが、このかつての恩師の博士。実に温厚。彼の元で、ノーベル賞ものの研究をしている学者たちやスタッフで基地施設内はすし詰め状態。その中に、
(元恋人の女性役を演じているこの女優はエイミー・グレアム)
かつてジェームズ・スペクイダーの恋人も。
大学で色恋沙汰を起したことが原因で、教授だったジェームズ・スペイダーは退職し学生だった彼女は退学。そんな過去を共有する二人の再会。彼女はここで新しい彼と共同でノーベル賞ものと称される研究に従事。
(その新しいパートナー役のジョン・リンチ(左)が、なかなかの皮肉屋で、ジェームズ・スパイダーの研究テーマ、宇宙人の存在を前提とする宇宙言語の翻訳研究をバカにする役を好演)
けれど、ジェームズ・スペイダーの出現に動揺を見せます。
この辺り、宇宙船や潜水艇映画では珍しいクルーの恋愛感情で、さすがジェームズ・スペイダーを起用したがためのモテモテシーンかと思うと、それでは監督の意図するところとはちょっと離れてしまうかもしれませんね。
(ジェームズ・スペイダーの研究に興味を持って応援する博士の助手役の女の子をレスリー・ステファンソンがチャーミングに好演)
若い助手にモテモテとなるジェームス・スペイダーですが、ご覧のように色気とはちょっと違う流れ。実はこの映画にはキスシーン一つ、愛の告白シーン一つないのです。
まあ、こうした一生に一度あるかないかの研究対象を目の前にしているので、世俗的な感情も昇華されるのかもしれないですね。
何といっても、この未知の高度な知的生命体に向き合ったとき、心を開いた状態で初めて相手のことが理解できた瞬間をスペクターは体験するので、人類が持つ地球的暴力とは正反対。
最初、SFがかった面はあっても科学サスペンス映画かと思って観始めたのですけれど・・・、正直、SFファンタジーという側面が出てきたときには、ちょっと焦っちゃいました。
でも、通常のエイリアン物と違った展開で、
なかなか興味深いものがありました。
本作では人類との共存を模索する地球外硬度知的生物という設定ですけれど、映画『マーズアタック』の彼らとは対極。
なのに、彼らと接触した人間は感染して細胞が破壊される。
このことを、実はNASAとワシントンは知っていたという辺り、ああ、またロズウェルものかと思ってしまいますが、ちょっと違います。
彼らの存在と感染した基地施設内の人間を、人類のために基地ごと核爆弾で消滅させる決定が下されるのですが、(この映画では、アメリカとロシアとの間で決定されますが、映画『ディープ・ショック』には国際原子力委員会だのG7だのの決断も出てきまーす)
つまり、氷の中に入って眠っていたエイリアンは人類を破滅させる菌を保持しているという設定です。
感染したかどうか分からない=感染していないとは言えない!ということで、人類のために基地内で核爆弾が投下されることを受け入れようとするジェームズ・スペイダーたちですが・・・・・そんなのはごめんだという職員と対立。そのとき、優男のジェームズ・スペイダー側に立って戦ってくれる黒人が、カール・ルイス。まさか、あのカール・ルイスだとは最後まで気づきませんでした。
けれど、本作はブルー系のフィルムでまとめられていて、ラストのファンタジーに向けて全編が用意されているせいか、全然悲壮感がなくラストのアクションは≪利他愛≫に溢れていて、エイリアンたちによって救出されるシーンは、一見の価値アリかもしれませんね。そうじゃない行動を取った人間たちは死に絶えてしまいます・・・・
それでも、核はロシアの原潜から発射されます。
ド派手なアクションゼロ。小難しい理屈もゼロ。ホワイトハウスのシーンと基地でのシーンが交互に映し出される手法も程よくて悪くなかったです。ただ、ラストのファンタジー、ジェームス・スペイダーたちがあの後どうなっちゃったのか・・・・気になるおバカな私なのでした。自衛の名の元に二者択一の単純で暴力的な発想しかできない地球から去った彼らは、別の生命体となって幸せに暮らしたということかもしれません。
★ご参考までに。
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=4183
★エイミー・グレアムの姉妹へザー・グレアム
http://movies.jp.msn.com/actor.aspx?p_personid=20641