月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「ノエル 星の降る夜の奇跡」

2008年09月25日 | ◆ナ行

さまざまな理由からクリスマスを家族といっしょに過ごせない人や、クリスマスをいっしょに過ごす家族のいない人達は、クリスマスをどういう気持ちで迎え、どうやり過ごすのか。
クリスチャンじゃないとイマイチその気持ちは分からないないけれど、日本人ならさしずめ年越しと元旦を不本意にたった一人で過ごす人たちの状況と相通じるものがあるのではないでしょうか。
この映画は、家族と共に過ごせないさまざまな理由を抱える人々の苦悩と孤独に光が射す物語。いわゆるニューヨークを舞台にした現代版クリスマルキャロル。



親子関係がすこぶる良好な母娘にとって、体が弱って一人では暮らせなくなった老母を娘が世話をしたいと思うのは洋の東西を問わず自然の情愛でしょう。けれど、この娘の半生はちょっと複雑系。母親と同居したことで夫は家を出ていき離婚。以来、母の介護と児童書出版社の編集長という仕事に明け暮れて20年・・・・。40歳を過ぎて子供もなく婚期も逃してしまい家族は母だけと自分で思っている。認知症が進み今では娘の自分の事も分からなくなっている母親が、クリスマスを迎えて食べ物を口にしなくなった。何とか一口だけでも食べて欲しいと焦りを募らせていくけれど・・・・
このバツ一の中年独身女性を演じているのは、スーザン・サランドン。

隣の病室では重症患者が意識不明で眠り続けています。エンジェルの飾り物をその病室の窓に吊るしに行った彼女は患者を見舞う先客と出会いますが、これが何とロビン・ウィリアムズ。

 

ロビン・ウィリアムズ主演映画ではありません。念のため。

街では結婚を前にした恋人同士ペネロペ・クルスとポール・ウォーカーがラヴラヴ。数年前の映画ですが、いま観ても何とも新鮮な取り合わせだと思いました。二人は結婚間近なのに、彼は心配性で独占欲も旺盛。新手のストーカーみたいですけれど・・・

            
 
そんな彼との結婚にペネロペは不安と迷いを感じ始め気持ちが落ち着かない。ちょっとしたことで、イライラしてけんかになります。ペネロペの出演作にははこうした諍いのシーンが多いですけれど・・・・言い争うときの表情にどこか無理が感じられてあまり似合わないなァと思うのは、私だけかしら。
                   

そんなペネロペとスーザン・サランドンが妙な偶然と成り行きからイヴの夜のひと時をバーでいっしょに過ごすことになります。                                                                                                                                                                                 


これ、めずらしいツーショットでは?

彼女たちが愛に満たされない思いに揺れていた頃、一人アパートに残されたポール・ウォーカーの元にやってきた老人。雪の降る中、アパートの下で待ち続けていた彼はレストランでウェイターをしていた彼・・・・     このアラン・ アーキンの何ともいえない存在感の魅力はどうでしょう!もう目が離せなかったですね。   

                                    

                                    

何とも熱っぽい視線でポール・ウォーカーのことを見つめ、「自分の妻の生まれ変わりだ」と言って譲らないアラン・アーキン。物静かで穏やかな人物ですが、目は確信に充ちているのだから、実にミステリアス。ポール・ウォーカーの反応が面白い。

同じ頃、 一人の若者が病院に「今年もクリスマスイヴのパーティはやるの?」と問い合わせにやってきます。

 

 何としても入院して「それ」を再び体験したい青年はトンでもないことを思いつきます。もう心が壊れれかけている証ですが・・・


(この俳優の名前が分からないけれど、どこかで見た顔・・)

かくして三者(三組)三様のアンサンブルで映画は淡々と流れていきますが、それぞれ問題を抱える彼彼女らの周囲に配された人物たちが絶妙でこの映画に広さと厚みと深みと軽妙さと笑いをもたらしているように思われました。

  スーザン・サランドンを「あなたと寝たがっているいい男がいるわよ~」とたきつけ、「母親と同居したばっかりに夫に逃げられ離婚して10年。その母親の介護に10年。男の愛なんて面倒なだけだけど、セックスは必要よ」とのたまう同僚。

   念願かなって母親のような年齢差のスーザン・サランドンをデートに誘いつつ、結局、その気になれない彼女を前にしての態度は不快さも嫌味もないもので、いい子だな~と感じちゃいました。ダニエル・サニャータ、マイタイプではないけれど、今後チェックしていたい俳優かも。

 「私がクリスマスを嫌いな理由スピーチコンテスト」でスピーチする羽目になったスーザン。この場面、涙あり笑いあり。

話しかけても呼びかけても無反応で、せめて一口食べさせようとしても拒まれてしまい、その瞬間、いきなり手にしていたコンテストの景品のミニツリーを床に投げつけ座り込んで泣き出してしまう。

                                

介護疲れと疎外感と孤独感がはちきれた瞬間でしたね。
気がつけば、冬の夜の川面を見つめて立ったまま目には涙。このシーン、笑いに隠れつつも実に胸に迫るものがあります。いまにも飛び込もうとするかのような彼女に、同じような佇まいの男の声・・・母親の病室の隣会った彼でした。

さて、ポール・ウォーカーとアラン・アーキーの方はどうなったでしょうか。 
容態が気になり忍び込んだ病室で息子だという男と出会うポール、このときの二人のシーン・・・・
                                      

                                                                                                   

以下、心に染みた場面をアップしますので、どんな状況で彼らはこうした行為にたどり着いていくのか・・・今年のクリスマスもあと3ヶ月、是非ご覧になっていただきたいですね。 

                                                                           

                                     

                                   青年は病院側の計らいで精神科の女医と話をすることに。青年の話を黙って聞く彼女の表情がとても素敵でした。 

 

      

多くの場面で出てくるこの手を取り合うシーン、
じっくりご覧いただきたいと思います。

本作のチャズ・パルミンテリ監督は、衝撃のラストで心を打った『ブロンクス物語 愛につつまれた街』のときとは違って、生きることの意味を問うべく観るものの心を抉ってくるような切れ味を、この作品ではペーソスで隠し演出の冴えを見せています。一歩踏み間違えれば自殺や殺人と隣り合わせの切実な人生を生きている、そんな人々の心を他者との触れ合いによって生まれる温もりで温めようとした監督の思い、まさに聖夜に相応しいものでした。

 


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