月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「Revelation」(邦題「ゴッド・クローン」)

2008年11月14日 | ◆ラ行

イエス・キリストを題材とした映画は多々あれど、その中でも特異なジャンルなのはキリスト教や聖書を題材としたオカルト映画だと個人的には位置づけています。ホラー系のオカルト映画は意外と見逃されるけれども、物議をかもすのは何といってもイエスを巡るバチカンの公式見解から外れる異端とされる流れを汲んだストーリーもの。非キリスト教圏の日本ではあまり問題視されませんが、キリスト教圏ではそうもいかないようで、ミステリー映画『ダ・ヴィンチ・コード』の映画化のときでさえ、制作関係者の広報宣伝の折には≪釈明≫とも取れるコメントが多かったことは記憶に新しい。


(しびれるほど僧衣が似合う反キリストの司教を演じるウド・キァ)

本作は、その『ダ・ヴィンチ・コード』とは比べ物にならないほど、スリリングでオカルティックで、映画としてはこちらの方が数段面白い。上映禁止となったというのも頷けます。
イエスやマグダラのマリアに関するミステリアスな解釈というより、クリスチャンにとってはヴァチカンそのものを、ある意味冒涜するストーリーになっているので、司教の暗殺といった内容を扱った『ゴッド・ファーザー』よりもリスキーです。
そういう意味でも、本作のような映画に出演する主演俳優はちょっと覚悟が要る。だからこそ、スチュアート・アーバン監督を始めとする製作関係者は、この二人を得たことをどれほど幸いと思ったか。彼らは主演俳優がどういう映画に出ている俳優かを説明しさえすれば、敬虔なキリスト教徒はそれだけで本作を糾弾することを諦めるに違いない。製作者は案外そういう計算があったのではないでしょうか。そんな感想を持ちました。なぜなら、その二人を鮮烈に記憶させた映画は、ホラーですもん。

一人は、こちら。映画ファンにはしびれるに違いない俳優の一人、ウド・キァです。


(出てきただけでぞくりとする俳優のウド・キァ)

いろいろな映画に出演していますけれど、何といっても悪魔との戦いを題材にしたオカルティック映画が束になっても歯が立たない『悪魔のはらわた』だの『残酷!女刑罰史』だの『ドイツチェーンソー大量虐殺』だのといった映画や『0嬢の物語』だのといった映画のイメージが強烈だから、映画をあまり見ないキリスト教徒の方達なら、恐らくそうした紹介だけで、「そんな映画に出ているような俳優なら影響力も少ないだろうと思うに違いない」と。

もう一人は、こちら。

(年齢を重ねぞくぞくするほど魅力的になった俳優のテレンス・スタンプ。本作では世界の名だたる研究者を一同に集めて「ロンギュスの箱」に秘められた謎の研究を指揮する富裕な貴族として登場)

同じく、映画が好きな方達にとっては忘れることが出来ない俳優の一人に違いないテレンス・スタンプ。言うまでもなく、こちらは、あの『コレクター』で鮮烈な印象を永久に映画史に留めた俳優。

けれど、ヴァチカン崇拝者にとっては本作は「けしからん」となったのでしょう。凶弾でよく死ななかったと改めて思います。

こうした二人が「ロキュラスの箱」という謎の箱を巡って死闘を繰り広げるのですから、わくわくしないでいられる方がおかしい。ロキュロスの箱というのは、2008年前に磔刑で死んだイエスの、その十字架で作った箱。


(十字架上のイエスのわき腹を刺しぬくよう兵士に命じた百人隊長の役を演じ、その数十年後のキリスト教徒弾圧の指揮官をも演じ、以後の歴史において科学を奉じる反キリスト者の代表として秘密結社の総裁というポジションの人物を演じていきます)

その箱を巡ってキリスト教徒と彼らを弾圧する側(時の為政者や権力者サイド)との死闘が歴史の暗闇で続けられてきた・・・・ということで、本作は冒頭、イエスの磔刑の場面から始まり、その数十年後のキリスト者への弾圧、そしてアイザック・ニュートンの時代と現代(近未来ということならSF映画になる)に至るまでの、実に壮大な時間が流れるので、それも魅力の一つでしょうか。


(古代の暗号を解き目的の場所にたどり着いた主人公たち)

暗号解読が趣味でEUの政府機関のセキュリティを破って侵入するハッカーである青年と西洋占星術と錬金術が専門の女性。ある組織からの襲撃で生き残ったこの二人が、その謎を解くべく行動するというアドヴェンチャー映画でもあります。


(暗号解読が専門の青年役ジェイムズ・ダーシーと錬金術師の役のナターシャ・ワイトマン)

これが本作のいわゆる主人公の二人になりますが、この二人が生き残ったのにも神の意思があると思わせる内容になっているので、その謎解きもまたなかなか唸らせるようなものになっていました。
錬金術が専門の女性を演じた女優は、ナターシャ・ワイトマン。


(ナターシャ・ワイトマン)

そして、ネットのハッキング犯罪で服役し出所したばかりの青年で、テレンス・スタンプの遺志を継ぐ息子役を演じていたのがこちら。
似た様な映画に出ていた顔だなあと思ったら、映画『エクソシスト ビギニング』で神父をやっていた若手俳優ですね。

このジェイムズ・ダーシーというイギリスの俳優、意外とこの先、化けるかもしれない若手(1975年生まれなので33歳)かなと。要チェックですね。

他にも、おやっと思った俳優が何人か出ていました。
彼らを助ける神父で元軍人という男を、ヒースコート・ウィリアムズという俳優が演じていますが、この人、デレク・ジャーマン監督の『テンペスト』にも出ていて、思いがけない映画で結構見かけます。他にもディラン・メグルブリアンというなかなか味わいのある俳優が弾圧される初期キリスト教信者の役で出ていたように思いましたが、この人、ピアース・ブロスナンの007でも司祭役で出ていて、意外とそっち系御用達の俳優なのかなあと勝手に想像したりしています。

本作は、邦題では「ゴッド・クローン」という映画になっているので、ラストまで見たときに初めてその意味が分かる原題の「Revelation」のタイトルのままの方がいいと思われましたが、邦題を考える人にはそういったことを是非熟考していただきたいものです。

ただ、英語で「Revelation 、movie」で検索すると、この映画に関する情報はほとんど得られません。さすがに上映禁止となったといういわくつきの映画のせいでしょうか。
Terence Stamp と Udo Kier で検索してやっと、この映画の情報を若干得ることができたという次第でした。

本作は、テレンス・スタンプやウド・キァという俳優に興味をお持ちの方は無論、ミステリーが好きな方、ホラーサスペンス、スリラーなどがお好きな方、そしてキリスト教のオカルトや占星術に興味がある方なら間違いなく楽しめる映画だと思います。だからといって、そちら方面の知識がなければ楽しめないかというとそんなことはなく、キリスト教の異端やオカルトの知識などなくてもOK。そこは『ダ・ヴィンチ・コード』と同様で、≪それでも楽しめる≫のではなく、≪だからこそ愉しめる≫、そういう作りの映画になっています。
なので、おススメの1本ですね。

 

 


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