世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ヒイラギナンテン

2008-02-22 10:29:49 | 花や木

メギ科ヒイラギナンテン属。Mahonia japonica

種小名にはjaponicaとありますが、原産は中国だそうです。常緑低木。でも冬の寒い時期には、全体が赤っぽくなりますね。それがとてもきれいです。

これは幼稚園の近くの、スーパーの裏手に植えられているヒイラギナンテンです。今は、こんなかわいい黄色い花が、いっぱい咲いています。

人間が好きかきらいか、という観点で振り分けたら、このヒイラギナンテンは、どうしようかなあ?とちょっと考えたあと、中立派を選ぶことでしょう。

あんまりにやっかいなことをする人間は、ほんとはちょっといやなんだけど、痛いことをして、こけて、馬鹿だなということになって、苦しんでいる人間をみたら、やっぱり放ってはおけない。

仕方ないなあ、という顔で、影からそっと、やさしいことをしてくれる。でも人間は、そんなことにはぜんぜん気がつかなくて、ちょっと立ち直ったら、また変なことをやり始める。ヒイラギナンテンは、ちょっと悲しくなって、だまりこむ。

そんな感じです。

ヒイラギナンテンは、とてもかわいいし、低木なので、よく庭や公園などに植えられているのですが、なかなか美しい樹形になりません。どこかゆがんだり、ぼさぼさになったり、小さく縮こまった感じになったり。わたしの見たところ、人のたくさん集まるところに植えられているものほど、くたびれているような気がします。

それは、ヒイラギナンテンが、人々のやっていることを、みんな知っているからです。町で、ヒイラギナンテンを見かけたら、近寄って、たずねてみてください。「わたしのことを、知ってるの?」ヒイラギナンテンは、ただしずかに、まっすぐに返してくれるでしょう。

ヒイラギナンテンは、マツほどに強くない。痛いとげで、外壁を守り、あまり近寄らないでとは言っているけれど、かわいらしい花が、子供や、寂しげな大人に、ふっと微笑みかけてしまう。ヒイラギナンテンの木が、ゆがんでしまうのは、この自分のやさしさが、つらいから。意地悪が、できないから。

だから、人々の心のとげが、ひりひりと痛すぎるとき、ヒイラギナンテンはゆがんで、くたびれて、いつしか、溶けるように、消えていく。

ヒイラギナンテンのとげは、人を傷つけるためではない。やさしさに弱くなる自分の心を、精一杯、守るためなのです。

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