ティツィアーノ・ヴェチェリオ
ある日ゼウスは、月神ディアナのニンフであるカリストに目をつけた。だがディアナのニンフは処女の誓を立てているので容易には受け入れない。そこでゼウスはディアナに化けてカリストに近づいた。だまされたカリストは無理矢理ゼウスのものとされた。カリストはそれを恥じて隠していたが、やがてディアナの知るところとなり追放された。カリストはゼウスの子アルカスを産んだが、今度はそれでヘラに嫉妬され、大熊の姿に変えられたという。
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神話ではカリストには非がないようだが、この絵の中ではカリストはずいぶんと痛い感じで描かれていますね。おそらく画家はカリストを、不貞を働いた女性と見ているのでしょう。処女の誓というは、人間世界を乱すような背徳的な性をやってはならないということです。被害者のようなふりをして、ゼウスにいいようにされたのを、彼女は内心喜んでいたのかもしれない。厳しい男性は女性のそういう淫らな心を見抜くのです。