世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

交渉⑭

2017-11-03 04:13:06 | 風紋


「われわれも、舟を白く塗ってみたい。白い色はとてもいい色だからだ。稲舟に近寄る魔も少なくなるだろう。どうだ。その技術をわれわれに教えてくれないか。そうすれば、二十一壺にしてやってもいい」

するとゴリンゴは、隣にいるヤルスベの仲間とひそひそ話をしだした。いい傾向だ。交渉はうまくいきそうだ、と思ったとき、彼はゴリンゴの隣にいるアロンダの視線に気づいた。アロンダは美しい黒曜石のような目で、じっとアシメックを見ている。アシメックは、今まで一言も話さずにそこにいただけのアロンダを見て、ちょっとかわいそうになった。男の気を引くために、おそらく無理矢理連れて来られたのだろう。居心地が悪そうに、自分の足をしきりになでている。

「よし、わかった」
と、突然ゴリンゴが言った。

交渉はまとまった。ヤルスベは二十一壺の米をとり、カシワナは相当量のナイフと首飾りと、舟を白く塗る技術をとった。

約束が決まったとき、その場にほっと安堵した空気が流れた。これで今年もうまい米を食うことができる、とヤルスベの中の誰かが言った。

アシメックとゴリンゴは、後の細かい段取りは下の者にまかせ、手を取り合いながら、交渉場の外に出た。交渉が終わった後、族長同士が外を歩きながら雑談するのが風習だった。そこで意見を交わしあい、お互いのこれからを考えていくのだ。アロンダもついてきた。

できるだけこれからも仲良くしたい、とアシメックがいうと、ゴリンゴも、もちろんそうだと言った。アロンダは目を伏せながら、少しつまらなそうに、彼らの二、三歩先を歩いていた。