世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

山へ⑦

2017-11-13 04:13:23 | 風紋


早く帰らねばならないが、これを見逃すのは惜しいと思い、子供に言い聞かせて、一旦子供をおろしてから、キノコを採った。すると子供が言った。

「それ毒だよ。母ちゃんが言ってた。食うと死ぬって」
「ああ、知ってるよ。食うわけじゃないんだ。鹿狩りの毒に使うんだよ」
「へえ? 鹿狩り!」
急に子供が目を輝かせた。この子供は、大人になると鹿狩りの仲間に入りたいのだ。

「毒って、そのキノコ使うの?」
「子供は触っちゃだめだぞ。これはね、蛙の毒と混ぜるんだよ。すると一撃必殺の毒ができるんだ。蛙の毒でも十分に殺せるが、これを混ぜるともっと効くんだ」
「毒蛙って、あの赤いのだろう? あれも食べちゃダメだって、母ちゃんが言ってた」
「あれは食べたらのたうち回って死ぬんだ」

子供は目を輝かせて、サリクに鹿狩りのことを尋ねた。

「鹿って怖いの? 角あるよ」
「怖くないさ。毒矢を使えば一発なんだ。でも手ごわいのはいるよ」
「てごわいって?」
「六年前に生まれた、キルアンていう名の雄鹿がいるんだ。こいつがデカいんだけど、すばしこくてなかなか矢が当たらない。おまけに毒矢が当たっても死なないんだ」
「へえ、キルアン!」
「俺たちが狩りをしてると、どこからかやってきて、向かってくるんだよ」
「へえ!!」

子供と話をしながら、サリクは自分がずいぶんと立派な男になったような気がした。アシメックのように、小さいやつは大事にしてやらねばならない。特に男の子には、大人の男のやり方ってものを、見せてやらねばならない。サリクは嬉しそうに尋ねた。

「おまえ、名前はなんていう? 年は?」
「ネオ、もうすぐ十一だよ」
「へえ、じゃあ次の歌垣には出れるな」
「うん、まあね」

サリクはキノコを腰に下げた袋に入れると、また子供を背負い、山を下りて行った。