子供の頃、ウルトラマンは本当にいると信じていました。空を眺めては、彼が飛んでいないかと探していたこともあります。今でも、夕刻にベランダから空を眺めては、山の向こうにゆっくりとたちあがる巨人の姿を、幻想したりします。
ウルトラマンはただの特撮だと言う人、きっとたくさんいるでしょう。(かつて私にもそういう時期があったし。)でもそれは、ミロのヴィーナスを、あれはただの石だというのと同じことだと思うのです。
人間は馬鹿でどうしようもないものだけど、どこかに、自分を愛してくれて、許してくれて、しかも守ってくれる大きな存在を求める、淋しい心があって、そんな切なくて、正直には言えない思いが、子供向けという形をとって、ウルトラマンになったのではないかと……
二人の息子と並んで、テレビのウルトラマンを見ながら、時々胸がじんわり湿ってくるのは、懐かしさだけが原因ではないような気がしています。
(1997年3月ちこり9号、コラム)